The Japanese Journal of Antibiotics
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複雑性尿路感染症に対するAztreonamとCefbperazoneの比較検討
大森 弘之公文 裕巳熊本 悦明酒井 茂新島 端夫岸 洋一大越 正秋河村 信夫名出 頼男西浦 常雄坂 義人石神 襄次守殿 貞夫田中 啓幹仁平 寛巳室本 哲男黒川 一男藤村 宣夫熊澤 浄一真崎 善二郎中牟田 誠一斎藤 泰江藤 耕作大井 好忠小川 暢也金政 泰弘友近 健一
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1986 年 39 巻 1 号 p. 24-56

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抄録

モノバクタム系抗生物質Aztreonam (AZT) の複雑性尿路感染症に対する有効性, 安全性並びに有用性を客観的に評価する目的で, Cefbperazone (CPZ) を対照薬としてWell-controlled comparative studyを行つた。
対象は, 尿路に基礎疾患を有するグラム陰性菌による複雑性尿路感染症患者に限定したが, 混合感染症例においてはグラム陽性菌を含む症例も対象とした。両剤共に1回19, 1日2回点滴静注により5日間投与し, UTI薬効評価基準に従つて評価した。
総投与症例394例中, 除外, 脱落の99例を除いたAZT群の152例, CPZ群の143例について臨床効果の判定を行つたが, 背景因子には両群間に差はなかつた。総合臨床効果では, AZT群55.3%, CPZ群55.2%の有効率であり両群間に差を認めなかつた。疾患病態群別では, 第2群においてAZT群の有効率 (86.7%) はCPZ群 (42.9%) に比べて有意に優れていた。一方, 第6群においてはCPZ群が優る傾向を認めたが, グラム陰性菌だけによる混合感染全例では差を認めなかつた。細菌学的効果では, 全体の菌消失率はAZT群77.2%, CPZ群74.5%であつた。グラム陰性菌だけの菌消失率はAZT群83.2%, CPZ群74.6%であり, AZT群が優る傾向を認めたが, この差はβ-Lactamase産生度High株における両群間の菌消失率の差を主として反映していた。
副作用の発現はAZT群3例 (1.5%), CPZ群5例 (2.6%) で, 臨床検査値異常の発現率と共に両群間に差を認めなかつた。
以上の成績からAZTは複雑性尿路感染症に対して有用な薬剤と考えられた。

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