The Japanese Journal of Antibiotics
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39 巻, 1 号
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  • 藤井 良知
    1986 年 39 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アンピシリン坐剤 (ヘルペン®坐剤, アンピレクト®坐剤) は住友製薬 (株), 京都薬品工業 (株) により新しく開発された小児用坐剤で, 吸収促進剤としてカプリン酸ナトリウムを添加することにより, 従来から困難とされていた抗生物質の直腸からの吸収を可能とし, 世界で最初に実用化されたβ-ラクタム剤の画期的な新投与経路医薬品である。
    アンピシリン (ABPC) は1961年に開発された合成ペニシリン剤で, 広い抗菌スペクトラムと優れた抗菌力により, 多くの感染症に対し有用な抗生物質として長年にわたり汎用され, 特に小児科領域感染症に対しては, 今日なお第1次選択薬剤として用いられている。しかし, ABPCの一般的投与経路として, 注射剤及び経口剤の2種の剤型しかなく, 疼痛及び特に小児においては血管確保の問題等から静注での使用は容易ではなく, 筋注についても四頭筋短縮症の問題から一般的に使用されない。一方, 経口剤については下痢の副作用が多いこと, 又, 通常幼児, 小児においては有熱時, 意識障害, 嘔吐, 悪心あるいは咳嗽, 咽頭痛等がある場合に服用が困難であり, 更に苦味から拒薬する等の欠点を有している。
    このような理由で, 注射剤, 経口剤における欠点を補う剤型として, 使用が簡便で, 良好且つ一定の吸収が得られる直腸投与坐剤が宿望され, ABPC坐剤 [ヘルペン坐剤 (住友製薬), アンピレクト坐剤 (京都薬品工業)]が開発された。
  • 伊藤 康久, 加藤 直樹, 武田 明久, 兼松 稔, 坂 義人, 西浦 常雄, 酒井 俊助, 藤広 茂, 土井 達朗, 鄭 漢彬, 波多野 ...
    1986 年 39 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Chlamydia trachomatis陽性の非淋菌性尿道炎21例にDoxycyline (DOXY, Vibramycin ®) を投与し, 臨床的効果を検討した。症例は17~52歳の男性で, 投与量は1目200mg分2, 投与期間は原則として2週間とした。C. trachomatisは3日目で89% (8例/9例), 7日目以降の判定では全例で消失した。自覚症状は7日目で83% (10例/12例), 14日目以降で100%消失した。分泌物は肉眼的に7日目で92% (11例/12例), 14日目までに100%消失した。総合臨床効果は3日目, 7日目, 14日目でそれぞれ44% (4例/9例), 83% (10例/12例), 100% (9例/9例) の有効率であつた。自他覚的副作用はいずれの症例にも認められなかつた。本剤はクラミジア性尿道炎の治療に非常に有用且つ安全な薬剤と考えられた。
  • 恒川 琢司, 熊本 悦明, 酒井 茂, 林 謙治, 郷路 勉
    1986 年 39 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    泌尿性器Chlamydia trachomatis感染症におけるDoxycycline (以下DOXYと略す) の臨床効果を検討する目的で男子非淋菌性尿道炎19症例, 女子非淋菌性子宮頸管炎8症例にDOXY200mg/日を14日間投与した。
    1. 初診時における細胞培養法によるC. trahmatis検出率は男子非淋菌性尿道炎19例中12例 (63%), 女子非淋菌性子宮頸管炎8例中4例 (50%) であつた。
    2. 男子C. trachomatis陽性非淋菌性尿道炎におけるDOXY投与3日目のC. trachomatis陽性率は83%, 投与7日目では17%, 投与14日目では0%であつた。又, 漿液性分泌物の持続は, 投与3日目にて100%, 投与7日目にて33%, 14日目にて0%であつた。
    以上から, 男子C. trachomatis陽性非淋菌性尿道炎における治療法としてDOXY 200mg/日を14日間投与する方法が適当と考えられる。
  • 大森 弘之, 公文 裕巳, 熊本 悦明, 酒井 茂, 新島 端夫, 岸 洋一, 大越 正秋, 河村 信夫, 名出 頼男, 西浦 常雄, 坂 ...
    1986 年 39 巻 1 号 p. 24-56
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生物質Aztreonam (AZT) の複雑性尿路感染症に対する有効性, 安全性並びに有用性を客観的に評価する目的で, Cefbperazone (CPZ) を対照薬としてWell-controlled comparative studyを行つた。
    対象は, 尿路に基礎疾患を有するグラム陰性菌による複雑性尿路感染症患者に限定したが, 混合感染症例においてはグラム陽性菌を含む症例も対象とした。両剤共に1回19, 1日2回点滴静注により5日間投与し, UTI薬効評価基準に従つて評価した。
    総投与症例394例中, 除外, 脱落の99例を除いたAZT群の152例, CPZ群の143例について臨床効果の判定を行つたが, 背景因子には両群間に差はなかつた。総合臨床効果では, AZT群55.3%, CPZ群55.2%の有効率であり両群間に差を認めなかつた。疾患病態群別では, 第2群においてAZT群の有効率 (86.7%) はCPZ群 (42.9%) に比べて有意に優れていた。一方, 第6群においてはCPZ群が優る傾向を認めたが, グラム陰性菌だけによる混合感染全例では差を認めなかつた。細菌学的効果では, 全体の菌消失率はAZT群77.2%, CPZ群74.5%であつた。グラム陰性菌だけの菌消失率はAZT群83.2%, CPZ群74.6%であり, AZT群が優る傾向を認めたが, この差はβ-Lactamase産生度High株における両群間の菌消失率の差を主として反映していた。
    副作用の発現はAZT群3例 (1.5%), CPZ群5例 (2.6%) で, 臨床検査値異常の発現率と共に両群間に差を認めなかつた。
    以上の成績からAZTは複雑性尿路感染症に対して有用な薬剤と考えられた。
  • 門田 康正, 藤本 祐三郎, 中原 数也
    1986 年 39 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    外科学の進歩した今日においても術後合併症の最大の問題点は呼吸器感染症である。術後感染予防の目的で投与されている抗生剤の臨床効果を予測するためには, 抗生剤の抗菌力, 抗菌スペクトルと共に体内動態及び臓器への移行性などを知ることが重要である。
    今回, 我々は本邦で新しく開発されたCefbperazone (CPZ, セフォペラジン®)(図1) を開胸手術施行症例に術中投与し, CPZの血清中濃度の推移並びに肺組織内濃度を経時的に測定し, 本剤の肺組織への移行性について検討したので報告する。
  • 喜多村 孝一, 清水 隆, 阿部 弘, 鈴木 二郎, 田中 隆一, 永井 肇, 山本 信二郎, 半田 肇, 西本 詮, 松岡 健三, 森 和 ...
    1986 年 39 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefoperazone sodium(以下CPZと略す)は緑膿菌を含むグラム陰性菌・陽性菌及び嫌気性菌に対し優れた抗菌力を有する新しいセフェム系抗生物質の注射剤である。
    本剤に関する研究は国内外で基礎及び臨床にわたり多くなされ, 又, 本剤はすでに内科・外科・産婦人科・泌尿器科領域等で広く臨床応用されており, 優れた臨床効果が報告されている1~4)。
    しかし, 脳神経外科領域における本剤の検討はいまだ十分でないため, 今回我々は統一したプロトコール臨床調査用紙を用い, 1983年6月から1984年5月にかけて全国を10ブロックに分け, 合計164施設(Table 1)において脳神経外科領域各種細菌感染症の治療及び術後感染症発症を予防する目的でCPZを投与し, CPZの髄液移行性, 臨床効果及び安全性についての検討を行つたのでその結果を報告する。
    なお, 臨床調査表の評価及び解析, まとめは東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科(喜多村孝一, 清水隆)にて行つた。
  • 千村 哲朗, 森崎 伸之
    1986 年 39 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephem系抗生物質の一つとして開発され現在臨床に使用されているCefoperazone(CPZ)は, β-Lactamaseに安定で広範囲な抗菌スペクトラムと, 血中半減期は約100分で, 市販されているCephem系抗生物質の中では, Cefotetan(CTT)の3時間に次いで長い半減期を示す特徴を有する。
    CPZの産婦人科領域での有用性は,すでに多くの報告で認められているが, 今回われわれは, 本剤の術後感染予防効果と感染症に対する投与効果を検討したので報告したい。
  • 金沢 裕, 倉又 利夫, 松本 清幸
    1986 年 39 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime(CZX)は藤沢薬品工業株式会社中央研究所において合成された新しい注射用セファロスポリン系抗生物質で, 7-アミノセファロスポラン酸の3位に置換基がなく, 7位の側鎖にメトキシイミノ基を持つ特徴的な化学構造であり, 本剤は広域抗生物質であるが, 特にグラム陰性桿菌に対する抗菌力が強く, インドール陽性Proteus, Serratia, Citrobacter, Enterobacterにも抗菌作用を示し, 各菌種のβ-Lactamaseに対して安定であると報告されている1~3)。
    今回われわれは, 臨床検査としてのディスク法による感受性測定法を検討したので報告する。
    CZXのように新しく出現した薬剤の臨床的な感性, 耐性に相当する最小発育阻止濃度(MIC)値の基準は全く不明で, 暫定的には推定される体液中有効濃度との関連から一応の基準が論ぜられたとしても, 最終的には多くの起因菌について得たMIC値と, 薬剤投与による臨床効果との集計の上に将来定められるべきものであり, 従つて現時点においては適当に規定された実験条件でのMIC値を推定することが, 臨床的感受性検査の目的と考えられる。この目的に添うように, すでに金沢4~7)により設定されたMIC値の推定を目的とするSingle-disc法による各種化学療法剤の感受性測定法についてたびたび報告してきたが, 今回はCZXについても本法が適用されるかどうかを検討した。
  • 平木 俊吉, 大熨 泰亮, 田村 亮, 河原 伸, 宮本 宏明, 西井 研二, 木村 郁郎
    1986 年 39 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    肺癌は世界的に急増しており, 本邦においてもその死亡率は胃癌のそれを追い抜く勢いである。肺癌の治療法としては, 手術療法, 放射線療法, 癌化学療法があるが, 遠隔転移を有するような進展期症例では全身療法である癌化学療法が第1選択の治療法となる。しかし, 進展期肺癌症例では種々の易感染性因子のため, しばしば感染症, 特に難治性呼吸器感染症を併発しやすく1, 2), 癌化学療法施行中に重篤な感染症を合併し, そのため治療を余儀なく中断したり, あるいはそれが直接死因になることも稀ではない3~5)。それ故, 肺癌患者に合併する感染症は患者の予後を左右する重要な因子の一つであり, 肺癌の治療において感染症に対する対策は重要な位置を占める。
    今回, われわれはいわゆる第3世代セファロスポリン剤Ceftizoxime(CZX)を進展期肺癌症例に合併した感染症に投与し, その有用性を検討したので報告する。
  • 西村 憲一, 北川 明子, 富田 幸, 掛谷 宣治, 北尾 和彦
    1986 年 39 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    セフチゾキシム(CZX)の新しい剤型であるセフチゾキシム坐剤(CZX-S)を連続直腸内投与した際のマウス盲腸内菌叢に対する影響を調べ,皮下投与時と比較した。
    CZX-Sを25mg/kg直腸内に1日3回, 10日間連続投与すると, Enterobacteriaceaeの菌数が減少しただけで, 他には大きな変動はなく, Enterobacteriaceaeの菌数も投与中止後速やかに投与前のレベルに回復した。又,皮下投与時にもEnterobacteriaceaeの菌数が減少しただけであつたが, 減少の程度は直腸内投与時よりも顕著ではなかつた。更に, いずれのマウスにも下痢等の糞便性状への影響も認められなかつた。CZX-Sを25mg/kg直腸内投与した時の最高盲腸内CZX濃度は, 投与後4時間で13.8μg/gであつたが, 同一投与量を皮下投与した時にはすべて検出限界(2.0μg/g)以下であつた。
  • 経時的及び経日的検討
    橋本 伊久雄, 沢田 康夫, 中村 孝, 三上 二郎, 西代 博之, 吉本 正典, 中西 昌美, 畚野 剛, 前田 憲一
    1986 年 39 巻 1 号 p. 99-108
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    外科系各科における手術療法は, 術前, 術後の患者状態の管理, 麻酔及び手術手技の向上によつて, 手術適応が拡大され, 特殊あるいは全身状態の不良な病態下でも, 大きな手術侵襲が加えられるようになつてきた。このような手術の術後に感染症を合併すれば, 患者の苦痛は増加し,治療日数が延長されるだけでなく, 手術の失敗, 患者の死亡に至る可能性もある。従つて抗菌性化学療法剤の進歩発達, 普及した今日, 術前に細菌感染を有しない無菌手術, 準無菌手術においても, 術後予防的に各種の抗生剤が投与されている現状である。
    近年において, 術後感染症の発生件数は減少してきているが,複雑且つ難治な感染症は増加していると言える。その原因には先ず, 術後感染症における起炎菌の変貌があげられ, 以前には創感染の起炎菌の多くを占めていたグラム陽性球菌群が減少し, 代つて大腸菌, Klebsiella pneumoniaeあるいはSerratia属, Pseudomonas属などのグラム陰性桿菌群が主たる起炎菌となつてきた1, 2)。しかも単一の菌ではなく, これらの菌の複数が起炎菌となる複数菌感染症がその多くを占めている。更に癌などの基礎疾患あるいは老齢などに起因する抵抗性の減弱状態, すなわちCompromised hostと呼ばれる患者に発生する弱毒菌感染症が問題とされており, これらに対する術後感染症発生の予防には, 手術部位に応じた適切な抗生剤の投与と, 免疫学的な補助療法が必要となつてくる。従つて, 今日の術後感染症の治療ないしは予防に当つては, 薬剤の選択, 投与量, 投与方法並びに投与期間について詳細に検討する必要があると言えよう。
    無菌手術あるいは準無菌手術において, 術後感染防止のために抗生剤を投与するに当つては,投与された抗生剤が, 術後感染が多く認められる創部, 特に滲出液中にどの程度移行しているかを検索することは極めて有意義であると言える。しかしながら, 抗生剤の人体内における動態は, 多くの場合, 血中濃度の推移と, 尿中排泄によつて検索されており, 感染病巣自体の抗生剤動態の検索は極めて困難であり, 少数例の報告があるに過ぎない3, 4)。このうち術後感染に関するものは, 胸腔, 腹腔内臓器切除後の死腔や乳房切除後の創部からの滲出液への抗生剤移行の検討が試みられている。しかしながら, これらの研究では得られる滲出液量が微量のため, 多くの場合はカテーテルから低圧持続吸引した滲出液を数時間貯溜し, この貯溜した液の濃度を測定しているのが現状であつた。このため測定された濃度は平均濃度であつて, 抗生剤投与後の各時点での滲出液中濃度ではなかつた。そこで著者らは, 検体量がごく微量でも測定可能な方法として, Paper discによる検体採取を試み, 経時的に術後創部分泌液への抗性剤移行の検索を行つた5, 6)。
    本研究においては,乳癌根治手術後の創部滲出液中のCefotiam(CTM)濃度を, 経時的及び経日的に測定し, 若干の興味ある成績を得た。この成績は術後感染防止にCTMを使用するに際して, 極めて有用であると考えられるので報告する。
  • EIJI MIZUTA, YASUKO KANEKO, HIROYUKI NISHINDAI, MASANORI YOSHIMOTO, YO ...
    1986 年 39 巻 1 号 p. 109-115
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM) levels in the exudate from wounds of patients with breast cancer who were operated upon for radical mastectomy were analyzed with a modified three-compartment model for a number of days after the operation. A considerable change was observed between the mean pharmacokinetic profiles in the exudate during the first 3 days after the operation and those during the next 3 days. During the first 3 days, the peak concentrations (Cmax) and times of the peak concentrations (Tmax) calculated from the profiles ranged from 36.2 to 41.5μg/ml and 1.15 to 1.17 hours after the administration, respectively. Thereafter they were in the range of 21.0 to 27.6μg/ml and 1.73 to 1.97 hours, respectively. The low Cmax and slow Tmas values of the profiles from 4 to 6 days after the operation were attributed to a decrease of the transfer rate constant from the exudate to blood. On the other hand, the apparent transfer ratios (F2) of CTM from blood to the exudate were approximately constant for the 6 days. The mean value of individual elimination half-lives in the exudate during 4-6 days was statistically longer than that during the first 3 days. It was clear that the transfer of CTM from blood to the exudate from wounds of patients with breast cancer who were operated upon for radical mastectomy is fairly good judging from the large values of 1.02 to 1.42 for F2.
  • 特に肝機能障害症例において
    前場 隆志, 橋本 哲明, 武田 智博, 白石 恭史, 大池 宏子, 若林 久男, 大森 吾朗, 因藤 春秋, 国方 永治, 林 政清, 間 ...
    1986 年 39 巻 1 号 p. 116-120
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染における抗生物質の効果は, 血中濃度よりむしろ胆汁中濃度に依存すると考えられている1)。しかし, 閉塞性黄疸のように胆汁流出障害の存在する胆道感染例では, 抗生物質の胆汁中移行は極めて不良であり2, 3), 初期治療にあたつては, 少しでも胆汁移行性の良好な抗生物質の選択が肝要である。
    抗生物質の胆汁中移行に関する現在までの報告は, 肝機能障害のないものについての評価が大部分であるが, 実際の臨床面においては, 胆汁うつ滞による肝機能障害を合併した胆道感染例への有効性が問題となる場合が多いことを考慮し, われわれは, 特に閉塞性黄疸を伴う肝機能障害例を対象として, Mezlocillin (MZPC, Baypen®) の胆汁中移行性について検討した。
    MZPCは, Ampicillin (ABPC), Carbenicillin (CBPC) に比べてグラム陰性桿菌に対する抗菌力が強く, β-Lactamaseに対し安定であり, 胆汁移行性も良好とされている広域Penicillin剤の一つである2)。
  • JUN IGARI, TOYOKO OGURI, NOZOMU KOSAKAI
    1986 年 39 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    We examined 91 clinically significant isolates of P. maltophilia for susceptibilities to 27 antimicrobial agents currently available; 6 penicillins, 8 cephem antiobiotics 7 aminoglycosides, 3 tetracyclines, CP, NA and PPA. MINO and DOXY were the most effective agents; almost all of the isolates were inhibited by 6.25 and all of isolates by 12.5μg or less per ml, respectively. A large number of the isolates tested were highly resistant to β-lactam antibiotics except to LMOX. LMOX was fairly active, and 74% of the isolates were inhibited by 25μg or less per ml. Aminoglycosides tested had a wide distribution of MIC that 83-93% of the isolates were not inhibited at 6.25μg or less per ml. TC, CP, NA and PPA were less active. Yearly changes of the activities of the antimicrobial agents tested against P. maltophilia were not significant with the exception of TC to which a 3-fold increase of resistance have been shown.
  • 特に肺・胸筋組織について
    寺西 寧, 田崎 哲典, 阿部 幹, 本多 正久, 大石 明雄, 遠藤 幸男, 今野 修, 薄場 彰, 井上 仁, 庄司 光男, 元木 良一
    1986 年 39 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近肺癌は急増傾向にあり, 手術適応も拡大され, 高齢者や, 糖尿病などの他疾患を合併し, 免疫能が低下している患者に対しても積極的に外科手術が施行される傾向にある。
    当然のことながら, このような免疫能低下患老は創感染, 術後肺合併症などを引き起しやすい。従つて手術に際して局所的感染はもちろん術後肺感染を予防する目的で広範囲抗菌スペクトラムを有する抗生物質の投与が行われるが, はたして目的とする肺組織あるいは胸壁手術創で充分な濃度が得られているか否かの検討は少ないようである。
    今回我々は, 広範囲抗菌スペクトラムを有するCefmenoxime (CMX) についてその肺組織及び胸筋組織への移行性を測定し, 本剤の感染に対する予防効果を検討したので報告する。
  • 中村 信義, 緒方 晴男, 福島 美歳, 梅田 継雄, 出口 浩一, 深山 成美, 西村 由紀子
    1986 年 39 巻 1 号 p. 133-140
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    整形外科領域においては, 近年人工関節, 内固定材料などの種々な, 人工物を挿入する術式が広く行われるようになり, それに伴う感染の増加が懸念される。そして偶発的とはいえ感染が併発すれば, 人工物の抜去を余儀なくされるだけでなく, 治癒転機への大きな障害となり得る1)。このため, これらの手術に際しては適切な消毒操作, 無菌室の利用などの他, 抗生物質を予防的に用いることが極めて有用とされている2, 3)。
    抗生物質は全身的な投与によつて血液循環を介し, 各臓器へ移行するため感染予防としても極めて有用であるが, 骨組織に関しては骨髄血への移行が重要な指標となる2)。一方, 整形外科領域における感染症の一般的な起炎菌はStaphylococcus aureusが主なものであるが4), 深部膿瘍の場合は嫌気性菌が起炎菌の場合もあり得る5)。
    そこで, 私たちは人工関節置換術を含む手術例においてClindamycin phosphate (Dalacin® P注, 以下CLDMと略す) を術前に投与し, 骨髄血及び骨髄組織へのCLDMの移行濃度を検討したので以下報告する。
  • 鈴木 恵三, 玉井 秀亀
    1986 年 39 巻 1 号 p. 141-153
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfbmycin (FOM) は抗菌剤としての有効性の他に, 主としてアレルギーによる副作用が少ない点で高い評価を受けている薬剤である1~5)。これは本剤が非常に低分子量で, ユニークな構造式を持ち (Fig. 1), 血清蛋白との結合が低いこと等によるものと言われている1, 2)。
    われわれはβ-ラクタム剤を中心とした抗菌剤で,主にアレルギーが誘発されたり, 既往に明らかなアレルギー症のある症例に対して, FOMを投与し, 有効性と有用性の評価を行つた。有用性の点では特にLST (Lymphocyte stimulation test, リンパ球幼若化試験), LMT (Loukocyte migration inhibition test, 白血球遊走阻止試験), PCA反応 (Passive cutaneous anaphylaxis) や寒天内沈降反応を検討することにより, 投与薬剤と副作用との因果関係について考察を試みた。更に文献的にペニシリン系抗生物質 (PCs), セフェム系抗生物質 (CEPs) を中心とした薬剤について, これまでの副作用報告のうちアレルギーに関連する皮膚症状の項を調査して, FOMとの比較を行つた。
  • 多形核白血球との協力的殺菌作用について
    熊坂 義裕, 中畑 久, 平井 裕一, 今村 憲市, 武部 和夫, 鈴木 勇, 千田 尚人
    1986 年 39 巻 1 号 p. 154-158
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新Cephamycin系抗生物質であるCefbuperazone (CBPZ) は, in vitro抗菌作用から想像される以上にin vivo効果が優れている抗生剤として注目されている1, 2)。この理由の一つとして血清や好中球との協力的殺菌作用3) が考えられているが, いまだ十分に解明されてはいない。今回, 非特異的防御機構として重要な多形核白血球 (PMN) との協力作用という点に注目し, 良好なin vivo効果に関する若干の知見を得たので報告する。
  • 馬場 駿吉, 木下 治二, 森 慶人, 鈴木 賢二, 古内 一郎, 馬場 広太郎, 谷垣内 由之, 長江 大介, 河合 岩, 丸尾 猛, 本 ...
    1986 年 39 巻 1 号 p. 159-176
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam(AZT)は米国スクイブ社で開発された新しい注射用のMonobactam系抗生物質である。本剤はL-Threonineから全合成された単環のβ-Lactam系抗生物質Dで, 従来の二環系抗生物質であるPenicillin系あるいはCophem系抗生物質とは異なるカテゴリーに分類される。その構造式はFig. 1に示すようにβ-Lactam単環のN1位にスルホン酸基が置換したものを母核としたものである。
    本剤は各種β-Lactamase及びDehydropeptidaseに対して極めて安定で, 細菌学的にはPseudomonas aeruginosa, Escherichia coli, Klebsiella属, Proteus属, Citrobacter属, Serratia属などのグラム陰性桿菌に対して強い抗菌力を示し, グラム陰性球菌である淋菌, 髄膜炎菌に対しても優れた抗菌力を有している2~5)。In vivoでの感染実験においてもin vitroの抗菌力を上回る優れた感染防御効果が認められている。
    又, 本剤は静注, 点滴静注, 筋注により速やかに高い血中濃度が得られ, 体内ではその大部分が未変化のまま尿中に排泄され, 血中濃度の半減期は1.6~1.8時間とされている。更にPenicillin系及びCephem系抗生物質とは異なり, アレルギー反応の発現はほとんど認められていないのが特徴とされている。
    今回私達は, 化膿性中耳炎の治療におけるAZTの有効性と安全性を評価する目的で, その基礎的・臨床的検討を行つたのでそれらの成績について報告する。
  • 本廣 孝, 荒巻 雅史, 田中 耕一, 古賀 達彦, 島田 康, 冨田 尚文, 阪田 保隆, 藤本 保, 西山 亨, 久田 直樹, 石本 耕 ...
    1986 年 39 巻 1 号 p. 177-246
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephem系抗生物質の経口剤であるCefaclor (CCL) はすでに市販されて3年になり, 各科領域の細菌感染症に対し広く使用されている薬剤である。
    S6472はこのCCLを胃溶性及び腸溶性のCoatingを施した穎粒が力価比4: 6に配合されており, 前者は胃中で直ちに, 後者は小腸上部に至つて崩壊し体内に吸収されるという特徴を有し, 従来のCCL製剤よりも血中濃度を長く持続させることを目的として塩野義製薬株式会社が開発した製剤である。
    今回, 私たちは本剤のカプセル製剤と対照薬としてCCLを成人に経口投与し, 糞便内細菌叢の変動を観察, 薬剤投与時における糞便中CCLの濃度を測定, 分離株のCCLに対する薬剤感受性を測定すると共に副作用を検討したのでその成績を報告する。
  • 河野 恵, 小原 康治, 大宮 敬一, 飯田 英夫, 樹林 千尋, 笠原 桂
    1986 年 39 巻 1 号 p. 247-249
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ネガマイシン (NGM) はStreptomyces purpeofuscusにより生産される抗生剤であり1, 2), その光学活性体の全合成がすでになされている3, 4)。Pseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌やグラム陽性菌に抗菌作用を示し5), 又, その抗菌作用点が蛋白合成系の最終過程の特異的阻害であることも知られている6)。
    本論文では, 実用的価値を有する新規合成ルートによつて不斉合成された (+)-NGM7)の抗菌性に関して検討した結果を述べる。
  • 刀根 弘, 白井 正孝, 尾上 房代, 熊谷 博行
    1986 年 39 巻 1 号 p. 250-258
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    (2R)-4'-O-Tetrahydropyranyladriamycinは1979年に梅沢らが見い出した新規なAnthracycline系抗腫瘍性抗生物質である1)。マウス移植癌L1210及びP388細胞に強い抗腫瘍性を示す1, 2)と共に動物試験系において心毒性が低いことが報告されている3)。
    著者らは今回, 本剤のマウスにおける急性毒性試験を行つたのでその結果を報告する。
  • ラットにおける急性毒性
    暮部 勝, 佐々木 斉, 新里 鉄太郎, 三木 美智子, 梶田 敏彦
    1986 年 39 巻 1 号 p. 259-263
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいAnthracycline系制癌剤 (2R)-4'-O-Tetrahydropyranyladriamycin (THP) は, マウスL1210及びP388 leukemiaに対してDoxorubicin (Adriamycin) より強い制癌作用を有しているが1, 2), 心臓及び皮膚に対してはDoxorubicinより弱い毒性を示す3, 4) ことから注目される。今回はTHPの安全性試験の一環として, ラットにおける急性毒性を静脈内 (i. v.), 腹腔内 (i. p.), 皮下 (s. c.) 及び経口 (p. o.) 投与で検討した。
  • ビーグル犬における急性毒性
    暮部 勝, 横田 正幸, 渡辺 宏, 川音 晴夫, 鈴木 平治郎, 関 道彦, 早坂 弘康, 中村 なつみ
    1986 年 39 巻 1 号 p. 265-302
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ARCAMONE等によつて発見されたDoxorubicin (Adriamycin, ADM) は強い制癌作用を持つている反面, 心毒性を有する欠点が知られている1, 2)。一方その誘導体である (2R)-4'-O-Tetrahydropyranyladriamycin (THP) にはマウスに移植したL1210やその他のマウス実験腫瘍に対し強い制癌作用のあることが報告され3, 4), 又, 心毒性の弱いことも報告された5)。
    そこで, 今回THPの安全性試験の一環として犬に対する急性毒性試験を実施し, 二三の知見を得たので報告する。
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