The Japanese Journal of Antibiotics
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造血器疾患に合併した重症感染症に対するCefotiamと多剤併用療法の臨床的検討
宇野 伸郎南 信行田中 公片山 直之神尾 典彦片岡 吉貴太田 千鶴子康 龍男大野 敏之影山 慎一岩田 吉史小林 透仮谷 嘉晃白川 茂
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1984 年 37 巻 5 号 p. 807-816

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抄録

急性骨髄性白血病, 急性リンパ性白血病, 悪性リンパ腫, 慢性骨髄性白血病, 慢性リンパ性白血病, 多発性骨髄腫, 悪性細網症などの疾患は, 宿主免疫不全状態であるうえに, 治療により末梢白血球数の減少を伴い感染症を合併しやすいことは周知のとおりである。
これら疾患の治療は各種抗白血病剤の開発に伴い進歩をとげてきた。一方, 血小板, 自血球などの成分輸注, 及び無菌室や強力な抗生物質投与などの補助療法の改良に伴い, 治療成績が延びていることは言うまでもない。
急性白血病の二大直接死因は出血と感染であり, 表1は, 昭和50年~56年に当科で経験した非リンパ性白血病44例の死因を示した成績で, 昭和50年~53年までは感染死が24例中5例 (20.8%) であったのに対して, 昭和54~56年までは20例中10例 (50%) と増加してきた。昨今, 血小板輸注により出血死が減少傾向にある反面, 感染死が増加しており, 合併感染症の治療の成否が, 急性白血病の予後を左右する大きな要因となっている。
第2世代セフェム系薬剤のうち, 基本抗菌力が強く, β-ラクタマーゼ産生株にも相当程度の活性を示すCefotiam (商品名パンスポリン, 以下CTM) は, 免疫正常者の感染症に対する第1次選択薬剤として理想に近い1)。第3世代セフェム系薬剤がグラム陽性菌のブドウ球菌に対する抗菌力では劣ることが判明するにつれ, CTMに対する注目が集まつている。
今回, 我々は造血器疾患の経過中に合併した難治性感染症に対してCTMを中心に多剤併用療法を施行し, その臨床効果, 副作用について検討する機会を得たのでその結果を報告する。

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