1986 年 39 巻 9 号 p. 2450-2457
近年, 周産期医療の進歩・向上, 更に新生児期における抗生物質の体内動態の研究及び細菌感染に対する防御機構に関する知見の集積などにより, 周産期における細菌感染症の診断・治療は大きく発展した。しかし, 一方では最近の周産期細菌感染症においても起炎菌の変化や高度耐性菌の出現などが指摘され, 新たな治療上の問題も生じている。
さて, Cefotiam (CTM) は7位側鎖にAminothiazole環を, 3位側鎖にTetrazole環を有するセフェム系の抗生物質であり, グラム陽性及びグラム陰性菌に対して抗菌力を示し, 特に小児感染症の起炎菌として頻度の高いStaphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeなどに抗菌力を有し, 更にAmpicillin (ABPC) 耐性のHaemophilus influenzaeにも有効である1-4)。本剤はすでに本邦でも成人領域, 新生児を除く小児科領域で基礎的及び臨床的検討が行われ, 優れた評価結果が得られている5)。
以上のことから, 昭和57年10月から母子化学療法研究会において, CTMの新生児・未熟児に対する基礎的・臨床的検討が行われることとなり, 著者らも新生児におけるCTMの基礎的及び臨床的検討を行ったので, その成績について述べる。