The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるSultamicillin細粒の臨床的検討
伊藤 節子真弓 光文三河 春樹
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1988 年 41 巻 12 号 p. 1914-1922

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抄録

ファイザー社で開発されたSulbactam (SBT) とAmpicillin (ABPC) とをエステル結合させた経口抗生剤Sultamicillin (SBTPC) 細粒の有効性と安全性について, 生後6カ月から10歳 4カ月の男児16例, 女児15例の計31例を対象として検討し, 次のような結論を得た。
1. 本剤10mg/kgを食後1回経口投与した吸収, 排泄試験では, 血清中濃度のPeakは投与後1時間にあり, ABPCは3.94μg/ml, SBTは4.08μg/mlであつた。血中濃度半減期は ABPCが64.8分, SBTが63.6分, 尿中回収率は6時間でABPCが66.2%, SBTが60.4% であつた。
2. 気管支炎1例, 気管支肺炎9例, 扁桃炎7例, 猩紅熱4例, 咽・喉頭炎1例, 中耳炎 1例, 化膿性耳下腺炎1例, 伝染性膿痂疹3例, 膿疱症1例, 頭部痴1例, 臀部膿瘍1例, 尿路感染症1例の計31例に対し, 本剤を1日投与量として, 26.1~31.6mg/kgを3~4回に分割して経口投与した。臨床効果は著効20例, 有効10例, 無効1例で, 有効率は96.8% であつた。
3. 臨床的副作用として1例に下痢が認められたが, 検査値異常は認められなかつた。
4. 本剤のβ-Lactamase高度産生株に対するMIC分布はStaphylococcus aureus 4株に対して1.56μg/ml2株, 3.13μg/ml1株, 12.5μg/ml1株, Escherichia coli及びKlebsiella pneumoniae各1株に対するMICはそれぞれ0.78μg/ml, 3.13μg/mlであつた。
5. 本剤は小児科領域の細菌感染症に対して, 広い適用範囲を持っABPCの特性にSBTのβ-Lactamase阻害作用を合せ持つことにより優れた抗菌力を示し, しかも安全性も高く, 有用な薬剤であると考える。

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