The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるImipenem/Cilastatin sodiumの基礎的並びに臨床的検討
西村 忠史田吹 和雄高島 俊夫高木 道生
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1986 年 39 巻 7 号 p. 1867-1878

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抄録

感染症の変貌とその対策, 特に重症細菌感染症の化学療法は, 宿主の基礎的要因, 病原細菌の特性により, 現在決して容易でない。とくに近年, 小児科領域でもOpportunistic pathogenとして注目されていたグラム陰性桿菌に対する抗菌力の優れた, いわゆる第3世代のβ-Lactam系抗生物質使用が増加している。一方, Staphylococcus aureusを代表とするグラム陽性球菌感染症の増加も指摘され膿胸, 敗血症など重症全身感染症での重要性は変らず, Methicillin耐性菌の新たな問題も生じている。
最近米国メルク社において開発されたImipenem (MK-0787, IPM) はStreptomyces cattleyaから得られたβ-Lactam系抗生物質ThienamycinのIV-Formimidoyl誘導体であり, β-Lactamaseに安定で, グラム陽性球菌のS. aureusからグラム陰性桿菌はもとよりPseudomonas aeruginosaをこまで幅広い抗菌力を示す1~3)。しかし, Imipenemは体内で主として腎においてDehydropeptidase-I (DHP-I) により水解不活化される。今度, この酵素の特異的阻害剤であるCilastatin sodium (MK-0791, CS) が同じ米国メルク社により開発されたが, 本剤は抗菌活性はない。そこでImipenem及びCilastatin sodiumを1:1に配合した時, 腎毒性が軽減され, Imipenemの高い尿中回収率の得られることが, 明らかにされ4), Imipenem/Cilastatin sodium (MK-0787/MK-0791, IPM/CS) として臨床応用への道が開けた。
本邦でも1984年12月14日日本化学療法学会西日本支部総会新薬シンポジウム5) において成人領域における本剤の有効性と安全性が示された。小児科領域においてもこれら成人の成績の結果から本剤の検討が行われることになり, 著者らもその機会を得たので, ここにそれらの成績について述べる。

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