The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児期感染症に対するCeftriaxoneの臨床評価
大倉 完悦山本 初実山岡 幸司久保 桂子光吉 出春田 恒和小林 裕
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1988 年 41 巻 2 号 p. 152-164

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抄録

新生児におけるCeftriaxone (CTRX) の血中, 髄液中濃度及び臨床使用成績を検討し, 以下の成績を得た。
1. 本剤静注1時間後の血中濃度は, 約10mg/kg投与の2例で平均39μg/ml, 約20mg/kg投与の2例で平均70μg/ml, 52.6mg/kg投与の1例では208μg/mlと, 用量依存性が認められ, 24時間でも3.7~12.4μg/ml残存しており, これら5例の新生児での半減期は7.13~10.6時間であつた。なお, 生後53日の43.4mg/kg静注例では1時間値140μg/ml, 半減期3.68時間の値を得た。別の日齢0~5日の5例に17.3~20.0mg/kg静注36時間後の血中濃度は4.6~13.7μg/mlであった。
2. Escherichia coli髄膜炎例で49.6mg/kg静注4時間後の髄液中濃度は治療開始翌日9.7μg/ml, 3, 4, 5日それぞれ23.6, 25.2, 31.0μg/mlと上昇, 以後漸減したが, 22日目の回復期でも5.8μg/mlの値が得られ, ピーク値では起炎菌に対するMICの1,000倍, 最低値でも100倍を遙かに超えていた。
3. 13例の新生児, 3例の乳児に本剤1日11.0~39.5mg/kgを1回又は2回に分割静注した。治療に用いた10例, 11疾患 (敗血症1疾息, 肺炎4疾息, 尿路感染症4疾患, 胎児愚染症2疾患) ではすべて有効以上で, 起炎菌 (Streptococcus agalactiae1株, E. coli3株, Klebsiella pneumoniae2株, Citrobacter diversus1株) はすべて消失した。感染予防に使用した6例では, いずれも感染はおこらなかつた。他に新生児E. coli髄膜炎1例に49.6mg/kgを1日2回静注し, 著効を得た。
4. 副作用は全くみられなかった。検査値異常として,軽度の好酸球増加を4例に認め, 1例は追跡できなかったが, 他の3例では次回の検査で正常化していた。
5. 本剤の抗菌域, 抗菌力を考慮すると, 以上の成績は新生児期感染症に対する本剤の適性を示すものであり, 特に起炎菌判明前の選択剤として極めて有用と考えられた。

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