The Japanese Journal of Antibiotics
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制癌剤Neocarzinostatinに対する拮抗剤の探索 (第2報)
In vivoにおいてNeocarzinostatinの毒性を軽減させる薬物の検討
大内 勝鳥山 和壮松本 朋徳馬場 恒男
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1988 年 41 巻 1 号 p. 105-115

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抄録

Tiopronin, Glutathione還元型, Sodium thioglycolate及びL-Cysteine monohydrochloride monohydrateの4SH化合物のNeocarzinostatin (NCS) 急性毒性に対する軽減効果と, NCSとTioproninとの併用による抗腫瘍効果を, ICR-JCL系雄マウスを用いて検討した。
1. NCS急性毒性に対する軽減効果
各薬物のLD50値の約1/2~1/15用量をNCSと異なる投与経路から, NCSと同時 (薬物投与後直ちにNCS投与) あるいはNCS投与の15分ないし1時間前又は1時間後に単回投与し, NCSのLD50値を単独投与の場合と比較した。
(1) NCS静脈内及び薬物皮下投与の場合のLD50値は, 薬物をNCS投与1時間前に投与すると, NCS単独投与に比べてTiopronin 300, 500mg/kg及び1,000mg/kg群で約1.8~5.4倍, Glutathione還元型2,000mg/kg群で約2.3倍, Sodium thioglycolate 100mg/kg群で約1.2倍並びにL-Cysteine monohydrochloride monohydrate 1,000mg/kg群で約1.9倍高く, 同時投与ではTiopronin 150, 300, 500mg/kg及び1,000mg/kg群で約2.3~3.2倍, Glutathione還元型500, 1,000mg/kg及び2,000mg/kg群で約1.3~1.6倍, Sodium thioglycolate 50mg/kg及び100mg/kg群で約1.3~1.4倍高くなり, 毒性軽減が認められた。又, Tiopronin 150, 300, 500mg/kg及び1,000mg/kgをNCS投与15分前に投与すると, 約4.8~13.1倍高くなり著しい毒性軽減が認められた。しかし, NCS投与1時間後投与では, いずれの薬物によつても毒性の軽減は認められなかつた。
(2) NCS腹腔内及びTiopronin静脈内投与の場合のLD50値は, NCS投与の1時間前投与では500mg/kg及び1,000mg/kg群で約1.4~1.6倍, NCSと同時並びにNCS投与の1時間後では150, 300, 500mg/kg及び1,000mg/kg群で約1.6~5.8倍並びに約1.3~1.7倍高く, 毒性軽減が認められた。
(3) 以上のように, NCS急性毒性に対する軽減効果はTioproninが最も強く, Glutathione還元型, Sodium thioglycolate及びL-Cysteine monohydrochloride monohydrateでは軽度であつた。又, NCS静脈内及びTiopronin皮下投与の場合, NCS投与の15分前投与で効果は大きく, 高用量ではNCS投与の1時間前投与においても著しい効果が認められた。NCS腹腔内及びTiopronin静脈内投与の場合には, NCSとの同時投与において効果は大きかつた。
2. NCSとTioproninとの併用による抗腫瘍効果Sarcoma-180腫瘍細胞を腹腔内移植後24時間に, NCSを腹腔内, Tioproninを静脈内に投与して延命効果を調べた。
(1) NCS単独投与群では, NCS 500U/kg群がIncreased life-span (ILS)>316%, NCSとTiopronin 1,000mg/kgとの同時併用投与群ではNCS 10,000U/kg群がILS>397%, NCS投与後5分Tiopronin 1,000mg/kg併用投与群ではNCS 2,000U/kg群がILS>362%を示し, いずれも延命効果は最も高かつた。
(2) そして, NCSとTioproninとの同時併用投与群が最も優れた抗腫瘍効果を示した。

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