抄録
最近Cephalosporin誘導体の合成研究の成果は特にすばらしく, 次々と新らしい抗生物質が国内においても開発され, 基礎的, 臨床的に高い評価を得ている。現在使用されているCephalosporin C系抗生物質は広域スペクトルであり, 毒性も極めて少ないなどから, 臨床的に小児科領域でも広く使用されている。しかし, β-Lactamase産生株の出現により, 従来のCephalosporin C系抗生物質にかわるβ-Lactamaseに対して, より安定な薬剤の開発が望まれてきた。こうした背景から7α位にMethoxy基をもつCephamycinの開発がおこなわれ, さらに母核の硫黄原子 (S) を酸素原子 (O) におきかえたOxacephem系抗生物質6059-Sが開発された。本剤は特にグラム陰性桿菌に対してすぐれた抗菌力を示す他に, Pseudomonas aeruginosaに対してもスペクトルは拡大され, かなりの有効性がみとめられるようになつてきた。今回, 我々は6059-Sを使用する機会を得たので, 本剤について抗菌力, 血中・髄液中移行率などの基礎的研究をおこなうとともに, 各種感染症に使用したので, その成績について報告する。