The Japanese Journal of Antibiotics
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血中有効濃度を保つためのSulbactam/Cefoperazoneの投与量設定, 評価へのアプローチ
1濃度ディスク感受性結果の4カテゴリー評価の臨床利用への信頼性
植手 鉄男松尾 清光
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1988 年 41 巻 11 号 p. 1578-1590

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抄録

1. Sulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) 静注時の血中有効濃度を得るための投与量の設定, 評価を行うためSBT/CPZディスク感受性結果の定量的利用の吟味, 検討を行つた。8mm 直径-SBT/CPZディスク (共に30μg含有, 昭和薬品化工) 及び6mm直径-SBT/CPZディスク (共に30μg含有, 自家製) の阻止円の大きさの定量的評価, すなわちMIC値の推定について, MIC実測値と比較し, その信頼性を究明した。
2. 1986年 (昭和61年) に無作為に分離された各種臨床分離株365株について, MIC測定と共に2種 (昭和, 自家製) のSBT/CPZディスクテストを行つた。両ディスクの阻止円の大きさとMICとは良好な逆相関関係を示した (r=-0.74~-0.75)。両ディスク結果を本邦で利用されている4分類法で分類した場合, Break pointsの一定基準を多くの細菌に対して適応できるが, 緑膿菌, 黄色ブドウ球菌, 腸球菌の一部において (+) が (++) に,(++) が (+++) に甘く判定されるFalse positiveがみられた。
ゆえに, 本研究において腸球菌を判定から除外して緑膿菌に対して別の阻止円の分類基準を MICに基づき仮設定した。この場合, より正確な信頼性の高いMICの定量的評価が可能となつた。
3. 各種臨床分離株365株へのSBT/CPZ及びCPZの実測MIC値より両薬剤の抗菌力を比較考慮すると, 黄色ブドウ球菌に対するMIC80はCPZ 50μg/ml, SBT/CPZ (CPZとして表示) 12.5μg/mlとSBTによるCPZの抗菌力の増強がみられた。両薬剤共に表皮ブドウ球菌に対してMIC80は6.25μg/ml, 腸球菌MIC8080はCPZ 50μg/ml, SBT/CPZ 25μg/mlであった。緑膿菌に対するMIC80はCPZ 50μg/ml, SBT/CPZ 12.5μg/mlであった。同じくセラチア・マルセッセンスにはCPZのMIC80は50μg/ml, SBT/CPZは25μg/mlであった。エンテロバクター・エロジェネスに対するCPZ, SBT/CPZのMIC80は, それぞれ6.25μg/mlと 3.13μg/mlであった。
大腸菌, 肺炎桿菌, 変形菌 (インドール陽性, 陰性) の80%の菌株は, CPZ, SBT/CPZの 0.78μg/ml以下の濃度で発育が阻止された。これらの菌に対する両剤の抗菌力に有意な差は認められなかった。
ディスク感受性テスト結果から上記各種臨床分離菌株への両薬剤の抗菌力を評価すると, 黄色ブドウ球菌, 表皮ブドウ球菌, 緑膿菌, セラチァ・マルセッセンス, エンテロバクター・エロジェネスに対するSBT/CPZディスク阻止円の増大がCPZの阻止円に比較して見られた。すなわち, CPZに比べ, SBT/CPZの抗菌力の増強がディスク結果よりも明白に認められた。

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