The Japanese Journal of Antibiotics
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小児急性感染症分離菌の各種経口抗菌剤に対する感受性の検討
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1988 年 41 巻 7 号 p. 841-853

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抄録

小児急性感染症から分離された起炎菌のうち主要菌種について, 経口用抗菌剤12薬剤の抗菌力を測定し, 又, Streptococcus pyogenesについてはT型別との関連についても検討した。
1.Streptococcus aureusに対してはRokitamycin (RKM), Josamycin, Ofloxacin, Minocyclineの抗菌力が強く, 又, 耐性株も少なかつた。Erythromycin (EM) では他のMacrolide系抗生剤 (MLs) より耐性株が多く, 又, Amoxicillin (AMPC) も耐性株が多かつた。
2. S. pyogenesに対しては, β-Lactam系抗生剤 (β-Lactam) 及びRKMはいずれもMIC80が0.20μg/ml以下であり, 又, 耐性株も認められなかつた。他のMLsも耐性株は2株 (2.0%) みられただけであつた。Tetracycline系抗生剤 (TCs) では耐性株が高率に認められ, T型別でみると, T-4, T-6, T-12型及びT-28型では, いずれも71.4%以上の株がTCsに耐性であつた。T-12型の全21株中MLs耐性株は1株4.8%だけであり, このことからMLs耐性株の減少はT-12型株の減少によるものではなく, プラスミド性MLs耐性因子の脱落によるものと推定された。
3. Streptococcus pneumoniaeではと同様β-Lactam及びMLsの抗菌力が優れ, TCsでは耐性株が高率であった。
4. Branhamella catarrhalisではNew quinolone系抗菌剤 (Quiholone) の抗菌力が優れ, EM, RKMがこれに次いだが, Quinoloneでは耐性化が進行しつつあるように思われた。
5. Haemophilus influenzaeでは, Quinoloneが耐性株も少なく, 抗菌力も強かつた。AMPCがこれに次いだが, 耐性株が約10%認められだ。
6. Campylobacterspp. に対してはQuinolone及びMLsが優れており, いずれもMIC80は0.25μg/ml以下であり, 又, 耐性株もみられなかつた。Fosfomycin, TCsの抗菌力はやや劣り, β-Lactamは更に劣る抗菌力であつた。
7. Mycoplasma pneumoniae及びChlamydia trachomatisでは検討株数は少ないが, MLs, TCsが有効と推察された。
以上のように各薬剤の抗菌力は菌種ごとに大きな差が認められ, 小児感染症の治療にあたつては, その原因菌が何かを充分考慮の上, 薬剤を選択する必要があると思われた。

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