The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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41 巻, 11 号
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  • 小林 宏行
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1563-1577
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ciprofloxacin (CPFX, BAY o 9867, 1-Cyclopropyl-6-fluoro-1, 4-dihydro-4-oxo-7-(1-piperazinyl)-3-quinoline-carboxylic acid hydrochloride hydrate) は西ドイツ・バイエル社により開発されたQuinoline環を母核とする Pyridonecarboxylic acid (PCA) 系の経口抗菌剤である (Fig. 1)。
    PCA系抗菌剤の開発は1962年のNalidixic acid (NA) に始まり, 現在までにPiromidic acid, Pipemidic acid (PPA), Cinoxacin, Norfloxacin (NFLX), Ofioxacin (OFLX), Enoxacin (ENX) が開発され, 臨床的に広く使用されている。
    PCA系抗菌剤の一連の研究から, Naphthyridine 環あるいはQuinoline環の1位にEthyl, Methoxy, Fluoroethyl, Dinuoromethyl基などの側鎖の導入, 6位へのF (フッ素) の導入及び7位へのpiperazinyl 基の導入により, これらの化合物の抗菌スペクトルを拡大し, 抗菌力を飛躍的に高めることが明らかにされた。現在, NFLX, OFLX, ENX, CPFX はPCA系抗菌剤の中でもNew quinoloneと称されている。
    CPFXはNFLXの1位のEthyl基がCyclopropyl基に置換されている。この修飾にこより, CPFXの抗菌力はNFLX, OFLX, ENXに比べ数倍増強された。
  • 1濃度ディスク感受性結果の4カテゴリー評価の臨床利用への信頼性
    植手 鉄男, 松尾 清光
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1578-1590
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. Sulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) 静注時の血中有効濃度を得るための投与量の設定, 評価を行うためSBT/CPZディスク感受性結果の定量的利用の吟味, 検討を行つた。8mm 直径-SBT/CPZディスク (共に30μg含有, 昭和薬品化工) 及び6mm直径-SBT/CPZディスク (共に30μg含有, 自家製) の阻止円の大きさの定量的評価, すなわちMIC値の推定について, MIC実測値と比較し, その信頼性を究明した。
    2. 1986年 (昭和61年) に無作為に分離された各種臨床分離株365株について, MIC測定と共に2種 (昭和, 自家製) のSBT/CPZディスクテストを行つた。両ディスクの阻止円の大きさとMICとは良好な逆相関関係を示した (r=-0.74~-0.75)。両ディスク結果を本邦で利用されている4分類法で分類した場合, Break pointsの一定基準を多くの細菌に対して適応できるが, 緑膿菌, 黄色ブドウ球菌, 腸球菌の一部において (+) が (++) に,(++) が (+++) に甘く判定されるFalse positiveがみられた。
    ゆえに, 本研究において腸球菌を判定から除外して緑膿菌に対して別の阻止円の分類基準を MICに基づき仮設定した。この場合, より正確な信頼性の高いMICの定量的評価が可能となつた。
    3. 各種臨床分離株365株へのSBT/CPZ及びCPZの実測MIC値より両薬剤の抗菌力を比較考慮すると, 黄色ブドウ球菌に対するMIC80はCPZ 50μg/ml, SBT/CPZ (CPZとして表示) 12.5μg/mlとSBTによるCPZの抗菌力の増強がみられた。両薬剤共に表皮ブドウ球菌に対してMIC80は6.25μg/ml, 腸球菌MIC8080はCPZ 50μg/ml, SBT/CPZ 25μg/mlであった。緑膿菌に対するMIC80はCPZ 50μg/ml, SBT/CPZ 12.5μg/mlであった。同じくセラチア・マルセッセンスにはCPZのMIC80は50μg/ml, SBT/CPZは25μg/mlであった。エンテロバクター・エロジェネスに対するCPZ, SBT/CPZのMIC80は, それぞれ6.25μg/mlと 3.13μg/mlであった。
    大腸菌, 肺炎桿菌, 変形菌 (インドール陽性, 陰性) の80%の菌株は, CPZ, SBT/CPZの 0.78μg/ml以下の濃度で発育が阻止された。これらの菌に対する両剤の抗菌力に有意な差は認められなかった。
    ディスク感受性テスト結果から上記各種臨床分離菌株への両薬剤の抗菌力を評価すると, 黄色ブドウ球菌, 表皮ブドウ球菌, 緑膿菌, セラチァ・マルセッセンス, エンテロバクター・エロジェネスに対するSBT/CPZディスク阻止円の増大がCPZの阻止円に比較して見られた。すなわち, CPZに比べ, SBT/CPZの抗菌力の増強がディスク結果よりも明白に認められた。
  • 尻谷 善則, 山路 真也, 青木 明子, 三枝 美貴子, 横井山 繁行, 五島 瑳智子, 辻 明良
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1591-1599
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Isepamicin (ISP) とβ-Lactam系抗生物質の併用作用をみる目的で, 緑膿菌に対するISPと Cefotaxime (CTX) あるいはPiperacillin (PIPC) との併用効果をin vitro及びin vivo治療実験で検討した。In vitro実験でISPとCTXあるいはPIPCとの併用により著明な併用効果が認められた。正常マウス及びCyclophosphamide処置免疫抑制マウスでの感染治療実験においても著明な相乗効果が認められた。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 深山 成美, 西村 由紀子, 小田 清次, 田中 節子, 加藤 三枝子, 佐藤 久美 ...
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1600-1622
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1987年後半に分離した入院患者由来グラム陰性桿菌に対するMonobactam系抗生物質 (Carumonam (CRMN), Aztreonam (AZT)) の抗菌力をPenicillin系抗生物質 (PCs)(Piperacillin (PIPC)), Cephem系抗生物質 (CEPs)(Ceftazidime (CAZ), Cefotaxime (CTX), Latamoxef,(LMOX), Cefsulodin (CFS)), Carbapenem系抗生物質 (Imipenem (IPM)), そしてPyridonecarboxylic acid系抗菌剤 (Norfloxacin (NFLX), Ofloxacin (OFLX)) を加えて検討した。
    検討に供した株はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Proteus mirabilis, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia rettgeri, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Enterobacter aerogenes, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa, そしてHaemophilus influenzaeの合計13菌種400株である。
    1. Monobactam系抗生物質であるCRMN, AZTの抗菌力はほぼ同等であり, E. coli, Klebsiella spp., Proteus spp., M. morganii, P. rettgeri, そしてH. influenzaeの耐性菌はなく, S. marcescensの耐性菌は少ない。C. freundii, Enterobacter spp., P. aeruginosaの Monobactam系抗生物質の耐性菌は比較的高率であるが, これらの菌種に対するPCs, CEPs 耐性菌はMIC値≥50μg/mlのいわゆるResistant (R株) が高率であるが, Monobactam 系抗生物質の耐性菌はMIC値が12.5~25μg/mlのいわゆるIntermediate (I株) の占める割合が高い成績だった。
    2. PCsのPIPC耐性菌は検討に供した株のいずれにも平均して高率にみられた。
    3. CEPsの抗菌力は菌種によって異なっていた。CTX, CAZ, LMOX耐性菌はC. freundii, Enterobacter spp., S. marcescensに共通して高率であるが, C. freundii, Enterobacter spp. のLMOX耐性菌はI株の占める割合が高く, CTX耐性菌はP. vulgaras,. M. morganiiにもみられた。なお, P. aeruginosaのCEPs耐性菌 (1株を含む) はCFS28%, CAZ12% だつた。
    4. Carbapenem系抗生物質であるIPMの抗菌力は13菌種のいずれに対しても耐性菌が皆無もしくは, 耐性菌が少なく最も安定した抗菌力を示したが, Klebsiella spp., P. mirabilis, そしてH. influenzaeにはMonobactam系抗生物質, CEPsの抗菌力に劣つていた。
    5. Pyridonecarboxylic acid系抗菌剤であるNFLX, OFLXの抗菌力はほぼ同等であるが, P. vulguris, M. morganii, P. rettgeri, S. marcescens, そしてP. aeruginosaの耐性菌 (I株を含む) が高率である他, K. pneumoniae, C. freundii, E. aerogenes, H. influenzaeの耐性菌も散見された。
  • 大門 良男
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1623-1634
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床材料から分離したグラム陰性桿菌のAztreonam (Azr) に対する薬剤感受性成績について検討を加えた。AZTはEscherichia coli, Klebsiela pneumoniae,Proteus属, Enterobacter aerogenes, Citrobacter freundiiに対し, 優れた抗菌力を示し, 対照としたいわゆる第3世代のセフェム系抗生物質とほぼ同等か, もしくはそれ以上であった。又, E.coli, K. pneumoniaeなどに比べて有効な薬剤の少ないEnterobacter cloacae, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosaなどについては対照とした第3世代のセフェム系抗生物質よりも優れでいた。
  • 今泉 宗久, 新美 隆男, 内田 安司, 浅岡 峰雄, 小鹿 猛郎, 天野 謙, 内田 達男, 平井 好三, 梶田 正文, 阿部 稔雄
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1635-1649
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    重症呼吸器感染症に対して, しばしばCephem系抗生物質に併用されるAminoglycoside系抗生物質の人における肺組織内移行についての報告は未だみられない。 そこで我々はAstromicin (ASTM) の術直前投与により肺組織内移行並びにその点滴静注法の安全性を検討し, 以下の結論を得た。
    1.ASTM 200mg術直前1時間点滴静注時の血清中濃度のピーク値は投与開始1時間後に平均11.2μg/mlであり, β相の半減期は2.90時間であった。
    2.ASTM 200mg術直前1時間点滴静注時の肺組織内移行は, 正常肺組織で投与開始2時間に最高となり平均7.7μg/gで, その後緩やかに漸減し, 血清ピーク値に対する比率は27.7~68.8%であった。
    3.ASTM 200mg術直前1時間点滴静注時の細気管支組織内移行は, 血清ピーク値に対する比率は33.0~72.3%であり, 良好であった。
    4.ASTM 200mg1時間点滴静注法はASTM 200mg筋注法と共に, 安全に臨床に使い得る方法であることが示された。
  • 坂田 宏, 梯 仁志, 藤田 晃三, 室野 晃一, 帰山 雅人, 岡 敏明, 吉岡 一, 佐々木 暢彦, 森 善樹, 丸山 静男, 印鑰 史 ...
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1650-1656
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) を23例の新生児及び幼若乳幼児の感染症患者に投与し, その臨床効果と副作用及び薬物動態を検討した。臨床投与成績は16例について検討した。本剤の適応と考えられた敗血症3例, 髄膜炎1例, 肺炎1例, 敗血症疑い11例における投与成績は著効2例, 有効12例であった。副作用は合計23例について検討したが, 臨床上, 下痢と潮紅が1例ずつ, 検査値異常ではGOT, GPTの上昇が1例, GOTだけの上昇が2例にみられた。
    薬物動態は7例で検討した。IPM/CSを20mg/20mg/kg (以後IPMの量だけ表す) を30分と60分で点滴静注した例がそれぞれ3例, 10mg/kgを60分で点滴静注した例が1例である。20mg/kg投与症例のIPM血清中濃度は点滴静注終了時で18.0~96.9μg/ml,CSは31.7~144.5μg/mlであつた。血清中半減期はIPMが1.2~2.0時間, CSが1.4~2.7時間であった。尿中回収率は5例で検討したが, ばらっきがあるものの0~6時間でIPMが12.5~26.3%, CSは14.9~57.6%であった。髄膜炎の1例で第3病日と第7病日に髄液の移行性を検討した。投与後, 2.75時間と3.5時間でIPMの髄液移行性はそれぞれ23.8%と19.1%であった。CSは検出されなかった。
  • 佐藤 肇, 成田 章, 松本 貴美子, 鈴木 博之, 中澤 進一, 中西 好子, 中澤 進, 近岡 秀次郎, 小井土 玲子, 神垣 昌人, ...
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1657-1670
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児に対するImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) 点滴静注時の基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の成績を得ることができた。
    1. IPM/CS 10mg/10mg/kg又は20mg/20mg/kgを30分又は1時間要して点滴静注した時, Cmaxは点滴静注終了直後にあり, 19.0~34.7μg/ml/32.6~73.4μg/mlであつた。
    2. 投与開始後6~8.5時間までの尿中排泄はIPM 19.8~42.7%, CS 46.9~89.3%であつた。
    3. 臨床的には13例中著効4例, 有効8例, 判定不能1例であつた。
    4. 臨床的副作用は認めなかつたが, 2例に血小板増多を認めた。
    以上の結果から, IPM/CSは新生児の細菌感染症に対して有効性, 安全性の高い薬剤であると考えられた。
  • 豊永 義清, 杉田 守正, 堀 誠, 城 宏輔
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1671-1691
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) で治療した各種細菌感染症の治癒近い時期の日齢1~12日までの成熟児・未熟児19例について, 10mg/10mg/kg, 20mg/20mg/kgを1時間点滴静注し, その後の血漿中濃度推移及び尿中回収率を検討した。例数が少ないため, 成熟児, 未熟児に分けず, 日齢ごとに0~3, 4~7, 8日齢以上の3群に分けて比較検討した。臨床的検討を行つたのは生後0~28日までの男児10例, 女児3例で, その内訳は敗血症 (疑いを含む) 2例, 肺炎6例, 尿路感染症4例, 上顎洞炎1例であつた。
    1. 血漿中濃度推移及び尿中回収率
    (1) 10mg/10mg/kg, 1時間点滴静注IPM 3群のピーク値は点滴静注終了時 (初回採血時) で18.18~19.90μg/mlで, 有意差は認められず, その後, 割合速やかに減少し, 8時間で0.32~0.98μg/mlの濃度を示した。半減期に日齢が進むほど短縮傾向を示し, 平均でそれぞれ1.87, 1.55, 1.40時間であつた。
    CS 3群のピーク値は点滴静注終了時であり, 28.23~30.00μg/mlで有意差は認めなかつた。その後, 生後7日までの群では緩徐に減少し, 8時間値は6.30, 4.58μg/mlで, 半減期も4.10, 3.08時間であつたが, 8日以降の群では速やかに減少し, 8時間では測定限界以下であり, 半減期も1.60時間であつた。
    (2) 20mg/20mg/kg, 1時間点滴静注
    IPM3群とも点滴静注終了時にピーク値を示し, 31.1~38.24μg/mlであつた。その後割合速やかに漸減し, 8時間で0.95~2.08μg/mlを示していた。半減期は1.5~1.88時間であった。
    CS 3群とも点滴静注終了時にピーク値を示し, 47.0~55.82μg/mlで有意差は認められなかつた。その後, 緩徐に減少し, 8時間値では日齢が幼若なほど高く,それぞれ14.75,9.40, 4.0μg/mlを示した。半減期は明瞭に日齢差を認め,0~3日齢で4.48時間, 4~7日齢で3.30時間, 8日齢以上2.1時間と, 日齢が進むほど短縮する傾向を示した。
    (3) 尿中回収率11例の検討で, 8時間までにIPM21.6~57.3%, CS47.5~96.0%であり, 若干10mg/10mg/kg投与群のCSで日齢が進むにつれて回収率が増加した。
    2. 臨床成績本剤を敗血症 (疑いを含む) 2例, 肺炎6例, 尿路感染症4例, 上顎洞炎1例の計13例に使用し, 全例に有効以上の成績を示した。細菌学的にも不明の1例を除き, 12例 (Staphylococcus aureus 4例, Klebsiella pneumoniae 2例, Escherichia coli 4例, Group B Streptococcus 1例, Haemophilus influenzae+Enterobacter cloacae 1例) ともすべて経過中に消失した。投与量は24.7mg/24.7mg~65.2mg/65.2mg/kg/日であり, 尿路感染症の2例が1日2回投与であつた以外は3回投与であつた。
    副作用としては, 自他覚的副作用は全例に認めず, 臨床検査値異常としてはGOT, GPTの上昇を1例に認めた。
  • 砂川 慶介, 石塚 祐吾, 斎藤 伸夫, 秋田 博伸, 岩田 敏, 佐藤 吉壮, 老川 忠雄
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1692-1703
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) のB群連鎖球菌に対する抗菌力, 新生児での臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1. 妊婦の睦由来のB群連鎖球菌55株に対するIPMのMIC分布は0.024μg/mlがピークで, 全株が0.05μg/ml以下であつた。
    2. 新生児細菌感染症9例に本剤を使用した結果著効5例, 有効4例であつた。本剤投与に起因する副作用は, 検討10例においては認められなかつたが, 2例に好酸球増加, 2例に血小板数の増加が認められた。
    3. 7例で腸内細菌叢の検討を行つたところ, 腸内細菌は影響を受けるが, Latamoxef, Cefmonoxime投与時よりは影響が少なかつた。
    4. 副作用検討症例を含め10例について血液凝固系に及ぼす影響を検討したところ, 禁乳の1例でProthrombin time (PT), Activated partial thromboplastin time (APTT) の廷長, 異常プロトロンビン (PIVKA II) 陽性がみられた。血小板機能の抑制はみられなかつた。
  • 阿座上 志郎, 楠本 裕, 老川 忠雄, 小佐 野満, 城 裕之, 白井 泰生, 中村 満
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1704-1714
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) の新生児期における基礎的, 臨床的検討を行い, 以下のような結果を得た。
    1. IPM/CSを20mg/20mg/kg, 1時間点滴静注した際の血中濃度のPeak値は投与終了時にあり, 最高血中濃度の平均は日齢0~3日では出生体重2,500g及びそれ以上の新生児でIPMが44.2μg/ml, CSが70.0μg/ml, 2,500g未満の新生児でIPMが47.2μg/ml, CSが56.1μg/ml, 日齢4日以降では2,500g及びそれ以上の新生児で夏PMが35.0μg/ml, CSが415μg/ml, 2,500g未満の新生児でIPMが45.7μg/ml, CSが65.3μg/mlであった。
    2. この際の半減期の平均は日齢0~3日では出生体重2,500g及びそれ以上の新生児でIPMが1.6時間, CSが3.1時間, 2,500g未満の新生児でIPMが2.1時間, CSが4.6時間, 日齢4日以降では2,500g及びそれ以上の新生児でIPMが1.6時間, CSが2.6時間, 2,500g未満の新生児でIPMが1.5時間, CSが1.9時間であった。
    3. IPM, CS共に10mg/10mg/kg, 20mg/20mg/kg投与群の間で良好なDose responseが認められた。
    4. 尿中回収率は投与開始後6時間目までで, IPMが27.2~46.6%, CSが25.3~100.8%であつた。
    5. 臨床投与例は9例中7例で臨床的に著効あるいは有効であった。
    6. 副作用として肉眼的血尿と白血球及び血小板減少が1例, 好酸球増多が3例に認められたがいずれも重篤ではなく, 投与中止後に回復した。
    7. 本剤の抗菌スペクトラムはグラム陽性菌からグラム陰性菌, 嫌気性菌にまで広く及び, 今回の臨床的検討でも高い有効性が認められ, 且つ重篤な副作用も認められなかつたことから, 今後新生児期における細菌感染症, 特に耐性菌の感染症や複数菌感染症などの重症感染症の際に有用であると思われる。
  • 大倉 完悦, 春田 恒和, 金本 太珍, 小林 裕
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1715-1720
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児8例, 乳児2例, 計10例の感染症を, Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS)1回10.2~37.7mg/kg (IPM量) を, 1日2~3回, 1時間点滴静注にて治療した。又, うち新生児5例において血中濃度, その1例で髄液中濃度も測定した。
    1. 対象疾患は肺炎5例, 尿路感染症, 臍炎, 髄膜炎の疑い, 肛門周囲膿瘍, 敗血症の疑い各1例であった。細菌性と判断できなかったため効果判定から除外した髄膜炎の疑い例を除く9例に対する臨床効果は, 著効4例, 有効5例で, 無効例はなかつた。5例から検出された起炎菌6株 (Staphylococcus aureus2株, Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Streptococcus agalactiae, Bacteroides fragilis各1株) はすべて除菌された。
    2. 副作用として, 発疹1例, 血小板, 網状赤血球減少, GOT, GPT上昇を伴う出血斑1例, 検査値異常として, 他にGPT上昇, GOT, GPT上昇を各1例に認めた。いずれも軽度か, 又は本剤中止あるいは投与終了後正常化した。
    3. 本剤約20mg/20mg/kg1回1時間点滴静注後の血中濃度は, 点滴静注終了時3例平均IPM 41.3μg/ml, CS 60.9μg/ml, 10.2mg/10.2mg/kgではそれぞれ20.3, 32.2μg/ml, 37.3mg/37.3mg/kgではそれぞれ72.7, 127μg/mlで, 用量依存性が認められた。IPMの半減期は1.14~1.99時間, 一方, CSは日齢による差が著しく, 0~3日例では3.27~5.02時間とIPMより長く, 10, 24日例では0.88, 0.86時間と当該例のIPMより短かつた。
    4. 1例で測定した37.3mg/37.3mg/kg1時間点滴静注1時間後の髄液中濃度は, IPM 3.90μg/ml, CS 6.0μg/mlであった。
    5. 更に例数を増して検討する必要があるが, 以上の成績は新生児期の単独の初回選択剤として, 本剤が有用である可能性を示唆するものと思われた。
  • 由良 二郎, 神谷 保廣, 鈴木 達也, 村田 行孝, 成田 洋, 鶴賀 信篤
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1721-1730
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児外科領域におけるImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) の体内動態及び臨床的安全性, 有効性について検討を行つた。
    1. 10mg/kg (IPM量, 以下同様) 又は20mg/kgの投与で点滴静注終了時に十分な血中濃度が得られ, その後漸減した。
    2. 胆汁中移行は比較的良好で有効な濃度が得られた。
    3. 術後感染予防投与例では全例感染性合併症はなく, 又, 副作用, 検査値異常は認めなかつた。
    以上の成績から, 本剤は小児科領域において有効且つ安全な抗生物質であると思われる。
  • Imipenem/Cilastatin sodium周産期感染症研究会
    松田 静治, 鈴木 正明, 王 欣暉, 石川 睦男, 相馬 彰, 高田 久士, 清水 哲也, 牧野田 知, 藤本 征一郎, 千村 哲朗, 森 ...
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1731-1741
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は今回, Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) の周産期感染症における基礎的・臨床的検討を行った。
    1. IPM/CSは臍帯血及び羊水へ良好な移行を示した。一方, 母乳への移行は他のβ-ラクタム系抗生物質と同様, わずかであった。
    2. 周産期感染症の81例に使用した結果16例に著効, 62例に有効で, 有効率は96.3%であつた。又, 予防投与の6症例に対しても有効であつた。
    3. 分離された82株中69株が消失, 8株が減少した。特に, Enterococcus faecalis13株では12株が消失していた。
    4. IPM/CSを投与した109例中, 副作用として1例に嘔吐が認められた。臨床検査値異常はどの症例にも認められなかった。
    以上から, IPM/CSは周産期領域における有効且つ安全な抗生物質と考えられ, その投与量については通常0.5g/0.5g1日2回で十分と思われるが, 重症例には1g/1g1日2回も考慮すべきであろう。
  • 石川 睦男, 相馬 彰, 高田 久士, 水上 明保, 北村 晋逸, 清水 哲也
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1742-1750
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 妊婦30例を対象にImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) 500mg/500mgを点滴瀞注し, 母体血, 臍帯血, 羊水及び卵膜への移行と, 更に妊婦4例については, 母体血及び羊水への経時的移行性についても検討し, 以下の結果が得られた。
    (1) 分娩直前の妊婦に投与されたIPM母体血中の生物学的半減期は30分であった。
    (2) 臍帯血へのIPMの移行については, 30分で母体血中濃度の約70%という胎児移行を示した。
    (3) IPMの羊水への移行は比較的速く, 45分で1μg/ml以上となり, 約90分で母体血中レベルに達した。
    (4) 羊水中のIPMの経時的変化は約90分で母体血中レベルを上回り, 以後漸増傾向を示した。
    (5) IPMは羊水へ急速に移行するため, 卵膜への移行については, 17分ですでに3.96μg/gという高い値を示したことから, 本剤は胎盤以外にも卵膜を介しての羊水への直接移行の可能性を示唆した。
    2. 12例の周産期感染症において, 著効3例, 有効7例, 無効1例, 判定不能1例という成績であり, 副作用としては1例で嘔吐を認めた。
  • 千村 哲朗, 森崎 伸之, 平山 寿雄, 松尾 正城
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1751-1757
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) の周産期の妊娠・産褥期各種感染症に対する有効性と安全性を検討し以下の成績を得た。
    1. 子宮内感染 (子宮内膜炎) 12例, 羊水感染3例, 産褥熱2例, 血栓性静脈炎1例, 産褥外陰部膿瘍1例, 産褥腟壁血腫の感染1例の計20例を対象とした。投与量はIPMとして1回0.5~1gの点滴静注とし, 総投与量は1.5~15gであった。
    2. 疾患別臨床効果では, 著効4例/20例 (20%), 有効16例/20例 (80%) で有効率は100%であつた。前投与薬の無効症例10例に対しても全例有効であった。
    3. 細菌学的効果では, 菌陰性化4例, 減少1例, 菌交代6例であった。
    4. 本剤投与による自他覚的副作用, 臨床検査値の異常は全例に認められなかった。
  • 張 南薫, 福永 完吾, 國井 勝昭, 小林 寅詰, 手塚 孝一
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1758-1773
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    周産期におけるImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) の臨床応用に関し, 基礎的並びに臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    羊水中での細菌の増殖曲線に及ぼすIPMの殺菌効果を検討し, Staphylococcus aureus (感受性株及び耐性株), Escherichia coli (感受性株) に対し, IPMが羊水中で抗菌力を増強することを認め, 特にMIC値の高い菌に対し, 著明な殺菌効果の増強を認めた。
    IPM/CSの妊婦投与後の吸収は速やかであり, 点滴静注後短時間内に血漿中濃度はピークに達した。経胎盤的胎児移行は良好で, 1回500mg/500mgの点滴静注で主な感染起炎菌に対するMIC値に達する臍帯血漿中, 羊水中濃度が得られた。これらの成績からIPM/CSは1回500mg/500mg1日2回の点滴静注で, 周産期感染症の治療又は予防が可能であることを認めた。
    産褥期感染症の治療にIPM/CSを投与し, 臨床効果を認め, 副作用はなかった。
    以上の諸成績から, 周産期におけるIPM/CSの臨床的有用性が示唆された。
  • 松田 静治, 鈴木 正明, 王 欣暉
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1774-1777
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々はImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) を産婦人科周産期感染症の症例に使用し, その有効性と安全性を検討し, 以下の結果を得た。
    1. 産褥子宮内感染7例, 腎盂腎炎3例の計10例にIPM/CSを1回0.5g/0.5gを1日2回点滴静注した。著効1例, 有効9例, 有効率100%の成績であつた。
    2. 細菌学的効果は8例から分離された14株の検出菌について検討した。12株が消失したが, 2株は存続。菌消失率は85.7%であった。
    3. IPM/CSを投与した10例, 及びその後に出生した新生児のいずれにも副作用, 臨床検査値異常を認めなかつた。
  • 伊藤 邦彦, 和泉 孝治, 高木 博, 玉舎 輝彦, 早崎 源基
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1778-1785
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    今回はImipenem/Cilastatin sodium (IPMICS) の産婦人科領域での有用性を評価するため, 特に周産期の症例で基礎的検討 (乳汁中移行濃度測定) 及び臨床的検討を行った。
    基礎的検討では, 本剤500mg/500mg30分点滴静注で1時間ごとに6時間まで本剤の乳汁中移行濃度を測定したが, セファロスポリン系抗生物質投与時と同様の傾向を示した。
    臨床的検討では, 5例の産褥子宮内感染及び3例の尿路感染に本剤500mg/500mg30分点滴静注1日2回又は3回の投与を行つた。軽症から中等症の症例であつたが8例全例有効であつた。
    これらのことから, 周産期の感染症にも本剤は有用となると思われる。
  • 舘野 政也
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1786-1791
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 11例の子宮内感染を主体とする周産期感染症及び3例の乳腺炎にImipenem/Cilastatin sodiumを使用し1例の著効, 11例の有効例を認め, 有効率は85.7%であった。
    2. 臨床検査値異常, 副作用は1例にも認められなかった。
  • 山元 貴雄, 保田 仁介, 金尾 昌明, 岡田 弘二
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1792-1796
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科周産期領域において, Imipenem/Cilastatin sodium (IPMICS) の臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    産褥子宮内感染5例, 産褥熱2例, 計7例の産婦人科周産期感染症にIPMICSを投与した。
    臨床効果は有効6例, 無効1例, 有効率85.7%であつた。
    細菌学的には, 分離された9株中消失7株, 存続2株で, 菌消失率は77.8%であった。
    副作用並びに臨床検査値異常の発現は全例において認められなかった。
  • 平林 光司, 岡田 悦子
    1988 年 41 巻 11 号 p. 1797-1804
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗生物質の合剤Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) について周産期の患者を対象として基礎的・臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
    1. 13例の患者にIPM/CS500mg/500mgを30分間で点滴静注した後の臍帯血及び羊水への移行濃度を母体血中濃度と共に測定した。その結果, 臍帯血ではIPM及びCS共に点滴静注終了後1時間に母体血の約30%の移行が認められ, その後漸減するが, その低下は母体血中濃度より緩徐で, 約2時間以後では母体血中濃度を上回る値が観察された。又, 羊水中への移行は両剤とも臍帯血よりはるかに遅れ, 5~6時間後にピークがみられたが, IPMは母体血中濃度の約30%, CSでは45%の移行が観察された。
    2. 10例の感染症患者にIPM/CS500mg/500mgを1日2回朝夕に30分間以上かけて点滴静注した。臨床効果は著効6例, 有効4例で有効率100%と優れた成績が得られた。細菌学的には19株の投与前分離菌が, 投与後に1株を除いて消失したが, 1例でEnterococcus sp. の新たな出現が認められた。副作用, 臨床検査値の異常は何ら認められなかった。
    以上の成績から, 本剤は周産期の各種感染症に対しても安全に使用できる有用性の高い薬剤と思われる。
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