1982 年 35 巻 5 号 p. 1172-1176
近年, 急性白血病や悪性リンパ腫などの造血器悪性腫瘍の治療の進歩とともに, これら疾患に必然的に合併する感染症に対する処置が臨床上極めて重要な問題になつている. 顆粒球減少を主体とした患者自身の免疫能低下のため, このような合併感染症は一般に重篤で全身感染症, とくに敗血症へ進展する危険性を常に伴つている. 急性白血病の死因の70%以上が感染症によるとする最近の報告1, 2) もこの事実を裏づけている. そのため感染症の早期から抗生剤による強力な化学療法が必要となることは言うまでもない. 我々は造血器悪性腫瘍や再生不良性貧血を基礎疾患にもつ重症感染症に対して, 新しいセフェム系抗生剤であるCefotiam (略号: CTM, Pansporin®, 以下CTMと略す) の大量療法を行い臨床効果と安全性につき検討したので報告する.