The Japanese Journal of Antibiotics
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血中有効濃度をうるためのセフォチァム投与量設定へのアプローチディスク感受性値とMIC値よりの考察と
植手 鉄男津崎 幸枝古川 節子松尾 清光
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1982 年 35 巻 6 号 p. 1441-1461

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抄録

感染症治療の際の抗生物質投与について, 3っの重要点の解答が要求される. 1) 薬剤は効果的であるか. 2) 安全であるか. 3) どのくらいの量を, どのように投与すべきか.
各種感染症の治療に際し, 副作用をみることなく, 有効体液, 組織濃度を一定時間保つ抗生物質の適量投与が不可欠となる. 不十分な投与量は無効であり, 過剰な投与は副作用をもたらす.
一般に抗生物質 (抗菌物質) の体液, 組織濃度が細菌の最小発育阻止濃度 (MIC) 以上になるよう投与される. 敗血症などの重症 (全身) 感染症には静菌的抗生物質よりも殺菌的抗生物質がより効果的とされている1). さらに, MICの5-10倍 (一般的に8倍) 以上の血中濃度を一定時間保つた場合, 一層治療的成功率が高いとされている2-6).
このような場合, いかに当該薬剤の原因菌に対するMICの8倍以上の血中濃度をうるよう抗生物質の投与量を決定するか臨床上重要な問題となる. 薬剤の抗菌力, 副作用, 毒性により, 投与量が左右される. いう迄もなく臨床分離細菌株の薬剤に対する感受性には非常に大きな差がある上に耐性菌株の存在が問題となる. 標準菌株あるいは一定場所の一定時期にえられた臨床分離株の薬剤に対する最小発育阻止濃度の画一的な感受性結果が特定の患者から分離された菌株に適応できないことも多い. しかし, 細菌学的検査の行われる前のBlind therapyにおいてはこのような成績が参考となる. 適切なる投与量を設定するためには当該原因菌に対する薬剤のMICと薬剤の薬動力学的特性を知る必要がある.
臨床検査室では日常のルーチン検査として, MIC測定をすることは非常に困難であるので, ルーチン検査のディスク感受性結果を上記目的に利用しえないかどうかの検討を本研究において行つた. ディスク感受性テストを注意深くコントロールした場合, その定量的評価から, MICの大体の値を推定でき7-10), 当該薬剤の生体内の薬動力学的知見から適否の決定, 投与量の設定が可能となる. こうして, Blind therapyからOptional therapyへと可及的速やかに移行しうる.
本論文においてはディスク感受性結果およびMIC値とその相関関係から, 投与量設定へのアプローチをセフォチアムを用いて提示した. 加えて各種セファロスポリン, ペニシリン, アミノグリコシド, テトラサイクリン, マクロライド, クロラムフェニコールなどへの各種臨床分離細菌感受性を比較してセフォチアム利用の臨床的意義を考察した.

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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