The Japanese Journal of Antibiotics
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新しいヒト免疫グロブリン製剤SM-4300の重症感染症に対する抗生剤との併用効果
斎藤 玲中山 一朗富沢 磨須美
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1985 年 38 巻 9 号 p. 2481-2488

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抄録

ヒト免疫グロブリンは細菌, ウィルス及び原虫に対し, 幅広い抗体を有しており, 低又は無ガンマグロブリン血症の補充療法はもとより, 重症感染症における抗生剤との併用療法に適応され, 臨床使用において, 感染症の予防並びに治療に効果的に作用すると言われている。ヒト免疫グロブリンの作用としては細菌に対する直接作用はないが, 含有される特殊抗体が細菌と結合して, 生体内で細菌抗体によるオプソニン効果が高められること, すなわち食細胞が細菌をとり込みやすくすること, 又, 特にグラム陰性桿菌の一部などでは, 細菌に抗体が結合して補体を活性化し, その補体が細菌の細胞膜を破壊する免疫溶菌現象がみられることなどから, 重症細菌感染症において抗生剤の効果に限界がある時に, 生体に対する抗体の補給, 非特異的な感染抵抗性の強化をねらつてヒト免疫グロブリン製剤の併用を行うことが治療を有利にすると考えられている1~3)。近年Compromised hostにおける感染症は増加し, 重症, 難治の傾向をとり, 抗生剤の治療に限界が有る場合に, ヒト免疫グロブリン製剤の併用効果を期待しての併用療法が増加している。
ヒト免疫グロブリン製剤としては, 筋注用製剤をはじめ, 酵素処理製剤, スルホ化処理等の化学修飾による製剤, ポリエチレングリコール処理製剤などの静注用製剤が実用化されている。このうち, ポリエチレングリコール処理のものは非修飾の型で, Intactな免疫グロブリンである。このIntact型の製剤が最近種々検討されている。
今回, われわれは住友化学工業 (株) と日本トラベノール (株) で共同開発された新規乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤SM-43004)を用いる機会を得た。SM-4300は, コーンの低温エタノール分画5) によつて得られたガンマグロブリン分画をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子の凝集体を除去しており, ペプシンやプラスミンで処理した分屑でなく, 又, スルホ化等の化学修飾を受けていない, すなわちIntact型のヒト免疫グロブリン製剤である。90%以上の7S-IgGからなり,抗補体作用も低い。このSM-4300を用いて内科領域における重症感染症に対する抗生剤との併用効果について検討を行つたので報告する。(なお, SM-4300は住友化学工業 (株) から提供されたものを用いた。)

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