The Japanese Journal of Antibiotics
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周産期におけるImipenem/Cilastatin sodiumの基礎的・臨床的検討
平林 光司岡田 悦子
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1988 年 41 巻 11 号 p. 1797-1804

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抄録

新しいカルバペネム系抗生物質の合剤Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) について周産期の患者を対象として基礎的・臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
1. 13例の患者にIPM/CS500mg/500mgを30分間で点滴静注した後の臍帯血及び羊水への移行濃度を母体血中濃度と共に測定した。その結果, 臍帯血ではIPM及びCS共に点滴静注終了後1時間に母体血の約30%の移行が認められ, その後漸減するが, その低下は母体血中濃度より緩徐で, 約2時間以後では母体血中濃度を上回る値が観察された。又, 羊水中への移行は両剤とも臍帯血よりはるかに遅れ, 5~6時間後にピークがみられたが, IPMは母体血中濃度の約30%, CSでは45%の移行が観察された。
2. 10例の感染症患者にIPM/CS500mg/500mgを1日2回朝夕に30分間以上かけて点滴静注した。臨床効果は著効6例, 有効4例で有効率100%と優れた成績が得られた。細菌学的には19株の投与前分離菌が, 投与後に1株を除いて消失したが, 1例でEnterococcus sp. の新たな出現が認められた。副作用, 臨床検査値の異常は何ら認められなかった。
以上の成績から, 本剤は周産期の各種感染症に対しても安全に使用できる有用性の高い薬剤と思われる。

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