The Japanese Journal of Antibiotics
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周産期におけるCefotiamの基礎的, 臨床的研究
張 南薫福永 完吾國井 勝昭
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1986 年 39 巻 9 号 p. 2488-2496

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抄録

Cefotiam (以下CTM) は, 武田薬品中央研究所で創製されたCephalosporin系の抗生物質である。化学構造上7位側鎖にAminothiazolin環を, 3位側鎖にTetrazole環を有する。
本剤の抗菌力上の特徴は, それ以前のCephalosporin系抗生物質に比べ抗菌スペクトルが拡大され, Haemophilus influenzae, Enterobacter, Citrobacter, Indole (陽性) Proteusなどにも抗菌力を有し, 又, その抗菌活性はそれ以前のCephalosporin系抗生物質よりも優れていることである。本剤の体内動態は, 筋注又は静注によつて高い血中濃度が得られ, Cefazolin (CEZ) とCephalothin (CET) の中間に類似した血中推移を示し, 尿中, 胆汁中にも高率に排泄される1)。
本剤は開発以来, 各科領域で多くの検討がなされその価値が認められている。1978年第26回日本化学療法学会総会新薬シンポジウムにおいては本剤の評価成績が報告され2), その有用性が認められ, われわれもこれを報告した3)。
近年重要視されている周産期医学では, 胎児, 新生児を中心として妊娠末期の母体, 新生児期の諸問題について広く研究が行われている4)。
周産期に選択すべき抗生物質としては, 広域スペクトラムで抗菌力が強いこと, 注射可能で吸収が速く, 病巣分布が良いこと, 副作用が少ないことなどの諸条件を満たすことが望ましいと考えられる。以上のことから考察すると, CTMは周産期において選択されるべき抗生物質としての諸条件を備えていると考えられるので, 今回, 母子化学療法研究会ではCTMの組織的共同研究が行われた。われわれも上記の観点から研究会に参加し, 以下の知見を得たので報告する。

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