1985 年 38 巻 9 号 p. 2453-2480
Lenampicillin (LAPC, KBT-1585) は, 鐘紡株式会社薬品研究所において創製され, 同社と鳥居薬品株式会社で開発されたAmpicillin (ABPC) のプロドラッグであり, Fig. 1の構造を有する。従来のABPCのプロドラッグであるPivampicillin, Talampicillin (TAPC), Bacampicillin (BAPC) は, ABPCの2位のカルボキシル基の酸素原子に隣接する炭素原子に酸素原子が直接結合した形のダブルエステルであり, 吸収過程でアルデヒド体を形成するのに対して, LAPCは同位置に炭素原子が結合するという新規な構造を有し, 吸収過程で速やかにABPCとアセトイン1) に代謝され, アルデヒド体を形成しない。本剤のアセトイン等の代謝物は生物界及び食品に広く存在するNatural substanceであるという特徴を有している。
本剤は体内でABPCとなり, 口腔外科領域の歯性の化膿性疾患において多く検出されるグラム陽性球菌に対し強い抗菌力を持つている。
今回我々は, 口腔外科領域感染症におけるLAPCの有効性, 安全性並びに有用性を客観的に評価するため, Fig. 2の構造を有し, 抗菌力, 体内動態も似ていると予測されるTAPCを対照薬として二重盲検比較試験を実施したのでその成績を報告する。