The Japanese Journal of Antibiotics
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小児穿孔性虫垂炎の術後抗生剤療法
特にLatamoxefの検討
飯田 秀治井上 育夫山森 秀夫滝沢 淳伊藤 文雄香田 真一
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1983 年 36 巻 10 号 p. 2825-2832

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抄録

小児虫垂炎は小児急性腹症のうちでも乳児期以降では最も頻度の高い疾患でありながら, 早期診断がしばしば困難で, 更に発症から比較的短時間に穿孔をおこすため, 穿孔性腹膜炎として手術される症例も多い1~8)。小児では1度穿孔すると大網の発達が未熟なため, 汎発性腹膜炎となり重篤となる傾向が強い。しかし近年小児外科の発達に伴い全身管理の向上により死亡例は極めて稀になつたが, 未だ術後の合併症, 特に創感染, 創移開などの創治癒の遷延や遺残膿瘍, 癒着性イレウスなどの再手術を必要とする合併症も多く治療上の問題を残している。我々は小児虫垂炎の術後合併症は嫌気性無芽胞グラム陰性桿菌のBacteroides fragilisに感受性の少ない抗生剤を使用した症例に高頻度に発症していることに注目し, 虫垂炎術後の抗生剤療法はB.fragilisに高い感受性を有する抗生剤の使用が重要であると報告してきた1, 4)。我々はこれまでに小児虫垂炎, 特に穿孔性虫垂炎の術後抗生剤療法としてLincomycin (LCM) とGentamicin (GM) やTobramycin (TOB) などのAminoglycosideとの併用療法を行い, 術後の合併症の減少に務めて来た。そして最近開発された所謂る第3世代のCephem系Latamoxef (LMOX) が大腸菌などの好気性グラム陰性桿菌と嫌気性のB.fragilisの両者に強い抗菌力を持つことに着目し, 小児虫垂炎の術後抗生剤療法としてLMOXの単独投与を行い良好な結果を得たので報告する。

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