The Japanese Journal of Antibiotics
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Tobramycin点滴静注投与における臨床的研究
中村 孝橋本 伊久雄沢田 康夫三上 二郎戸次 英一葛西 洋一中西 昌美加藤 博松田 繁雄
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1981 年 34 巻 8 号 p. 1158-1172

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抄録

現在, 本邦においては, Gentamicin (GM), Dibekacin (DKB), Amikacin (AMK), Tobramycin (TOB) 等のAminoglycoside系抗生剤は筋注による投与だけがみとめられ使用されている。しかし筋注による投与は局所痛, 硬結, 投与量の制限等の問題があり, さらに小児においては筋萎縮症の発生があるために適応に制限がある。一方欧米諸国においては, 筋注はもちろん静注あるいは点滴静注による投与法がみとめられており, 臨床的に使用されている現状である。一般にAminoglycoside系抗生剤は, 広い抗菌Spoctrumをもつとともに, 低いMICをもち, しかも炎症組織への移行が良好な反面, 薬剤により差があるが腎毒性と聴器および前庭神経障害をもつており, 腎蓄積性をもつといわれている。
TOBは1967年, Eli Lilly社にて開発されたAminoglycoside系抗生剤であるが, 本邦においては1975年, 塩野義製薬により開発され, 今日筋注用として広く使用されているものである。欧米においては, 早くから静脈内投与法が検討され, 1973年HELMらは50mgの静注を1日2回投与し有効なることをみとめ, 1976年ALTUCCIらは1日80~160mgの静注および筋注を30例におこない有効なることを報告している。またCARMALTら (1976) は, TOB 1.5mg/kg×3/dayの20~30分間の点滴静注をおこない効果をみとめている。TOB投与時の副作用として腎障害, 聴器および前庭神経障害が主なものとされているが, これは血中濃度のピーク値が12μg/ml以上となると起り易いとされている。TOBの筋注と30分~1時間の点滴静注時の血中濃度のピーク値はほぼ等しく, 60mgの点滴静注および筋注では, 約4~5μg/mlであるとされている。今回, 我々は点滴静注法をおこなうことにより副作用を防ぎ, 有効性を高めることが可能であると考え, TOBを用いて点滴静注法による有効性と安全性を検討することとした。
一方, 抗生剤投与時に, 人体の目的とする炎症組織内への移行を検索することは, 起炎菌およびそのMICを検討することとともに極めて有意義であり, 既に各種の抗生剤についておこなわれているが, TOBについての検索はいまだ極めて少ない現状である。そこで著者らは, 胆石症, 胆嚢炎5例, 急性虫垂炎10例, その他3例の計18例について, 手術時にTOBを投与し, その切除組織内の濃度および, 胆汁, 腹水等の体液内TOB濃度を測定するとともに, その内の15例にはTOBの点滴静注による治療をおこない, その臨床効果を検討し, 起炎菌のMIC, 体液および組織内濃度と臨床効果との関連について検討し, 多少の興味ある成績を得たので報告する。

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