The Japanese Journal of Antibiotics
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38 巻, 1 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
  • 太田 博孝, 曽我 賢次, 村田 誠, 真木 正博
    1985 年 38 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftriaxone (Ro 13-9904, CTRX) はCephalosporin系の抗生物質であり, その化学構造はFig. 1に示すとおりである。
    本剤は抗菌スペクトルが広域であり, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeはもとより, Proteus mirabilis, Haemophilus influenzaeに強い抗菌力を示す。又, in vitroにおける効果よりin vivoにおける効果が優れている。本剤の臨床薬理学的特徴は静注, 点滴静注により高い血中濃度が得られ, その半減期は7~8時間であり, 従来のCephalosporin系の抗生物質の中では血中濃度半減期が最も長い1)。
    今回, 我々は産婦人科感染症に対しCTRXを投与し, その効果を検討したので報告する。
  • 井上 公俊, 森崎 伸之, 千村 哲朗
    1985 年 38 巻 1 号 p. 4-7
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephalosporin系の注射用抗生物質として新しく開発されたCeftriaxone (Ro 13-9904, CTRX) は, 3位側鎖に新規のトリアジン環を有している。本剤の抗菌スペクトラムは広域であり, in vitroよりin vivo効果に優れ, 従来のCephalosporin系抗生物質中では血中濃度半減期が7~8時間と最も長く, 未変化体で尿中に48時間までに約60%が排泄されると言う。
    こうした特徴を有するCTRXの臨床効果を産婦人科領域での感染症で検討する機会を得たので, その成績を報告したい。
  • 舘野 政也
    1985 年 38 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科感染症は他科の感染症に比較して特異的で, その部位的な関係から起炎菌の証明が困難な場合があり, 起炎菌に抗菌性のある抗生物質を選択的に使用することはなかなか困難で, 従つてこれら感染症に対しては抗菌スペクトラムの広い抗生物質の使用を余儀なくさせられる。今回我々は新抗生物質であるCeftriaxone (Ro 13-9904, CTRX) を日本ロシュ社から提供を受け, 産婦人科感染症, 主として帝王切開や経腔分娩後の子宮内感染, 各種婦人科手術後の発熱例, 卵管瘤膿腫や子宮内膜炎などの感染症及び性器癌患者の発熱例などに使用する機会を得たので, 少数例ではあるがそれらの使用成績について検討を加えてみたいと思う。
  • 出口 晴彦, 増崎 英明, 村上 誠, 山辺 徹
    1985 年 38 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftriaxone (CTRX, Ro 13-9904) は1978年スイスのF. Hoffmann-La Roche社で開発されたCephalosporin系の注射用抗生物質であり, その化学構造は3位側鎖に新規のTriazine環を有している(Fig.1)。
    本剤は他のいわゆる第3世代のCephalosporin剤と同様に広範囲の抗菌スペクトラムを有し, 静脈内投与により高い血中濃度が得られ, 血中濃度の半減期が7~8時間と従来のCephalosporin系の薬剤の中では最も長いことが特徴とされる。今回, 産婦人科領域における本剤の臨床有用性を検討する機会を得たのでその成績を報告する。
  • 吉田 耕作, 高橋 昌巳, 與那覇 朝英, 一幡 良利, 碓井 之雄
    1985 年 38 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    化学療法剤の抗菌力効果は試験管内においてMICあるいはMBC値で比較検討されている。しかし生体に化学療法剤を投与した際, 感染病巣にMICあるいはMBC量に到達するには化学療法剤を極めて大量に投与するか, 長時間を要し, 多くは薬剤のMIC以下の濃度で細菌と接触する可能性がある。一方, 試験管内で細菌をMIC以下の濃度の化学療法剤に作用させても, 細菌の形態に変化が生ずることをGARDNER1), DIENES2), LoRIANら3)が記載している。
    近年, 化学療法剤のMIC以下の濃度を用いた研究が各方面で行われているが, その多くは1/4MIC以上の高濃度であり4, 5), MAC測定法も異なる。著者らはMIC以下の濃度における細菌の形態的変化を再検討するため, 臨床材料から分離した肺炎桿菌を用い, セファピリンのMIC以下の濃度からMAC (Minimum antibiotic concentration) における該菌の生菌数の比較と形態変化とを観察し, 興味ある知見を得たので報告する。
  • 他剤との比較
    高橋 長一郎, 宮沢 光瑞
    1985 年 38 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefmenoxime (CMX) は新しいCephalosporin系抗生物質の一種で, 細菌の産生するβ-Lactamaseに対して安定で, 細菌の外膜透過性及びペニシリン結合蛋白との親和性も良好なため抗菌スペクトラムが広く, 且つ強い抗菌力を有することが報告されている1-3)。今回, 著者らは臨床例から分離したグラム陽性球菌, グラム陰性桿菌についてCMXの抗菌作用を従来のCephem系抗生物質及びPenicillin系抗生物質のそれと比較したので報告する。
  • 円谷 博, 渡辺 岩雄, 及川 幹夫, 遠藤 辰一郎
    1985 年 38 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephalosporin系抗生物質であるCefmenoxime (略号CMX, Bestcall®) は従来のCephalosporin剤に比べグラム陰性菌に対しても強い抗菌力を示し, 特にSerratia,Klebsiellaにも比較的強い抗菌力1)を有し, 胆汁中移行がよい2)と言われている。
    今回われわれは, 昭和55年1月から昭和58年11月まで当科及び関連病院にて入院加療を受けた胆道疾患37症例につき, CMX及び比較対照としてCefotiam (略号CTM, Pansporin®) に関しての基礎的・臨床的検討を行つたので報告する。
  • 鷲尾 正彦, 小林 稔, 永江 宣明
    1985 年 38 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefmenoxime (商品名: ベストコール, 略号: CMX, 武田薬品) は, セファロスポリンの母核である7-ACA (7-Aminocephalosporanic acid) に, アミノチアゾール環, 及びテトラゾール環を有するCephem系抗生物質である (図1)。その特性としてグラム陰性・陽性の好気性菌及び嫌気性菌に広い抗菌スペクトラムを有する1~3)。又, 体液中, 組織内への移行も良好であると報告されている4, 5)。今回, われわれは, 肺手術症例に対してCMXを投与し, 投与後の肺組織内濃度を測定し, CMXの肺組織移行を検討したので報告する。
  • 野垣 秀和, 石田 和彦, 川口 哲郎, 長尾 朋典, 柴田 裕次
    1985 年 38 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    脳神経外科領域で抗生物質を使用する際には, その抗菌力, 抗菌スペクトル等に加えて, 髄液移行性が重要な問題となる。つまり, 血液脳関門の存在のために, 全身的に投与された抗生物質は, わずかしか髄液中に移行しないと考えられる1~7)。又, 薬剤の髄液移行性は宿主側の条件と薬剤側の因子とに左右され, 個体差も大きいことが知られている。
    今回, 第3世代の抗生物質として臨床的に幅広く使用されているcefmenoxlme (CMx, Bestcall®) を全身的に投与し, 腰椎ドレナージを用いて髄液を採取し, 経時的に血清中並びに髄液中CMX濃度を測定し, 本剤の髄液移行性を検討した。
  • 足木 淳男, 津久井 厚, 大和 健二, 鈴木 唯司, 浜田 和一郎, 楠美 康夫, 須藤 芳徳
    1985 年 38 巻 1 号 p. 49-61
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefmenoxime(CMX)は武田薬品工業株式会社中央研究所において合成されたセフェム系抗生物質である。本剤はその特徴として, 広範囲抗菌スペクトラムを有し, 又, β-Lactamaseに安定で, 他剤耐性のβ-Lactamase産生菌にも良好な抗菌力を有すると言われている。われわれは本剤を慢性複雑性尿路感染症に対し使用する機会を得たので, その臨床的効果を報告する。
  • 早坂 弘康, 佐々木 斉, 暮部 勝, 三田 美智子, 新里 鉄太郎
    1985 年 38 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cisplatin (cis-Diamminedichloroplatinum) はRNAや蛋白の生合成に影響しない用量で特異的にDNA合成を阻害し抗腫瘍効果を引起すと示唆され1), 抗腫瘍効果は実験動物1, 2) だけでなく臨床3~8) でも明らかにされている。しかしながらCisplatinには消化管障害, 造血障害, 腎障害及び聴覚器障害等の副作用9~13) があるために, 臨床投薬量が制約される。特にCisplatinの腎毒性は低い用量で起るために臨床上重要な問題である14, 15)。DOBYAN等はCisplatinが近位尿細管で有機酸の分泌排泄機構によつて能動的に輸送されることを示唆し16), 又, Cisplatinによる腎尿細管上皮細胞の壊死15~17) は細胞内にPlatinumが長時間貯留するためと考えている18)。更に多数の研究者は尿のCisplatin濃度と腎障害との相関性を示唆している19~24)。
    一方Fosfomycin (FOM) は静脈内投与後そのままで腎から速やかに排泄され25), アミノ配糖体抗生物質の腎毒性を軽減すると報告されている26~28) ことから, 本研究ではCisplatinの毒性, 特に腎毒性に対するFOMの影響について検討し, 二三の知見を得たので報告する。
  • 森崎 伸之, 千村 哲朗
    1985 年 38 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    妊娠中の羊水感染は, 近年破水や早産の原因として注目され, 腟及び子宮頸管部の細菌叢との関係で上行性感染源として重要な意義を有する。これら細菌変動に関する報告は, SLOTNICKら (1963), DELOUVOISら (1975) 1), MACKEYら (1977) にみられ, Group B Streptococci (BAKERら, 1973) やMycoplasmas (BRAUNら, 1971)にも認められる。
    羊水感染は, 通常細菌が羊水中に生育し卵膜, 胎盤基質, 絨毛, 臍帯などへの炎症拡大過程を示すが (Chorioamnionitis), その症状は無症状のものから胎内死亡, 新生児死亡, 早産, 肺炎, 発育障害などの原因となる。腟, 子宮頸管部の細菌感染に対するDefense mechanismとしては, 頸管粘液及び羊水のAntibacterial activityが注目されるが, 破水時の子宮頸管部の細菌叢の検索は上行性感染の起炎菌との関係で必要と言えよう。今回われわれは, 妊娠後半期の子宮頸管内の細菌検査と羊水のAntibacterial effectについて検討したので報告したい。
  • Aminoglycoside系抗生剤併用による検討
    酒井 英樹, 前 素直, 入江 徹也
    1985 年 38 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefoxitin (以下CFX, 商品名マーキシン注射用®は各種細菌が産生するβ-Lactamaseに対して安定性の高いCephamycin系抗生物質で, グラム陽性球菌だけでなくEscherichia coli, Klebsiella, インドール陽性Proteusに対して抗菌力を持ち, 更には嫌気性菌Bacteroides fragilisにも極めて有効であると言われ, その優れた有用性については, 今までに多くの報告がなされている1~8)。
    今回, 我々は消化器疾患領域の感染症に対して, CFXの治療効果を試み, 若干の知見を得たので報告する。
  • Cefoxitinの使用経験
    小田 裕胤, 土井 一輝, 砂金 光蔵, 斉鹿 稔, 丘 茂樹, 河合 伸也, 今釜 哲男
    1985 年 38 巻 1 号 p. 83-94
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    外科手術後の術後感染予防は外科学の基本であるが, 特に整形外科領域においては, 術後感染を合併するとすべての手術的治療は悲惨な結果を生じるので, その予防には最大の関心が払われてきた。
    術後感染予防のためには, 無菌的手術環境, 技術の改善と抗生物質の予防投与が重要な問題である1)。整形外科領域での感染症の起炎菌の変化によつて, 抗生物質もPenicillin系万能の時代からCephem系抗生物質の時代に入つているが, いわゆる第1世代Cephem系抗生物質は耐性菌が出現してきているため, 第2, 第3世代の抗生物質が数多く開発され, 臨床使用されるに至つている2)。
    今回, Cephem系第2世代の抗生物質であり, β-Lactamaseに極めて安定なCefoxitin3~8)(マーキシン注射用®, 以下CFXと略す)の術後感染予防の使用経験を得たので, CFXの術後感染予防に対する臨床効果について報告する。又, 整形外科領域における最近の起炎菌とその薬剤感受性から, 術後感染予防のための抗生物質の選択の問題についても検討する。
  • 野田 克已, 松波 和寿, 伊藤 邦彦, 早崎 源基
    1985 年 38 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefoxitin (CFX, Merxin®) はCephem環の7α位にMethoxy基のついた構造を持ち, β-Lactamaseに対し安定性が増強された最初のCephamycin系の抗生物質である。β-Lactamaseを産生し, 従来のCephalosporin剤に耐性を示すEscherichia coli, Klebsiellaなどに対し有効であり, 従来のCephalosporin剤では無効とされていたBacteroides fragilisにも抗菌活性を示し, 産婦人科領域でも有用な薬剤として評価されている。
    われわれは以前に本剤による治療経験を発表している1)が, 今回, 臨床例に対する用法, 用量を決定する目安となる基礎的資料の必要性を感じ, その検討を行つた。
  • 酒井 秋男, 川島 彰, 上田 五雨, 八木 ひかる, 吉村 一彦, 平井 一也, 久保 恵嗣, 福島 雅夫, 草間 昌三, 横地 武敏, ...
    1985 年 38 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質の組織への移行度を定量的に評価するためには, 血液中と臓器内濃度の解析によるが, 現在, 一般に行われている臓器内濃度測定法は,抗生物質の血漿, 細胞内及び組織間液などを含めた濃度を測定している可能性があり, 組織間液の濃度が忠実に反映されているとは限らない。
    今回, われわれは, 緬羊を用いて, 肺組織間液にほぼ等しいと考えられる肺リンパ液を採取することにより, Cefotaxime (以下CTX) の静脈内投与後における血清中及び肺リンパ液中CTX濃度を測定し, 本剤の肺組織への移行度について検討したので報告する.
  • 土田 晃, 平元 東, 吉岡 一, 井関 憲一, 滝本 昌俊, 向井 直樹, 早苗 信隆, 清水 重男, 丸山 静男, 田崎 卓見, 原口 ...
    1985 年 38 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児の感染症には肺炎など起因病原体の同定が難しい疾患や, 化膿性髄膜炎のように, 起因菌同定の結果が判明する前に抗生物質の投与を開始しなければならない疾患が少なくない。起因病原体が判らないままに治療退院する場合も多いものである。このように細菌学的結果が不明のままに治療退院する症例が多いと言うのが第一線の臨床にありがちな状況であろうと思われる。
    Cefotaxime (CTX) はEscherichia coli, Klebsiella, Proteus, Enterobacter, Serratiaなどグラム陰性の腸内細菌群に対して強い抗菌力を持つており, 又, 他の菌種特に小児の細菌感染症の起因菌として頻度の高いA群及びB群の溶連菌, 肺炎球菌, 髄膜炎菌, インフルエンザ菌に対しても強い作用を持つことが知られている1)。将来小児の感染症治療の第1選択薬剤として使用される場合も少なくないと思われる。
    今回の治験はCTX (セフォタックス®) を細菌学的な検索の結果を待たず第1選択の薬剤として使用した場合の効果及び副作用がどのようなものかを知る目的で行われた。
    今回対象とした症例117例のうち除外例26症例を除いた約2/3は呼吸器感染症であつたが, これら感染症に対するCTX第1選択使用後の有効率は76.9%であつた。
  • 浦部 晶夫, 高久 史麿, 溝口 秀昭, 檀 和夫, 外山 圭助, 三宅 喜代子, 戸塚 恭一, 岩田 展明, 坂本 忍, 前川 正, 野村 ...
    1985 年 38 巻 1 号 p. 114-120
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefminox (CMNX, MT-141) は, 明治製菓中央研究所において開発されたセファマイシン系抗生物質であり, メトキシ基を持ち, 又, 7位側鎖にアミノ酸を含んでいる。本剤はβ-ラクタマーゼに安定であり, グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して広範な抗菌スペクトラムを有し, Bacteroides fragflis, Clostridium difficileなどの嫌気性菌に対しても優れた抗菌力を有している(図1)1)。
  • 水頭症に対するDouble dose
    加川 瑞夫, 森 伸彦, 朝日 茂樹, 田鹿 安彦
    1985 年 38 巻 1 号 p. 121-127
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    脳神経外科の術後管理では, 頭蓋内感染の予防が最優先されなければならない。急性期の脳血管障害患者が, 持続脳室ドレナージや, 脳槽ドレナージの術後設置により救命される一方で1, 2), 無菌的手術にもかかわらず, 髄膜炎や, 脳室炎などの感染機会が増加していることも事実である3)。このため多くの場合, 術直後から優れた抗菌力を有し, 副作用が少なく, しかも脳組織や髄液内への移行が良好な抗生物質を選択し, 予想される起炎菌のMICも考慮した上で, 適当量を予防的に投与することが肝要である。
    Cefoperazone (Cefoperazine®, 略号CPZ) は本邦で開発された代表的なCePhem系の抗生物質の1つで, グラム陽性菌, グラム陰性菌に対してBroad spectrumを有し, これまでCephalosporin系の抗生物質では無効とされたPesudomonas aerudinosaSerratia marcescensにも強い抗菌力を示す4, 5)。又, 比較的高い血中濃度が長時間持続することも特徴の1つである4)。今回, 著者らは小脳出血や脳出血の脳室穿破で急性水頭症をきたし, 持続脳室ドレナージを設置した患者を中心に, 頭蓋内感染予防にCPZ4gを投与し, その血中濃度と脳室内髄液移行を経時的に測定したので報告する。
  • 糸瀬 薫, 古川 正人, 大坪 光次, 山田 隆平, 前田 滋, 伊藤 新一郎, 中田 俊則, 森永 敏行
    1985 年 38 巻 1 号 p. 128-132
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 胆石症術後患者11例に第3世代のセフェム系抗生剤Cefoperazone(CPZ)1gを点滴静注し, その血中及び胆汁中移行濃度を測定した。他剤とのCross over testではCefazolin(CEZ)1gを用いた。
    2. CPZの平均血中濃度は点滴開始後1時間目に最高値88.3±24μg/ml, 2時間後52±11.7μg/ml, 4時間後も36.5±10μg/mlであり, CEZの平均血中濃度に比べ持続時間が長い傾向にあつた。
    3. CPZの平均胆汁中濃度は点滴開始後2時間目に最高値810±459μg/mlを示し, 4時間後にもなお562±319μg/mlと高濃度を維持していた。一方, CEZでは1時間目に最高値28.7±26μg/mlを示すにすぎず, 全経過中低値であつた。
    4. CPZとCEZの最高胆汁中濃度を同一症例で比較すると, 各々の平均値ではCEZの28.6±26.3μg/mlに対して, CPZは942±525μg/mlと, CPZはCEZの約30倍の値を示した。
    5. CPZとCEZのMICを比較すると, グラム陽性菌ではその差はなかつたが, グラム陰性菌ではCEZの0.78~400μg/mlに対して, CPZは0.10~50μg/mlと全株でMICは低かつた。なお,本剤投与によると思われる自・他覚的副作用は全例に認めなかつた。
  • 渡辺 秀輝, 阪上 洋, 大田黒 和生, 上田 公介
    1985 年 38 巻 1 号 p. 133-136
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    術後感染予防に関して術着の手洗方法, 創部消毒法, 術中の空中落下細菌など多数の因子が関係しているが, とりわけ重要な問題は抗生物質の投与方法ではないかと思われる。piperacillin (PIPC) 及びCefoperazone (CPZ) はいずれも広い抗菌スペクトラムを持つた抗生剤であり, 泌尿器科領域でも多く使用されている。今回われわれは両薬剤の術中の投与が, 術後感染予防に有効であるかどうかを検討し, 一定の結論を得たので報告する。
  • In vitro及びin vivoにおいてNeocarzinostatinの毒性を軽減させる薬物の検討
    伊藤 彬, 羽田 いそ子, 鳥山 和壮, 大内 勝, 松本 朋徳, 馬場 恒男, 小出 芳夫
    1985 年 38 巻 1 号 p. 137-144
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Neocarzinostatin (NCS) は, Streptomyces carzinostaticus var. F-41の培養瀘液から分離精製された制癌性抗生物質である1)。多数の臨床報告によれば, 胃癌, 膵癌, 膀胱癌, 急性白血病に対して優れた治療効果を示しており2), 現在頭頸部癌3), 肝癌4), に対する臨床応用も試みられている。
    しかしながら, NCSを臨床使用した際には, 白血球減少, 血小板減少, 発熱, 悪心・嘔吐, 食欲不振などの副作用の発現が報告されており5, 6), このことは多くの制癌剤と同様癌細胞に対してだけ選択的に作用することなく, 正常細胞にも障害を及ぼすためであると考える。これらの副作用が重篤な場合には投与を中止せざるを得なく, 十分な治療効果が期待できないこともあり得るので, 副作用を防止し抗腫瘍効果を発揮させるために種々の投与方法の検討が行われている7~12)。松本ら13)は膀胱癌に対しNCSを内腸骨動脈内に注入し, 石原ら14)は皮膚癌に対しNCSを腫瘍内に局注することによつて, 全身性の副作用の発現なしに有効な治療を行つている。
    一方, 馬場, 西川15)及び魚住ら16)はラット転移性腫瘍に対し, 薬物を肝動脈内に注入し, その拮抗剤を全身投与する2経路注入化学療法によつて, 副作用の発現を抑え抗腫瘍効果増強を認めている。すなわち, ラット肝転移性腫瘍に対しNitrogen mustard N-oxideを肝動脈から局所的に投入し, 大腿静脈から拮抗剤L-Cysteine monohydrochloride monohydrateを全身的に投与することによつて副作用の発現なしに抗腫瘍効果を得ている。更にその後, 馬場らは制癌剤cis-Platinumに対しSodium thiosulfateが非常によい拮抗剤であることを研究し, ラットの癌性腹膜炎17)及びラットの膀胱腫瘍18)に対して優れた治療効果を見出している。この2経路注入化学療法は現在, 臨床的にも末期癌性腹膜炎, 肝癌等で成果が認められており, この方法の価値が高く評価されてきた19)。
    このように, 薬物を局所適用する方法も副作用の発現を防止する有力な1つの方法であると考えられる。そこで今回, われわれはNCSを腫瘍組織に対し局所適用する際に, 腫瘍組織外に漏出したNCSを不活化することにより正常組織に対する毒性を抑制し副作用を防止することを目的として, in vitro及びin vivoにおいてNCSの毒性を軽減させる薬物の検討を行つたのでその成績を報告する。
  • 岡田 正, 奥村 賢三, 小関 万里, 東島 哲也, 池田 義和, 大口 善郎
    1985 年 38 巻 1 号 p. 145-154
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefsulodin(CFS)は武田薬品中央研究所で合成された注射用セフェム系抗生物質で, 緑膿菌に対してアミノ配糖体系抗生物質に匹敵する強い抗菌力を有し, 臨床的にも本剤の成人各科領域における有効性と安全性はすでに確認されている1)(Fig. 1)。
    一方小児科領域においても臨床的有用性の検討が行われており, 体重kg当り主として1日60~200mgの3~4回分割投与がなされている2)。
    小児の薬物動態は成人と異なることが多く, 小児の薬物投与法を決める際には小児における各薬物の動態を詳細に検討しておく必要性がある。
    今回我々は, 小児における本剤の体重kg当り1回最低投与量と考えられる15mgと最高投与量と考えられる50mgの静注及び1時間点滴静注時の血清中濃度, 尿中排泄の経時的変動につき検討を行つたので, その成績を報告する。
  • 組織内残存血液の影響を補正して
    前田 元, 橋本 純平, 中原 数也, 大野 喜代志, 池田 正人, 南城 悟, 三好 新一郎, 城戸 哲夫, 門田 康正, 川島 康生, ...
    1985 年 38 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    呼吸器外科領域においては, 術後感染症予防の目的で, 種々の抗生物質の投与が行われている。しかし, 薬剤のin vitroにおける抗菌力は明らかであるが, in vivoにおいては薬剤の体内動態, 標的とする臓器への移行性が関与し, その評価は比較的困難とされている。又, 肺は多くの血管床を持つ組織であるため, 採取肺検体中に残存する血液が, 真の肺組織内濃度測定に際し, 何らかの誤差を生ずるはずであるが, これに対する配慮は現在あまりなされていない。
    今回, 我々は新しいCephem系抗生物質であるCefotiam (CTM) を開胸手術施行症例に術中投与し, その血中濃度及び前述の肺内残存血液の影響を補正した肺組織内濃度を経時的に測定し, 肺組織への移行性に検討を加えたので報告する。
  • 木全 博己, 山本 正博, 中谷 正史, 斉藤 洋一
    1985 年 38 巻 1 号 p. 160-165
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    術後感染症の発症は, 外科学と麻酔学の進歩や薬効の高い抗菌・抗生剤の開発が進んだ現在でも皆無にはなつていない1)。
    術後の感染をできるだけ少なくするため抗菌・抗生剤が予防的に投与されているが, 我が国において, その感染予防効果に関する報告は少ない。坂部ら2)は, 胃切除術及び胆嚢摘出術における術後感染の頻度を抗生剤2g/日, 5日間投与群において12.5% (17/136) であつたと報告している。しかしながら予防的に抗生剤が投与されていない場合と比較して感染頻度が低くなつているかどうか, 又, 同一の薬剤でも投与法の相違によつてその感染予防効果に差があるかどうかなどについては, 我が国においては報告された例は少ない。
    いわゆる第2世代セフェム系抗生剤の代表であるCefotiam (CTM) は, グラム陽性菌並びにグラム陰性菌に対して優れた抗菌力を有しているため術後の創感染, 尿路感染あるいは呼吸器感染の防止にかなり有効である3~5)。
    著者らは, CTMの投与法を変え術直後から5日間投与し, 主として胃癌手術後のCTM投与法の相違による感染予防効果を検討し, 若干の知見を得たのでここに報告する。
  • 廣川 勲, 市川 篤二, 石原 八十士
    1985 年 38 巻 1 号 p. 166-178
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Bestatin (NK 421) は梅沢等によりStreptollyces olivoreticuliの培養液から分離された酵素阻害物質である1)。Bestatinは低分子のジペプチド2, 3)で分子式はC16H24N2O4, 分子量308.21, その構造式は図1のとおりである。毒性は極めて低く4, 5), 細胞表面のAminopeptidaseBとLeucine aminopeptidaseを選択的に阻害する作用がある1, 2)。
    Bestatinは多くの基礎実験から, 担癌生体の低下した免疫応答の増強作用, 免疫担当細胞の賦活作用, 抗腫瘍性, 発癌抑制作用及び感染に対する宿主の抵抗性の増強作用があることが報告されている2,6~8)。
    我々はBestatinを尿路性器悪性腫瘍患者に使用し, 免疫機能に対する影響等について検討したので, その治療成績について報告する。
  • 藤井 明, 石神 襄次, 片岡 陳正, 守殿 貞夫, 荒川 創一
    1985 年 38 巻 1 号 p. 179-189
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    過去5年間に, わが国において新規に開発されたセフェム系注射用抗生物質は, 10余種にものぼり, これらは主としてその開発年代により, 便宜上第2あるいは第3世代セフェム剤と一括し称せられている。1960~70年代に市販されたCephaloridine, Cephalothin, Cefazolin (CEZ) 等いわゆる第1世代のものを含め, これら多種に及ぶ注射用セフェム剤を的確に, 個々の感染症に使い分けることは必ずしも容易ではない。化学療法剤の選択において, 基本的に重要な概念としては, 起炎菌に対する抗菌性, 薬剤の体内動態などが挙げられるが, 各施設における多数の臨床分離菌のそれぞれの抗菌剤に対する感受性の分布の特徴を認識することも, 肝要と考えられる。今回著者らは, 最近2年間に当科患者 (主として複雑性尿路感染症) 尿中から分離された各種グラム陰性桿菌に対する8種注射用セフェム剤のMIC分布を比較検討したので報告する。
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