1984 年 37 巻 3 号 p. 303-308
造血器悪性腫瘍は種々の抗癌剤の開発や成分輸血等の補助療法の発展により長期生存例が増えつつある。しかしながら抗癌剤による宿主の免疫抑制に加え, 強力な抗生物質による治療の結果, 深在性真菌症が増加し, その的確な診断が困難なことや効果的な治療法がないために, 血液学的寛解到達前に死に到る症例が少なくない1)。真菌症の中ではカンジダによるものが最も多いが2), FlucytosineやAmphotericin B(AMPH)による治療効果は不充分であることが多く, 又, AMPHはアナフィラキシーや腎障害のため投与困難なことがまれではない。
今回我々は造血器悪性腫瘍患者の化学療法中に真菌感染症を併発したと考えられた12例に, 1969年に合成された新しい抗真菌剤であるMiconazole (1-{2, 4-Dichloro-β-[(2, 4-dichlorobenzyl) oxy]phenethyl}imidazole) を使用する機会を得たので報告する。