The Japanese Journal of Antibiotics
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[最新の抗菌薬XXXIII] Flomoxef
清水 喜八郎
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1988 年 41 巻 12 号 p. 1809-1821

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抄録

Flomoxef (FMOX, 6315-S) はLatamoxef (LMOX) に続いて塩野義製薬研究所で開発されたオキサセフェム系の注射用広域抗生物質である。
いわゆる第3世代のβ-ラクタム系抗生物質は第1, 第2世代の抗生物質に比べて, グラム陰性菌に対する抗菌活性が非常に優れている反面, グラム陽性菌, 特に黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性が低い。 FMOX はグラム陰性菌に対する抗菌力を第3世代抗生物質なみに, グラム陽性菌に対する抗菌力は第1, 第2世代抗生物質より優れたものを目標に, オキサセフェム核の7位と3位の化学修飾が行われ, 又, 安全性の面からは, ジスルフィラム (アンタブース) 様作用と腎毒性のないことを指標に開発検討されたものである1~17)。
その化学構造は図1のとおりであり, オキサセフェム骨格の7位側鎖にジフルオロメチルチオアセチル基を, 3位側鎖にはヒドロキシエチルテトラゾールチオメチル基を有する。
FMOXはグラム陰性菌(緑膿菌を除く)及び嫌気性菌に広い抗菌スペクトルを示すだけでなくグラム陽性菌 (腸球菌を除く) にも強い抗菌作用を示すβ-ラクタム系抗生物質である。 特に, 一部のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) にも抗菌力を示し, 既存の各種セフェム系抗生物質に比べ, より強い抗菌力を有する。又, ほとんどのβ-ラクタマーゼに対しても安定で, β-ラクタマーゼ産生の耐性菌に優れた抗菌力を示す。
本邦において, 昭和59年から全国規模の研究会を組織し, 基礎的・臨床的検討が開始され, その成績は第34回日本化学療法学会総会において新薬シンポジウムとして発表された18)。
以下に, その後の臨床成績も含め, FMOXの概要を述べる。

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