The Japanese Journal of Antibiotics
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重症血液免疫疾患の細菌感染症に対するCefoxitinによる治験
中尾 恿長谷川 節雄安水 美代
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1981 年 34 巻 8 号 p. 1185-1190

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抄録

白血病・骨髄腫などの造血器腫瘍, 再生不良性貧血, 無顆粒細胞症などは, 白血球数, 分類比率, 細胞性および体液性免疫の異常により, 防禦能を喪失した易感染状態にあり, ことに白血病では寛解導入療法後に重篤な骨髄抑制期を経過するので, 感染症対策は, 基礎疾患の治療と一体不離の関係にある。また, 免疫異常に起因する広義の膠原病に包括される副腎ステロイド投与中の症例も, Compromised hostとして常に感染への警戒を要することは言うまでもない。
過去2年間に私どもが扱つた重症血液疾患の主たる感染症は, 敗血症12例 (Pseudomonas 4例, Klebsiella 5例, Enterobacter 1例, Staphylococcus aureus 1例, Group A α-Hemolytic Streptococcus 1例), 肺炎8例, その他であり, 重症感染症に進展する例が多かつた。無菌室導入により, 感染発症の頻度は減じたが, 根絶は困難であり, ましてガウソテクニックの加療例における感染症の頻発は, 不可避であつた。さらに, 生体防禦能の破綻に根ざす宿主条件下での抗生物質療法は, 菌交代, 再燃を見ることも多く, 難治性であつた。そこで広域のスペクトラムをもち, 強力かつ低毒性の抗生物質の出現が望まれてきた。
今回用いたCefoxitin (MERXIN, CFX) は, Cephem環の7α位にMethoxy基を導入することにより, β-Lactamaseに対して安定性があり, グラム陽性菌, グラム陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルをもつている。特に, グラム陰性桿菌のEscherichia coli, Proteus, Klebsieltaの他, Serratia, Bacteroides fragilisにも高い抗菌活性をもつ。そこで, 重症血液痴患の続発性感染症を主たる対象とし, 一部は免疫異常を伴なう疾患の感染症や重症骨髄抑制時の感染予防を目的とした投与成績をここに報告する。

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