1985 年 38 巻 1 号 p. 179-189
過去5年間に, わが国において新規に開発されたセフェム系注射用抗生物質は, 10余種にものぼり, これらは主としてその開発年代により, 便宜上第2あるいは第3世代セフェム剤と一括し称せられている。1960~70年代に市販されたCephaloridine, Cephalothin, Cefazolin (CEZ) 等いわゆる第1世代のものを含め, これら多種に及ぶ注射用セフェム剤を的確に, 個々の感染症に使い分けることは必ずしも容易ではない。化学療法剤の選択において, 基本的に重要な概念としては, 起炎菌に対する抗菌性, 薬剤の体内動態などが挙げられるが, 各施設における多数の臨床分離菌のそれぞれの抗菌剤に対する感受性の分布の特徴を認識することも, 肝要と考えられる。今回著者らは, 最近2年間に当科患者 (主として複雑性尿路感染症) 尿中から分離された各種グラム陰性桿菌に対する8種注射用セフェム剤のMIC分布を比較検討したので報告する。