2020 年 34 巻 5 号 p. 718-730
目的:甲状腺機能異常はしばしば見逃されている.そこで,我々は人間ドックで測定済の基本的検査データを使用して甲状腺機能異常をスクリーニングする簡便で安価な診断支援の方法を開発した.本報では,実用化されたスクリーニングサービス(SS)実施例での成績について報告する.
方法:人間ドック3施設において,SSにより甲状腺機能異常疑いで専門検査勧奨となった受診者には,残血からFT4とTSHを測定した.ホルモン測定によりもれなく異常の有無と重症度を確定して,発見頻度・陽性的中率(PPV)などを評価した.
結果:新たに発見された機能異常者は23名で,発見頻度は施設ごとに0.11%,0.46%,0.26%であり,PPVは16.3%,37.5%,20.5%であった.このうち,医師が診察時に甲状腺機能異常を疑ったのは2名のみであった.甲状腺中毒症での2時点予測の精度は1時点予測に比べて大きく向上しており,時系列予測が優れていることを検証できた.
結論:SSは測定済みの基本的検査データを2次利用するだけの簡便で安価なバセドウ病や甲状腺機能低下症の新しいスクリーニング法として有用であり,甲状腺機能異常を呈している可能性がある受診者を人間ドックから専門医につなげるメリットが確認された.全国的に使用され,気づかれずにいる多数の患者を発見して治療につなげることが期待される.