1983 年 36 巻 11 号 p. 2925-2950
感染症における起炎菌の決定はClosed systemからの検体を除き必ずしも容易ではない。殊に呼吸器感染症の起炎菌の決定は困難であると言われ, 事実著者らも, 日常の診療の際に, しばしばこのような例に遭遇している。このような呼吸器感染症が疑われる患者をまえにして, どのような治療方針をたてればよいのかが問題となるが, 感染症及び起炎菌決定のための諸種の検査を実施した後に, 抗菌・抗生剤を投与するのが通常ではないかと考えられる。そこで, どのような抗菌・抗生剤を投与すべきかは, すべて各医師の経験, 知識によつて決定されている。これに資する重要な情報として, 各病院が個別に集積してきた呼吸器感染症分離菌の薬剤感受性分布・推移などが活用されよう。しかしながら個々の病院で集められる情報は極めて限られたものであり, より多くのしかも質の高い情報を得るためには, 呼吸器感染症を検討している全国の施設が共同して, 呼吸器感染症患者から分離した起炎菌を集め, それらの抗菌・抗生剤に対する薬剤感受性分布・推移を常に把握しておくことが最良の方法ではないかと考えられる。このような目的で, 本研究を開始し, 今回若干の知見を得たのでここに報告する。