The Japanese Journal of Antibiotics
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重症細菌感染症に対する新規免疫グロブリン製剤 (SM-4300) と抗生物質との併用効果
山地 恵美子川口 広中山 一誠糸川 冠治秋枝 洋三
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1985 年 38 巻 9 号 p. 2617-2621

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抄録

免疫グロブリン製剤の適応は本来, 低又は無ガンマグロブリン血症であるが, 正常の免疫反応を有する患者における難治性重症細菌感染症の治療の補助として, 抗生物質と併用し, 各種のガンマグロブリン製剤の使用頻度が増加している。免疫グロブリンは細菌に対する直接作用はないとされているが, 細菌に抗体が結合して生体内で細菌抗体によるオプソニン効果 (食菌能) が高められること, 補体を介しての抗炎症作用, 溶菌並びに含有抗毒素による中和作用などの作用機序が考えられ, 抗生物質療法の限界を感じる場合, あるいは体液性免疫異常のある場合には, High riskの患老に適応があると考えられる1~4)。
ガンマグロブリン製剤は, 開発当初の筋注製剤のほか, 最近では種々の化学的処理により静注可能な製剤が登場し, 高い血中IgG濃度とヒトのガンマグロブリンと同様の半減期 (日) が得られると共に, 筋注の局所刺激性も解決されたが, 吸収効率が悪く, 投与量の限界, 投与量の約50%が組織中の蛋白分解酵素により失活するなどの欠点がみられる。これらの欠点を克服するために酵素処理やポリエチレングリコールの分画法の改善, 化学修飾法の開発などによつて静注可能な免疫グロブリン製剤の開発が進んだ。酵素処理製剤ではフラグメント化のため半減期の短縮, Fc欠損による補体結合に由来する感染防御能の低下などの短所があり, 化学修飾法による製剤ではFc活性の回復に時間を要するなどの短所がみられるが, 最近, 非特異的補体結合のないヒトのガンマグロブリンに近い製剤の開発が行われている。ただ, これらの製剤はいずれも実際上の臨床効果には, その特徴を明確に反映する差異はみられず, 酵素処理製剤もIntact製剤も広く用いられ, 治療に寄与していることは周知の事実である。
SM-4300は, 住友化学工業 (株) と日本トラベノール (株) の共同開発による新規乾燥イナン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤で, 米国トラベノール社において開発された静注用ヒト免疫グロブリンであり, COHNの低温エタノール分画法5)で分画し, その分画IIを取り出して得られたガンマグロブリンをイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子の凝集体を除去して調製したものである。本剤は7SのIgGが90%以上を占め, 非修飾型のIntactな免疫グロブリンであり, 抗体価は本来の免疫グロブリンと同じであり, Fc活性も正常で, 抗補体作用もほとんど認められず, 半減期も同じであり, 天然のままの組成, 状態に近似したものと言える6, 7)。
今回, われわれはSM-4300の外科領域研究会における共通のプロトコールにより, 重症細菌感染症を対象として抗生物質との併用効果を検討する機会を得たので, その評価方法について考察を加えると共に自施設における成績について報告する。

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