The Japanese Journal of Antibiotics
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39 巻, 7 号
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  • 小泉 勝, 下瀬 川徹, 山家 誠, 後藤 由夫, 菅原 啓, 簡野 泰裕, 金沢 義彦, 甲斐 之泰, 佐藤 恒明, 遠藤 克博, 菊池 ...
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1663-1670
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染症に対する化学療法剤の条件として, 起炎菌に十分な抗菌力を有すること, 十分な胆汁中移行があり胆汁中濃度が高いこと, 肝腎毒性が低く, 副作用がほとんどみられないことなどが挙げられる。
    胆道感染症は基礎疾患を有することが少なくなく, 肝機能障害は種々の程度に認められる。特に閉塞性黄疸を示す症例では胆汁分泌, 胆汁への種々の物質の排泄が通常と異なることが考えられる。又, 内科的管理を受けている症例では細菌学的検索がほとんど不可能であり, その効果判定は極めて困難である。
    今回われわれは, 閉塞性黄疸例でPTCD (経皮経肝胆管ドレナージ) チューブから胆汁をすべて回収し, Cefoperazone (CPZ) の胆汁中移行及び血中濃度, 肝機能などとの関連を検討した。又, 胆道感染症43例にCPZを投与し, その臨床効果を超音波像の推移も合せて検討したので報告する。
  • 堀内 至, 川本 敏雄, 徳毛 宏則, 野村 洋子, 梶山 梧朗, 大林 諒人, 松井 康功, 中川 公博, 中村 充宏, 大徳 邦彦, 満 ...
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1671-1680
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    わが国の平均寿命は, 医療の進歩, 食生活の改善など様々な努力により, 第2次世界大戦後著しく延長し, 世界一となつた。これに伴い, 高齢者人口も増加の一途をたどつており, 加齢に対する取り組みも, 医学の分野でも, 老年医学を生み, 様々な研究がなされつつある。
    わが国における死因順位の年次推移をみると, 昭和57年には成人病 (悪性新生物, 脳血管疾患, 心疾患) が3位までと圧倒的多数を占めており, 肺炎・気管支炎による死亡率は, 5.8%に過ぎない。しかし, 年齢別死因順位をみると肺炎・気管支炎による死亡率は15~59歳までは2.0%以下にすぎないが, 60歳を過ぎると漸次増加し65歳以上のいわゆる高齢者では壮年層の約4~5倍に達する1)。高齢者感染症が壮年者までの感染症とは幾分病態が異なり, 加齢に伴い, 各臓器の予備能低下, 機能不全, 免疫力の低下などがおこつてくる。これらを踏まえ, 高齢者の感染症に対処しなければならない。
    今回, 我々は, グラム陽性菌, 及びグラム陰性菌に広範な抗菌スペクトルを有し, 特にグラム陰性桿菌に強い抗菌力を示し, 従来のセファロスポリン剤に耐性のCitrobacter, Enterobacter, Serratia, Bzcteroidesなどにも優れた抗菌力を有する新しい第3世代のセファロスポリン系抗生物質であるCeftizoxime (CZX, Epocelin®) を高齢者感染症に投与し, その有用性と安全性を検討した。併せて, 高齢者にCZXを投与した際のCZXの血中濃度, 尿中排泄率を測定して, 高齢者の感染症の特徴とその治療について若干の考察を加えて報告する。
  • 藤田 晃三, 梯 仁志, 室野 晃一, 坂田 宏, 大見 広規, 吉岡 一, 丸山 静男, 早苗 信隆, 印鑰 史衛
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1681-1692
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem (MK-0787) は米国メルク社で開発されたCarbapenem系抗生物質で, 第3世代Cephalosoporin系抗生物質と同様の広い抗菌スペクトルに加え, ブドウ球菌, 腸球菌, リステリア及び緑膿菌に対しても優れた抗菌力を持つことが特徴である1)。本剤は腎臓に存在する酵素であるDipeptidaseにより不活性化されることから, この酵素の阻害剤であるCilastatin sodium (MK-0791) との合剤とすることにより, MK-0787尿中回収をよくする2)と共にMK-0787の腎毒性を軽減すると言われる。
    私たちは本剤を小児感染症患者に使用する機会を得, 臨床効果と薬物動態について検討を加えたので報告する。
  • 永松 一明, 立野 佳子, 我妻 義則, 高瀬 愛子, 堀口 貞子, 楠 幸博
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1693-1700
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem (MK-0787)(Fig.1) は米国メルク社で開発されたStreptpmyces cattleyaから得られるThienamycinの誘導体でカルバペネム系の抗生物質である1, 2)。本剤はグラム陽性菌からグラム陰性菌の広範囲の菌種に対し, 優れた抗菌力を示す3, 4)。β-ラクタマーゼに対しては安定であるが, 腎においてDehydropeptidase-Iにより水解不活化されるため, その酵素の特異的阻害剤であるCilastatin sodium (MK-0791) との1:1の配合剤として投与する4)。又, 配合剤とすることにより尿中回収率が約70%と高まり, 更にMK-0787の腎毒性が軽減する2, 4)。
    今回, 私共は本剤を小児の感染症に使用する機会を得たので, その成績について報告する。
  • 佐藤 謙二, 渡辺 章
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1701-1707
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ImiPenem (MK-0787) は米国メルク社で開発された新しいカルパペネム系の注射用抗生物質であり, 従来のペニシリン系抗生物質及びセファロスポリン系抗生物質とは基本的に化学構造を異にする。Pseudomonas aeruginosaを含む広範囲の菌種に対し, 強い抗菌力を示し, 且つそれ自身強いβ-Lactamase阻害活性を有する優れた抗生物質である。しかしながら,腎尿細管上皮の管腔表面に存在するRenal dipeptidaseによつて代謝を受け, 必ずしも良好な尿中回収率が得られないことが判明した。又, 動物実験によりCephaloridineより弱いが, 腎障害を起すことも確認された。そこで, MK-0787の腎内代謝に関与するRenal dipeptidaseに対して選択的阻害作用を有するCilastatin sodium (MK-0791) を開発し, 本剤を併用投与することにより, MK-0787の尿中回収率を改善することに成功した。同時にMK-0791は動物実験においてMK-0787の腎毒性をも軽減することが認められた1)。
    今回, 著者らはMK-0787/MK-0791配合剤を小児科領域の各種感染症に使用しその臨床効果と安全性について検討したので報告する。
  • 永田 紀四郎, 横山 碓, 大西 彬, 泉 幸雄
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1708-1714
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (MK-0787/MK-0791) は, Thienamycinから開発されたMK-0787が生体内でDipeptidaseによる不活化を受けるので, これを選択的に阻害するMK-0791と合剤とすることにより, 本来のThienamycinの優れた有用性を高めることを目的としたカルバペネム系抗生物質である1)。
    本剤の特色は黄色ブドウ球菌, 腸球菌をはじめとするグラム陽性球菌や, Gentamicin (GM) 耐性緑膿菌及び他のグラム陰性桿菌に対しても優れた抗菌力を有する点にある。
    我々は本剤を各種小児感染症に使用する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 目黒 英典, 有益 修, 小林 正明, 白石 裕昭, 藤井 良知, 和泉 桂子
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1715-1732
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem (MK-0787)とCilastatin sodium (MK-0791) はアメリカのメルク社研究所で開発されたもので, 化学名, 化学構造式はFig. 1のとおりである。MK-0787は新規のCarbapenem系注射用抗生物質で, in vitroでは超広域性で抗菌力が優れ, β-Lactamaseにも極めて安定であるが, in vivoで不安定なため実用化が遅れていたThienamycinの誘導体である1)。しかし, MK-0787も腎尿細管上皮細胞に存在するRenal dipeptidase (RDP, Dehydropeptidase-I) で分解されるため, RDPの選択的且つ可逆的阻害剤であるMK-0791と1: 1の合剤として実用化された。
    MK-0787/MK-0791の成人における臨床第II相試験はすでに終了し, その安全性と有効性が報告され2), 小児への臨床試験の拡大に支障はないと考えられた。我々は1984年11月30日に発足した小児科領域MK-0787/MK-0791研究会の一員として, 本剤の臨床的検討を行つたので, その結果を報告する。
  • 廣澤 浩, 保科 弘毅, 森川 嘉郎, 市橋 治雄
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1733-1744
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1976年, 米国メルク社により新しく開発されたImipenem (MK-0787)(Fig. 1) は, Streptomyces cattleyaの培養炉液から単離されたCarbapenem系抗生物質Thienamyclnに化学的修飾を加え, 安定性を改善したN-Formimidoyl誘導体である1~3)。
    MK-0787の化学的特徴は, β-ラクタム環に接する五員環を形成するS原子がメチレン基に置換されたCarbapenem骨格を持ち, 5, 6, 8の位既に3個の不斉炭素を持つた光学活性物質で, 5, 6位の水素の立体配置が, Penicillin系やCephem系がCis配位であるのに対し, Trans配位となつていることである。
    MK-0787はグラム陽性菌, グラム陰性菌の広範囲の菌種に対し強い抗菌力を示す4, 5)。特に, Pseudomonas aeru-ginosaに対しては, Cefsulodin (CFS) 及びCefoperazone (CPZ) より強い抗菌力を示すと共に, Gentamicin (GM) 耐性P. aeruginosaに対しても強い抗菌力を示す6)。又, 従来, Cephem系抗生物質が無効であつたEnterococcus faecalisに対しても強い抗箘力を示す7)。更に, 各種嫌気性菌に対し, Clindamycinよりも強い抗菌力を示す8)。
    MK-0787は細菌の産生するβ-Lactamaseに対し極めて安定であるが, 腎尿細管上皮のRenal dipeptidase (Dehydropeptidase-I) をこより水解不活化され, 必ずしも良好な尿中排泄率を得られないことが判明し9), 動物実験においてCephaloridineより弱いが腎障害 (Tubular necrosis) を起すことが確認された10)。その後Renal dipeptidaseに対し選択的阻害作用を有し, 抗菌活性のないCilastatin sodium (MK) 0791)(Fig. 2) が開発され2, 10), このMK-0791とMK-0787を1: 1に配合することにより, MK-0787の尿中排泄率が最高となり, 動物実験での腎毒性も消失することが確認され, ここにMK-0787/MK-0791が誕生した。
    今回我々は, これらの特徴を有するMK-0787/MK-0791を日本メルク萬有株式会社から提供を受け, 本剤の抗菌力について教室保存の臨床分離株を用いて検討し, 血漿中濃度及び尿中排泄率を測定すると共に本剤を小児科領域の中等症以上の感染症症例に使用して臨床での有用性及び安全性を検討したのでその結果をここに報告する。
  • 中澤 進, 佐藤 肇, 成田 章, 松本 貴美子, 鈴木 博之, 中澤 進一, 近岡 秀次郎, 小井土 玲子, 神垣 昌人, 中田 義雄, ...
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1745-1764
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem (MK-0787) は米国メルク社研究所で開発されたカルバペネム系新抗生剤であり, グラム陽性及び陰性の両菌種に対し優れた抗菌性を有し, グラム陰性菌に対する抗菌性はいわゆる第3世代Cephem系製剤と同程度であるが, Pseudomonas aeruginosaに対してはより活性が高く, 一方Enterococcus facalisなどのグラム陽性菌に対する抗菌性は第3世代Cephem系製剤に比較して遙かに強力であり, Bacteroides fragilisを含む各種嫌気性菌についても活性を有し, 又, 各種細菌の産生するβ-ラクタマーゼに対し極めて安定であると同時に, β-ラクタマーゼ阻害活性を有する点を特徴としている。
    本剤は腎尿細管上皮のRenal dipeptidaseで分解される関係上, 臨床的にはRenal dipeptidaseを選択的可逆的に阻害するCilastatin sodium (MK-0791) との1: 1の配合剤が静注用製剤として使用されるようになつた。本配合剤を使用しての成人各科領域における研究はすでに広範に行われ, その成果は第32回日本化学療法学会西日本支部総会 (昭和59年12月14日) で報告され, 解析対象症例数1, 296例に対する有効率は75%であつた1)。今回本剤の小児科領域における検討を行うことができたので, 以下, 今日までの概況について報告する。
  • 豊永 義清, 杉田 守正, 津田 隆, 高橋 孝行, 堀 誠
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1765-1786
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児科領域においても, 旧型Cephalosporin (CEPs) 剤の頻用に従い, β-Lactamase産生グラム陰性桿菌による感染症の増加が認められ1), 又, 宿主の感染抵抗性低下に乗じて定着し, 起病性を発揮するようになつた弱毒菌による感染症も増加している。こうした背景から開発されたいわゆる藤井の分類2)の第4, 5群のCEPSは上記の感染症に対して優れた臨床効果を示しているが, 最近ではMethicillin (DMPPC) 耐性ブドウ球菌4, 5), Cephem剤耐性ブドウ球菌の増加の報告3, 6~9)も多く, 又, Pseudomonas aeruginosaに対しても, 第5群の一部が, Amino-glycoside系薬剤とほぼ同様の抗菌力を持つにすぎず, 菌決定前の初期治療薬の選択の際, 第5群のCEPsでも必ずしも1剤での治療が危ぶまれることがあるのも事実である。さて, Imipenem (MK-0787, N-Formimidoyl-thienamycin) は米国メルク社において開発された新注射用Carbapenem剤で, その化学名は (5R,6S)-3-[[2-(Formimidoylamino)ethy1]thio]-6-[(R)-1-hydroxyethyl]-7-oxo-1-azabicyclo[3. 2. 0]hept-2-ene-2-carboxylic acidmonohydrateである。その化学構造式をFig. 1に示すが, MK-0787はペニシリン母核の1位の硫黄が炭素におきかわつたDesthiocarbapenem核を有する新しいβ-Lactam抗生物質ThienamycinのAmidine誘導体である。
    本剤は, グラム陽性菌及び陰性菌に広く優れた抗菌力を示すが10, 11), 特に第5群のCEPsが抗菌力が弱かつたStaphylococcus aureusをこ対しては, セフェム剤耐性株を含め, 旧型のCEPs剤よりも優れていると報告12, 13)され, Enterococcus faecalisに対してもPiperacillin (PIPC) をしのぐ強い抗菌力を示し10, 13, 14)ており, 更に, P. aeruginosaに対しても, 第5群CEPsより優れていると報告10, 11, 14~16)されている。しかしながら, MK-0787は体内の主として腎においてDehydropeptidase-Iにより水解不活化されるため, この酵素の特質的阻害剤として, 同じく米国メルク社において, Cilastatin sodium (MK-0791) が開発され, MK-0787及びMK-0791を1: 1に配合した時, MK-0787の尿中回収率が最高に達し, 腎毒性も消失することが明らかになつた。今回, 我々は, MK-0787/MK-0791を使用する機会を得たので, 本剤について, 抗菌力, 吸収・排泄などの基礎的検討を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したのでそれらの成績について報告する。
  • 城 裕之, 楠本 裕, 老川 忠雄, 小佐野 満
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1787-1803
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (MK-0787/MK-0791) は, MK-0787 (N-Formimidoyl thienamycin) とMK-0791を1: 1に配合した注射用抗生物質である。MK-0787は新しいβ-ラクタム系抗生物質のカルバペネムに属し, β-ラクタマーゼに安定で, そのため幅広い抗菌スペクトラムを持つている。MK-0791は腎におけるMK-0787の水解不活化酵素の特異的阻害剤で, MK-0787と配合することにより, 尿中回収率を改善し, 腎毒性を軽減することが知られている1)。
    今回, 私共は本剤の小児科領域における抗菌力, 吸収・排泄などの基礎的検討及び臨床的検討を行つたので報告する。
  • 砂川 慶介, 石塚 祐吾, 河合 直美, 斎藤 伸夫
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1804-1816
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (MK-0787/MK-0791) は米国メルク社で開発されたThienamycin誘導体とRenal dipeptidase阻害剤の1: 1の配合剤でグラム陽性, 陰性菌に対して強い抗菌力を有する薬剤である。すでに諸外国での検討で本剤の有用性が確認されているが, この度小児科領域での検討がなされることになり, 基礎的, 臨床的検討を行う機会を得たのでその結果を報告する。
  • 南谷 幹夫, 八森 啓, 金田 一孝
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1817-1827
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    米国メルク社研究所が創製したImipenem (MK-0787) はThienamycinのN-Formimidoyl誘導体であり, グラム陽性, 陰性菌を通じて広範囲の菌種に対し優れた抗菌活性を示すばかりでなく, Pseudomonas aeruginosa, Gentamicin (GM) 耐性P. aeruginosa, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilisを含む嫌気性菌に対しても有効とされる。MK-0787の欠点とされるRenal dipeptidaseによる水解不活化や腎毒性の阻害剤として開発されたCilastatin sodium (MK-0791) との等量配合によつて新しい化学療法剤としてMK-0787/MK-0791が登場した。
    ここでは本剤の小児科領域の各種感染症に対し使用した結果について述べる。
    吸収, 排泄については11歳児, 3歳児に対しそれぞれ13.2mg/kg, 16.1mg/kgを30分点滴静注し血漿中濃度を測定したところ, MK-0787のピークは点滴静注終了直後で, それぞれ56.33, 55.98μg/mlであり, T1/2は1.21, 1.04時間であつた。
    MK-0791のピークは点滴静注終了直後で53.73, 22.99μg/ml, 1時間には10.54μg/ml及び測定不能であり, その後も検出し得なかつた。投与後6時間までの尿中累積回収率はMK-0787はそれぞれ82.9%, 63.6%であり, MK-0791のそれは57.9%, 74.6%であつた。
    臨床使用成績では急性扁桃炎, 溶連菌感染症, 気管支肺炎, 蜂窩織炎, 敗血症の疑, サルモネラ症の6例に本剤を投与し, 著効3例, 有効3例と全例に効果を認めた。
    副作用は臨床的にも臨床検査においても特に異常は認められなかつた。
  • 中島 崇博, 中島 佐智恵, 早川 文雄, 宮地 幸紀, 袴田 享, 久野 邦義
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1828-1846
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem (MK-0787) は, 1976年米国メルク社により, Streptomyces cattleyaから得られたThienamycinのN-Formimidoyl誘導体である1~3)。MK-0787はFig. 1の化学構造を持ち, 各種細菌産生のβ-ラクタマーゼ阻害活性を有し, グラム陽性菌, グラム陰性菌の広範囲の菌種に対し強い抗菌力を示し4), 特にPseudomonas aeruginosaに対しては, Cefsulodin及びCefoperazone (CPZ) より強い抗菌力を示す5) と共にGentamicin耐性P. aeruginosaに対しても強い抗菌力を示す6)。又, 従来セフェム系抗生剤が無効であつたEnterococcus faecalisに対し強い抗菌力を示す。一方, 各種の嫌気性菌に対してもClindamycinより強い抗菌力を示す7)。しかし, 腎尿細管上皮のRenal dipeptidase (Dehydropeptidase-I) により, 水解不活化されるため, この酵素に対して選択的阻害作用を有するCilastatin sodium (MK-0791)(Fig. 2) が開発された3)。MK-0787と1: 1に配合した時, MK-0787の尿中回収率が最高に達し, 且つ動物実験においてみられたCephaloridineより弱い腎毒性も消失することが認められた8)。なおMK-0791には抗菌活性はない。
    今回, われわれはMK-0787/MK-0791を小児科領域の細菌感染症に使用する機会を得たので, 基礎的及び臨床での有効性, 安全性について検討を行ったので報告する。
  • 岩井 直一, 宮津 光伸, 柴田 元博, 中村 はるひ, 片山 道弘, 種田 陽一, 猪熊 和代
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1847-1865
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (MK-0787/MK-0791) は米国メルク社によつて開発されたCarbapenem系抗生物質に属するMK-0787とMK-0791との1: 1の配合剤である1, 2)。
    MK-0787は従来のPenicillin系及びCephem系抗生物質とは基本的に化学構造を異にする新しいタイプのβ-Lactam剤であるCarbapenem系抗生物質, ThienamycinのN-Formimidoyl誘導体である1, 2)。MK-0787は好気性, 嫌気性のグラム陽性菌並びにこ陰性菌に極めて幅広い抗菌域を有しており, その抗菌力はグラム陰性菌に対してはいわゆる第3世代Cephem剤に匹敵し, グラム陽性菌に対してはそれらよりはるかに優れていると言われている1~3)。又, 従来のCephem系抗生物質の多くが無効であつたEnterococcus faecalisや抗菌活性の弱かつたPseudomonas aeruginosaに対しても非常に優れた抗菌力を示す1~3)。更に, 各種細菌の産生するβ-Lactamaseに対し極めて安定で, 且つそれ自身強い阻害作用を有することが報告されている1~4)。しかし, 体内の主として腎に存在するDehydropeptidase-I (Renal dipeptidase) によつて加水分解を受けるために, 優れた尿中回収率が得られないばかりか, その代謝産物が腎毒性を示すといつた欠点を有することが指摘されている1, 2)。
    一方, MK-0791は, それ自身では全く抗菌活性を示さないが, Renal dipeptidaseを選択的, 可逆的に阻害する作用を有しており, 毒性においてもさして問題のない薬物である1, 2)。
    このような特性を持つ両剤を配合したMK-0787/MK-0791では, MK-0787の抗菌活性はMK-0791によつて全く影響を受けずに, しかもRenal dipeptidaseによるMK-0787の水解がMK-0791によつて防止されることによつて, MK-0787の尿中回収率が飛躍的に改善され, 腎毒性をも軽減できることが明らかにされた1, 2)。本邦においてはすでに成人領域の基礎的, 臨床的検討がほぼ終了し, 臨床的に高い有効性が得られ, しかも安全性についてもこれまでのところ特に問題のない薬剤であることが確認されている1)。
    今回, 我々はMK-0787/MK-0791についての基礎的, 臨床的検討を小児科領域において行つたので, その成績を報告する。
  • 西村 忠史, 田吹 和雄, 高島 俊夫, 高木 道生
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1867-1878
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    感染症の変貌とその対策, 特に重症細菌感染症の化学療法は, 宿主の基礎的要因, 病原細菌の特性により, 現在決して容易でない。とくに近年, 小児科領域でもOpportunistic pathogenとして注目されていたグラム陰性桿菌に対する抗菌力の優れた, いわゆる第3世代のβ-Lactam系抗生物質使用が増加している。一方, Staphylococcus aureusを代表とするグラム陽性球菌感染症の増加も指摘され膿胸, 敗血症など重症全身感染症での重要性は変らず, Methicillin耐性菌の新たな問題も生じている。
    最近米国メルク社において開発されたImipenem (MK-0787, IPM) はStreptomyces cattleyaから得られたβ-Lactam系抗生物質ThienamycinのIV-Formimidoyl誘導体であり, β-Lactamaseに安定で, グラム陽性球菌のS. aureusからグラム陰性桿菌はもとよりPseudomonas aeruginosaをこまで幅広い抗菌力を示す1~3)。しかし, Imipenemは体内で主として腎においてDehydropeptidase-I (DHP-I) により水解不活化される。今度, この酵素の特異的阻害剤であるCilastatin sodium (MK-0791, CS) が同じ米国メルク社により開発されたが, 本剤は抗菌活性はない。そこでImipenem及びCilastatin sodiumを1:1に配合した時, 腎毒性が軽減され, Imipenemの高い尿中回収率の得られることが, 明らかにされ4), Imipenem/Cilastatin sodium (MK-0787/MK-0791, IPM/CS) として臨床応用への道が開けた。
    本邦でも1984年12月14日日本化学療法学会西日本支部総会新薬シンポジウム5) において成人領域における本剤の有効性と安全性が示された。小児科領域においてもこれら成人の成績の結果から本剤の検討が行われることになり, 著者らもその機会を得たので, ここにそれらの成績について述べる。
  • 春田 恒和, 大倉 完悦, 黒木 茂一, 山本 初実, 山岡 幸司, 久保 桂子, 小林 裕
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1879-1887
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem (MK-0787) はメルク社の研究所で開発されたCarbapenem系抗生物質に属するThienamycinのN-Formimidoyl誘導体で, グラム陽性, 陰性を問わず, ほとんどすべての好気性, 嫌気性菌に強い抗菌力を有し, β-Lactamaseに安定であるが, 単独で投与すると, 生体内で主に腎のDehydropePtidase-Iによつて水解不活化されるため, 尿中回収率が極めて低く, しかも動物実験で腎障害がみられる1, 2)。 そこで同じくメルク社によつて開発されたDehydropeptidase-I特異的阻害剤Cilastatin sodium (MK-0791) と配合することが考えられ, 配合比1対1で尿中回収率が最高に達し, 腎毒性も消失することが判明した1) ので, 1対1の合剤で臨床試験が行われ, 1984年12月に岡山で開催された第32回日本化学療法学会西日本支部総会において, 新薬シンポジウムとして, その成績が討議された3)。 その後幼若動物における安全性も確かめられたので, 小児科領域研究会を組織して臨床応用について検討することとなり, 我々もその一員として若千の成績を得たので, 報告する。
  • 本廣 孝, 古賀 達彦, 島田 康, 冨田 尚文, 藤本 保, 西山 亨, 富永 薫, 山下 文雄, 鈴木 和重, 豊田 温, 高城 信彦, ...
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1889-1911
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    メルク社で開発されたImipenem (MK-0787) はβ-Lactam系抗生物質であるCarbapenem系薬剤に属するThienamycin1) のN-Formimidoyl誘導体2)で, Fig.1のような構造を有し, グラム陽性からグラム陰性の好気性菌及び嫌気性菌まで優れた抗菌作用があり, β-Lactamaseに対し安定である3, 4)。 しかし体内においては主に腎でDehydropeptidase-Iにより水解不活化される弱点を有していたが, この酵素に対する阻害剤であるCilastatin sodium (MK-0791) はFig.2に示す構造を有し, MK-0787と同じくメルク社が開発した2, 4, 5)。そこでこの両剤における種々の基礎的検討からMK-0787とMK-0791を等量での配合が選択され, 1984年の第32回日本化学療法学会西日本支部総会における新薬シンポジウムで, 基礎面からの成績及び成人での臨床評価が論じられた4)(Figs. 1, 2)。
    私たちは小児に対しても本剤すなわちMK-0787/MK-0791の有用性を知る目的で, 小児に投与し, その血漿中濃度, 尿中濃度, 尿中回収率の測定を行うと共に, 種々の細菌感染症に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用及び臨床検査値への影響について検討したのでその成績を報告する。
  • Imipenem/Cilastatin sodium小児科領域研究会
    藤井 良知, 目黒 英典, 有益 修, 吉岡 一, 藤田 晃三, 丸山 静男, 印鑰 史衛, 永松 一明, 我妻 義則, 高瀬 愛子, 楠 ...
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1912-1937
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (MK) 0787/MK-0791)は, 新しいβ-ラクタム系抗生物質配合剤である。
    米国メルク社研究所においてKAHANら1) がStreptomyces cattleyaの産生するThienamycinを発見したが, その物質が反応性の高い側鎖を持ちβ-ラクタム環が加水分解を受けることから, その安定な誘導体N-Formimi-doyl thienamycin, MK-0787が合成された2)。その構造的特徴 (Fig. 1) としては, 五員環内に硫黄或は酸素原子のかわりに活性メチレン基を持ちCarbapenem系と称される。それが細胞壁との結合力を強め, 又, 従来のPenicillin系及びCephem系抗生物質では, 五員環に接する側鎖がcis配位であるのに対し, MK-0787の側鎖がtrans配位であり, 細菌の産生するβ-ラクタマーゼに対し安定である。 反面, 腎尿細管上皮細胞のBrush border (刷子縁) に存在するRenal dipeptidase (Dehydropeptidase-I) により不活性化される。 そのため特に尿路感染症での有用性が懸念され, その酵素阻害剤の必要性が認識された。 MK-0791はその阻害剤として開発されたものであり (Fi9. 2), その作用は特異的で他のペプチダーゼは阻害せず, 又, 抗菌力も有しない。 MK-0787とMK-0791を1:1に配合した時, MK-0787の尿中回収量が最高となり, 且つ, 感受性の高い実験動物でMK-0787単剤を高用量で投与して観察された腎毒性 (尿細管壊死) もこの配合剤投与により全く消失した3)。
    他方, MK-0787の特徴として作用機作は細胞壁の生合成阻害であり, Penicillin-binding Protein (PBP)-2と強く結合する4)。又, Staphylococcus aureus, Enterococcus faecalisを含むグラム陽性菌に対し強い抗菌力を示し, Penicillinとは交叉耐性を示さない。 他方, Pseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対してもCefsulodin (CFS) 及びCefoperazone (CPZ) より強い抗菌力を示し5), Gentamicin (GM) 耐性P. aeruginosaに対しても強い抗菌力を示す6)。 一方, Bacteroides fragilisを含む各種嫌気性菌に対してもClindamycin (CLDM) より優れた抗菌力を示すり。
    以上の結果をふまえて広汎な基礎・臨床試験が実施され, 第32回日本化学療法学会西日本支部総会 (昭和59年, 岡山) の新薬シソポジウムにおいて, 成人領域での安全性, 有用性が報告されている8)。
    今回, 小児科領域MK-0787/MK-0791研究会 (会長藤井良知) を組織し, 参加16施設及びその関連施設の協同研究として1984年12月から1985年9月までの約9ヵ月間にわたり, 基礎的検討並びに各種細菌感染症に対する臨床的検討を行つたのでその成績を報告する。
  • 小島 忠士, 大平 信広, 桜井 実
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1938-1946
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    骨組織及び関節は構造上血流が極めて緩慢であることから1~3), 全身投与による抗生物質の組織移行性が治療上重要な因子となる。 特に慢性骨髄炎等によつて骨組織に反応性の骨硬化や瘢痕が形成されると, 血流を介しての化学療法はその有効性が低減する。
    又, 整形外科領域で人工関節置換術が大いに進歩してきているが, それに伴う感染は極めてその治療が難渋することになり, 当初からの無菌的な手術と予防的抗生物質の投与等により感染を回避することが重要な問題となつている4)。
    一般に抗生物質の全身的投与は最終的に感染病巣組織への移行によつて, 起炎菌に接触することが肝要であり, その指標を得る目的で骨組織への抗生物質の移行がいかようになつているかを検討することが必要になる。 その基本的な研究の一つとして, 著者らは股関節の手術等に際して得られる骨髄血中の抗生物質の濃度についてCephalo-thin (CET)5), Cefazolin (CEZ)6), Cefotiam (CTM)7), Cefmetazole (CMZ)8) 及びCfotaxime (CTX)9) の移行濃度について検索を行つてきたが, 今回Cephem系と異なるCarbapenem系抗生物質の一つであるImipenem (MK-0787)並びにその分解酵素である腎臓のDipeptidaseを特異的に阻害するCilastatin sodium (MK-0791) の合剤10) を静脈内点滴注射により投与し, その経時的な骨髄血への移行濃度を検索したのでその結果を報告する。
  • 桜井 実
    1986 年 39 巻 7 号 p. 1947-1959
    発行日: 1986/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    骨・関節領域の感染症は自然発生的なものが減少する傾向を示す一方, 外傷に伴うものなど外因性のものは一向に減少することなく常に整形外科領域における治療体系の一つとして重要なものである11)。 その治療に当つては強力な抗菌力を示す抗生物質が開発されてはいるものの, 耐性菌の出現等まだ将来において問題が解決したわけではない。
    1978年KAHAN等1) によつてStreptomyces cattleyaの培養濾液から作り出した新しいCarbapenem系抗生剤Thienamycinが新しく開発された。 更に米国のメルク社研究所においてその誘導体Imipenem (MK-0787) が合成され, 極めて強力な抗菌力を示す抗生物質として利用段階に入つてぎた2)。 この薬剤はPseudomonas cepacia 及びXanthomonas maltophiliaにだけ抗菌力を示さない他はほとんどすべての起炎菌に対し殺菌的作用を有する3)。
    しかし腎臓の尿細管上皮の管腔表面に存在するRenal dipeptidaseによつて代謝を受け生体内で有効濃度が急速に減少する欠点がある4)。 それに対する酵素阻害剤であるCilastatin sodium (MK) 0791) が開発され両者の均等な濃度を合剤として用いることにより5), 全身投与による化学療法が実現するようになつた。
    今回, 1984年2月から同年11月までの間に東北大学整形外科及び関連の11施設 (由利組合総合病院, 平鹿総合病院, 山形市立病院済生館, 東北労災病院, 国立仙台病院, 古川市立病院, 宮城野病院, 公立佐沼病院, 角田市小川病院, 公立築館病院, 福島労災病院) において臨床評価し得た骨関節感染症30例に対し本剤による治療を行つた結果, 臨床上十分な有用性が認められたのでその結果について報告する。
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