The Japanese Journal of Antibiotics
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41 巻, 7 号
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  • 上田 泰
    1988 年 41 巻 7 号 p. 761-781
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ticarcillin (TIPC) は1964年英国ビーチャム社研究所で開発された注射用半合成ペニシリン剤で, 化学構造の上でCarbenicillia (CBPC) の6位置換部分のPhenyl基を3-Thienyl基に置換することにより緑膿菌に対する抗菌作用をより優れたものにした化合物である(Fig. 1)1)。
    本剤はCBPC, Sulbenicillin (SBPC) と同様, グラム陽性菌, グラム陰性菌だけでなく嫌気性菌にまで幅広い抗菌スペクトルを示し, その作用は殺菌的で, Escherichia coliPseudomonas aeruginosaに対する抗菌力 (MIC) はCBPCやSBPCよりも2管ほど優れている2, 8)。
    我国における本剤の開発研究は1975年から臨床的検討が全国的規模で開始され, その一部は1977年6月に第25回日本化学療法学会総会の新薬シンポジウム4) において発表され, その詳細はChemotherapy誌のTicarcillin論文特集号5) として掲載されている。又, 本剤は世界各国において広く臨床で使用され, 又, 悪性腫瘍, 白血病, 糖尿病, 心不全, その他の易感染性の基礎疾患に合併した感染症に対しても有用な抗生剤であることが指摘されている6)。
    TIPCを含むβ-Lactam系薬剤は, 広い抗菌スベクトルと高い安全性の面から世界的に臨床の場で広く使用されてきているが, 一方ではβ-Lactamase産生などによる耐性菌の出現という問題も起つている7)。この耐性菌対策として1974年英国ビーチャム社研究所でClavulanic acid (CVA) が開発された (Fig. 2)8)。このCVAは, それ自身の抗菌力が弱いため単独では抗生剤として使用できないが, β-Lactamaseを強力に阻害するために, β-Lactam系薬剤との併用によつて抗菌力を増強する作用を持ち8), すでにAmoxicillinとの合剤はAugmentin®として臨床的に広く使用されている9)。TIPCとの合剤については, BRL 28500 (Clavulanic acid-Ticarcillin) 10) として我国においても基礎的, 臨床的に検討されており, その結果は第33回日本化学療法学会総会の新薬シンポジウムにおいて発表されている11)。
    本論文では, TIPC及び耐性菌対策として開発されているTIPCとCVAの15:1の配合剤BRL28500についてその概要を記する。
  • 上田 泰, 松本 文夫
    1988 年 41 巻 7 号 p. 782-796
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Nornoxacin (NFLX) は1977年に, 杏林製薬 (株) 中央研究所で開発された初の広範囲キノロン剤であり, その化学構造はFig. 1のとおりである。本剤はキノロンカルボン酸の6位にフッ素を, 7位にピベラジンを導入することによつて, 従来のキノロン剤に比べ, グラム陽性菌にまで抗菌スペクトラムが拡大され, グラム陰性菌に対する抗菌力も一段と増強された。特にみPseudomonsa aeruginosa, Serratia marcescensに対する抗菌力は強く, 本剤はNalidixic acid (NA) 耐性グラム陰性菌, Gontamicin (GM) 耐性P. aeruginosa, Ampicillin (ABPC) 耐性Staphylococcus aureusに対しても強い抗菌力を有する。
    本剤は経口使用により主に小腸で吸収されるが, 各臓器への移行は良好であり, ほとんど代謝されることなく, 未変化体のまま尿中及び胆汁中に排泄される。
    本剤に関する基礎的・臨床的検討成績は, すでに第28回日本化学療法学会総会の新薬シンポジウム (1980年6月東京) 及び第20回インターサイエンス抗菌薬・化学療法会議 (1980年10月ニューオリンズ) で発表され, その有用性が評価されている。その後検討された臨床成績とNFLXの特徴は次のとおりである。
  • 酒井 敦史, 岩崎 正和, 鈴木 忠清, 森下 真孝, 村西 昌三
    1988 年 41 巻 7 号 p. 797-808
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    幼若ラットに200mg/kgの14C標識ロキタマイシン (14C-RKM) を経口投与し, RKMの幼若動物での体内動態を研究した。
    RKMは投与後30分に最高血液中濃度を示し, 平均最高濃度は20.25μg/mlであった。又, その時の血液中濃度曲線下面積 (AUC) は93.23μg・hr/mlであつた。
    RKMのin vivoでのタンパク結合率は幼若ラット, 成熟ラット共に約30%であつた。RKMは広く組織に分布し, 肝臓, 腎臓, 肺臓, 脾臓, 膵臓, 骨髄及び顎下腺などに高濃度移行した。
    幼若ラットの血漿, 尿及び胆汁中に検出された主な代謝物は10-OH-RKM, Leucomycin A7, Leucomycin V及び14-OH-Leucomycin Vであった。
    RKM経口投与後144時間までに投与量の約97%が尿中及び糞中に排泄された。又, 胆管カニューレを施したラットに十二指腸内投与した場合, 投与後24時間までに投与量の7.42%が尿中へ, 25.66%が胆汁中へ排泄された。
    ロキタマイシン (RKM) の吸収, 分布, 代謝及び排泄はすでに成熟ラット及び成犬において検討されている1~3)。
    今回, 著者らはRKMの小児科領域での臨床使用に先立ち14C標識RKM (14C-RKM) 投与後の幼若ラットにおける吸収, 分布, 代謝及び排泄を検討した。
  • 成犬との比較
    酒井 敦史, 安田 紀子, 遠藤 里子, 鈴木 忠清, 森下 真孝
    1988 年 41 巻 7 号 p. 809-812
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    幼若犬にロキタマイシンを絶食下50mg/kg経口投与し, 幼若動物での体内動態を成犬と比較検討した。
    幼若犬では投与後15分に6.53μg/mlの最高血漿中濃度に達し, 血漿中濃度曲線下面積 (以下AUC値) は11.04μg・hr/mlであつた。一方, 成犬では投与後30分に8.62μg/mlの最高血漿中濃度を示し, AUC値は18.25μg・hr/mlであつた。すなわち, 幼若犬での薬物の血漿中濃度推移は成犬の場合に比べ最高濃度で約75%, AUC値で約60%であつた。
    幼若犬での尿中排泄率は, 投与後24時間までに投与量の2.55%であつた。成犬での排泄率は同時間帯で3.03%であることから, 幼若犬での尿中への薬物排泄率は成犬の場合の約85%であった。
  • 鈴木 忠清, 酒井 敦史, 太田 勝利, 遠藤 里子, 安田 紀子, 森下 真孝, 石岡 忠夫
    1988 年 41 巻 7 号 p. 813-822
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児用製剤であるロキタマイシン・ドライシロップ (RKM dry syrup) の吸収及び排泄に関する試験を小児における胃液酸度をよく反映した比較的胃液酸度の高い健常人を対象に実施した。
    同一投与量でRKM dry syrupとロキタマイシン錠 (RKM tablet) を空腹時経口投与し, 血漿中濃度及び尿中排泄を比較したところ, RKM dry syrup投与群の最高血漿中濃度及び台形法により算出された血漿中濃度時間曲線下面積 (AUC) はRKM tablet投与群の約84%及び86%であつた。又, 投与後8時間までのRKM dry syrup投与群の尿中排泄率はRKM tablet投与群のそれの約80%であり, RKM dry syrupのバイオアベイラビリティーはRKM tabletと同様に良好であると考えられた。
    RKM dry syrupを300, 500mg力価及び800mg力価, 空腹時経口投与したところ, 極めて良好な用量依存性が認められた。
    空腹時経口投与において, 同系抗生物質である酢酸ミデカマイシン・ドライシロップ (MOM dry syrup) と比較したところ, RKM dry syrup投与群のAUC及び尿中排泄率はMOM dry syrup投与群のそれらの3~4倍高い値を示した。
  • その消化管に対する副作用発現の可能性
    伊藤 漸
    1988 年 41 巻 7 号 p. 823-829
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    マクロライド系抗生物質の一つであるRokitamycin (RKM) の消化管に対する副作用を検討するために, RKMの1.0, 3.0mg/kg及び9.0mg/kgを直接十二指腸内に投与し, Force transducer慢性縫着犬で胃体部, 胃前庭部, 十二指腸及び上部空腸の収縮運動に対する作用を検討した。対照剤としてErythromycin (EM 0.3, 1.0mg/kg及び3,0mg/kg) 及びKitasamycin (LM 1.0, 3.0mg/kg及び9.0mg/kg) を用いた。
    その結果, RKM 3.0mg/kg及び9.0mg/kgの十二指腸内投与で薬剤を投与した十二指腸だけに分節運動を惹起した。その持続時間は3.0mg/kg投与では7.5±2.5分であり, 9.0mg/kgでは15.8±3.0分であり, 収縮力は空腹期収縮の43~82%であつた。EM投与では0.3mg/kg投与で典型的な空腹期収縮を引起し, それ以上の投与量では空腹期収縮が遷延した。それに反し, LM投与では9.0mg/kg投与で十二指腸においてだけ, 若干認められる程度であつた。RKMの十二指腸に対する作用が血中に吸収されたRKMによる可能性を否定するために, RKM 3.0mg/kgを静脈内に注射したが, 消化管収縮運動に対し何ら作用のないことがわかつた。このことから, RKM十二指腸内投与による作用はRKMの十二指腸に対する直接作用と考えられる。以上の事実から, 結論的にはRKMはEMの持っような消化管に対する刺激作用はないと考えられるので, 本剤の治療用量の経口投与による消化管に対する副作用はないものと判断する。
  • 副島 林造, 日野 二郎, 中川 義久, 岸本 寿男, 松本 明
    1988 年 41 巻 7 号 p. 830-835
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいマクロライド系抗生物質であるRokitamycin (RKM) についてChlamydia psittaci及びChlamydia trachomatisに対するMICを測定し, 更にRKM添加後の形態学的変化を電子顕微鏡により観察した。
    1. C. psittaci MP株及び患者飼育インコから分離した3株に対するRKMのMICは, いずれも0.05~0.10μg/mlであり, C. trachomatis B, E, L2株に対するMICも0.20~0.39μg/mlでMinocycline (MINO), Doxycycline, Rifampicinには劣るが, Erythromycin, Midecamycinには勝る成績であつた。
    2.C. pdiyysciIZAWA株及びC. trachomatisL2株にMIC 2倍相当のMINO 0.05μg/mlあるいはRKM 0.20μg/mlを添加した場合, 封入体内部に基本小体や中間体の形成は全く認められず, 網様体も正常より大きくなり, 内部の細胞質成分も不規則な分布を示していた。
  • YOSHIKAZU TASAKA, MASARU SUMI, YOSHIHITO NIKI, RINZO SOEJIMA
    1988 年 41 巻 7 号 p. 836-840
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    The ability of antibiotics to enter cells, especially phagocytic cells, may be an important factor affecting therapy for infections caused by organisms which survive and proliferate intracellularly. It is well known that macrolides and clindamycin have high intracellular penetration ability1-4). We studied the uptake of rokitamycin (RKM), a new oral macrolide, using rabbit alveolar macrophages and 2 other macrolides for comparison. Intracellular concentrations of erythromycin and josamycin were, respectively, approximately 20 and 40 times higher than extracellular concentrations when they were incubated at an initial extracellular concentration of 5 μg/ml (I/E=20.1±2.6, 40.8±7.4). In comparison to these 2 macrolides, the uptake of RKM was massive and very rapid. The cellular concentration of RKM was approximately 120 times higher than the extracellular concentration. Uptake of the 3 macrolides by rabbit alveolar macrophages at 4° was approximately 10% of that at 37°. This study demonstrated that RKM was rapidly and massively accumulated by alveolar macrophages, and that the drug accumulation depends on temperature. These observations suggest that RKM therapy may be very effective for the treatment of some infectious diseases.
  • 藤井 良知, 篠崎 立彦, 目黒 英典, 有益 修, 吉岡 一, 藤田 晃三, 坂田 宏, 丸山 静男, 我妻 義則, 福島 直樹, 高瀬 ...
    1988 年 41 巻 7 号 p. 841-853
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児急性感染症から分離された起炎菌のうち主要菌種について, 経口用抗菌剤12薬剤の抗菌力を測定し, 又, Streptococcus pyogenesについてはT型別との関連についても検討した。
    1.Streptococcus aureusに対してはRokitamycin (RKM), Josamycin, Ofloxacin, Minocyclineの抗菌力が強く, 又, 耐性株も少なかつた。Erythromycin (EM) では他のMacrolide系抗生剤 (MLs) より耐性株が多く, 又, Amoxicillin (AMPC) も耐性株が多かつた。
    2. S. pyogenesに対しては, β-Lactam系抗生剤 (β-Lactam) 及びRKMはいずれもMIC80が0.20μg/ml以下であり, 又, 耐性株も認められなかつた。他のMLsも耐性株は2株 (2.0%) みられただけであつた。Tetracycline系抗生剤 (TCs) では耐性株が高率に認められ, T型別でみると, T-4, T-6, T-12型及びT-28型では, いずれも71.4%以上の株がTCsに耐性であつた。T-12型の全21株中MLs耐性株は1株4.8%だけであり, このことからMLs耐性株の減少はT-12型株の減少によるものではなく, プラスミド性MLs耐性因子の脱落によるものと推定された。
    3. Streptococcus pneumoniaeではと同様β-Lactam及びMLsの抗菌力が優れ, TCsでは耐性株が高率であった。
    4. Branhamella catarrhalisではNew quinolone系抗菌剤 (Quiholone) の抗菌力が優れ, EM, RKMがこれに次いだが, Quinoloneでは耐性化が進行しつつあるように思われた。
    5. Haemophilus influenzaeでは, Quinoloneが耐性株も少なく, 抗菌力も強かつた。AMPCがこれに次いだが, 耐性株が約10%認められだ。
    6. Campylobacterspp. に対してはQuinolone及びMLsが優れており, いずれもMIC80は0.25μg/ml以下であり, 又, 耐性株もみられなかつた。Fosfomycin, TCsの抗菌力はやや劣り, β-Lactamは更に劣る抗菌力であつた。
    7. Mycoplasma pneumoniae及びChlamydia trachomatisでは検討株数は少ないが, MLs, TCsが有効と推察された。
    以上のように各薬剤の抗菌力は菌種ごとに大きな差が認められ, 小児感染症の治療にあたつては, その原因菌が何かを充分考慮の上, 薬剤を選択する必要があると思われた。
  • 福島 直樹, 我妻 義則, 高瀬 愛子, 石川 丹, 服部 司
    1988 年 41 巻 7 号 p. 854-858
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ロキタマイシン (RKM) ドライシロップの臨床的有効性について検討した。症例は2歳2カ月から, 15歳6カ月までの22例である。有効以上の臨床効果を得た割合を有効率とすると, 1日投与量における有効率は20~29.9mg/kg/日で72.7%, 30~39.9mg/kg/日で85.7%であった。又, 疾患別では, 急性気管支炎, 気管支肺炎によい臨床効果を得た。全体の臨床効果の有効率は68.2%であつた。疾患背景として, 気管支喘息を有している症例の有効率は54.5%で, 喘息を有していない症例の有効率81.8%より低かつた。
    以上の結果から, RKMドライシロップは, 呼吸器惑染症を中心とした小児の感染症の治療に有効な薬剤の一つであると考えられた。
  • 斎藤 明, 渡辺 章
    1988 年 41 巻 7 号 p. 859-862
    発行日: 1988年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 小児科領域の呼吸器感染症15例にRokitamycinドライシロップを投与し2例で著効, 10例で有効, 1例でやや有効, 2例で無効であつた。
    2. Stretococcus pneumoniae及びマイコプラズマ肺炎に対しては, 有効率100%を示した。
    haemophilus influenzaeに関しては, 7例中1例でやや有効, 1例で無効であつた。
    4. 副作用は特に認められず, 服用性についても問題はなかつた。
    5. 小児科領域の日常診療レベルの呼吸器感染症において, 第1選択剤としで有用性があると思われた。
  • 南谷 幹夫, 八森 啓, 金田 一孝
    1988 年 41 巻 7 号 p. 863-870
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    東洋醸造株式会社により新しく開発されたマクロライド系抗生物質であるRokitamycin (TMS-19-Q, RKM) ドライシロップを小児急性感染症22例に使用し, その臨床効果について検討した。1. 吸収, 排泄については, 4歳2カ月女児 (体重16.5kg), 8歳7カ月男児 (体重24.5kg) に対し, それぞれRKM 10mg/kg, 15mg/kgを経口投与し血漿中濃度を測定したところ, ピークは投薬後それぞれ1時間後0.84μg/ml, 30分後0.72μg/mlで, T1/2は0.86時間, 1.82時間であつた。投与後6時間までの尿中累積回収率はそれぞれ2.79%, 2.13%であった。
    2. 臨床使用成績では, 急性咽頭炎3例, 急性扁桃炎1例, 溶連菌感染症4例, 急性気管支炎7例, 肺炎2例, 百日咳2例, キャンピロバクター腸炎1例の計20例に使用し, 18例有効 (90.0%) であった。
    3. 細菌学的効果ではRKM投与前に起炎菌が陽性であつた12例の投薬後菌検索で菌消失5例, 菌減少3例, 菌不変3例で, 菌効果不明1例を除いた除菌率は45.5%であつた。
    4. 副作用調査では, 自他覚的なものは認められず, 血液検査で異常なく, 血液生化学検査においてGPT軽度上昇1例を認めただけであった。
  • 柳川 幸重, 藤田 昌宏, 早川 浩
    1988 年 41 巻 7 号 p. 871-874
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は原疾患のある症例の感染に対しRokitamycin (RKM, TM319-Q) を使用した。原疾患のある症例では概して予防的な意味から抗生物質が多用される傾向があり, その結果として発熱時には耐性菌が起炎菌となっていることも多い。しかし今回の我々の症例ではRKMはEB vimsが原因の1症例を除き著明な効果を示した。
  • 久野 邦義, 中尾 吉邦, 山本 直樹, 早川 文雄, 石川 秀樹, 木村 宏, 竹内 秀俊
    1988 年 41 巻 7 号 p. 875-884
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい経口用マクロライド系抗生物質であるRokitamycinのドライシロップ製剤につき小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1. 本剤を10mg小kg2例, 20mg/kg1例の計3例の小児に朝食前30分に投与し, その後の血漿中濃度, 尿中回収率につき検討した。3例とも血漿中濃度のピーク値は投与後30分にあり, 用量依存性がみられた。半減期は1.5~2.2時間で, 投与後0~6時間までの尿中回収率は1.75~2.26%であった。
    2. Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Haemophilus parainfluenzae, Campylobacter jejuni等の当科臨床分離株に対する抗菌力 (MIC) をMidecamycin acetate (MOM), Josamycin (JM), Erythromycin (EM) と比較した。すべてMOM, JMより優れ, EMよりやや劣る成績であった。
    3. 28例の小児各種感染症 (急性扁桃炎4例, 溶連菌感染症4例, 急性気管支炎9例, 肺炎4例, マイコプラズマ肺炎2例, キャンピロバクター腸炎5例) に本剤12~42.9mg/kg小日を原則的に1日3回に分け食前に投与した。臨床的には92.9%の有効率, 細菌学的には58.6%の除菌率であった。
    4. 副作用は臨床的には認められず, 臨床検査値異常として血小板増多2例, 好酸球増多が1例にみられただけであった。
    5. 本剤の服用を拒否する児はいなかった。
  • 岩井 直一, 宮津 光伸, 中村 はるひ, 片山 道弘, 笠井 啓子
    1988 年 41 巻 7 号 p. 885-900
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたMacrolide系抗生物質, Rokitamycin (RKM) の小児用Dry syrup剤について, 基礎的, 臨床的検討を行った。
    1. 小児5例 (6~10歳) に本剤10mg小kgを食前30分及び食後30分に服用させた際の血漿中濃度と尿中排泄をCrossoverで検討した。血漿中濃度は, 食前投与では1/2時間0.16~0.85μg/ml (平均0.50±0.26μg/ml), 1時間0.13~0.71μg/ml (平均0.43±0.22μg/ml), 2時間N. D.~0.31μg/ml (平均0.15士0.12μg/ml), 4時間N. D.~0.11μg/ml (平均0.03±0.05μg/ml), 6時間N. D. で,食後投与では各々0.07~0.18μg/ml (平均0.11±0.05μg/ml), 0.09~0.23μg/ml (平均0.15±0.05μg/ml), N. D.~0.13μg/ml (平均0.09±0.05μg/ml), N. D.~0.08μg/ml (平均0.03±0.04μg/ml), N. D. であった。又, 0~6時間の尿中回収率は前者では0.15~2.42% (平均1.41±0.95%), 後者では0.46~1.30% (平均0.93±0.32%) であった. これらの成績から, 本剤は, 食後より食前投与の方がより吸収が速やかで, 高い血漿中濃度推移が得られることが推測された。又, 10mg/kg食前投与の血漿中濃度推移は, 成人にRKM錠を2錠投与した場合の推移とほぼ一致した。従って, 小児に対しては, 原則として1回10mg/kgを1日3回, 空腹時に投与するのが適当であると考えられた。
    2. 小児期感染症39例 (1カ月~11歳3カ月) に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討を行った。
    臨床効果の判定対象となった急性咽頭炎2例, 急性化膿性扁桃腺炎12例, 急性気管支炎1例, 急性肺炎9例 (Mycoplasma 肺炎3例), 急性化膿性リンパ節炎1例, 急性化膿性中耳炎2例, 百日咳1例, 急性腸炎2例に対する臨床効果は著効17例, 有効11例, やや有効2例であり, 著効と有効を含めた有効率は93.3%であった。又, 原因菌の判明した7例から分離されたStreplococcus pyogenes 4株, Haemophilus influenzae 3株に対する細菌学的効果は, S. pyogenes 1株が消失, 残る6株が存続であり, 除菌率は14.3%であった。更に, 副作用及び臨床検査値異常については, 認められた症例はなく, 服薬拒否や服用困難を訴えた症例もなかった。以上の成績から, 本剤は, 菌種によっては除菌効果に若干の問題があるものの, 臨床効果については, 従来からMacrolide系抗生物質が第1次適応と考えられてきた感染症を含め, 小児期の各種感染症に高い有効性が得られ, 安全性においても問題のない薬剤であると考えられた。
  • 西村 忠史, 田吹 雄, 青木 繁幸, 高木 道生
    1988 年 41 巻 7 号 p. 901-913
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい16員環Macrolide系抗生物質Rokitamycin (RKM, TMS-19-Q) の小児科領域における基礎的並びに臨床的検討を行い, 下記の成績を得た。
    基礎的検討として, RKMの血中濃度及び尿中排泄率を測定した。RKM 5mg/kgを空腹時に投与した揚合, 2例の平均では, 濃度ピークは投与後30分にあり, 平均0.30μg/mlで, 半減期は2.0時間, 6時間までの尿中排泄率は平均1.85%であった。一方, 10mg/kg, 15mg/kgの投与量でも各々2例の検討を行い, いずれも濃度ピークは投与後30分にあり, 各々平均0.79μg/ml, 平均1.32μg/mlであった。なお, 半減期は10mg/kg投与で平均1.65時間, 15mg/kg投与では平均1.36時間で, 6時間までの尿中排泄率は各々平均1.35%及び平均2.28%であった。
    臨床的検討は急性及び化膿性扁桃炎6例, 咽頭炎2例, 気管支炎4例, 気管支肺炎1例, Mycoplasma肺炎1例, 百日咳2例, 溶連菌感染症5例, Campylobacter賜炎5例, 伝染性膿痂疹3例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (SSSS) 1例の計30例について行い, 臨床効果は著効8例, 有効14例で, 有効以上は計22例で73.3%の有効率であった。又, 細菌学的効果はStaphylococcus aureus 4株, Streptococcus pneumoniae 1株, Streptococcus pyogenes 6株, Haemophilus influenzae 4株, Campylobacter 5株の計20株が検出されたが, S. aureus, S. pneumoniaeは全例, H. influenzae 1例, Campylobacter 4例に菌消失をみたが, 他は除菌できなかった。副作用は臨床症状, 所見及び検査所見の異常について検討したが, 本剤を中止するほどの重篤な異常は認めなかった。
  • 春田 恒和, 筒井 孟, 黒木 茂一, 大倉 完悦, 山本 初実, 鈴木 紀子, 小林 裕
    1988 年 41 巻 7 号 p. 914-919
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Rokitamycin (RKM, TMS-19-Q) dry syrupの吸収排泄及び臨床使用成績を検討し, 以下の結論を得た。
    1. 3例の小児に本剤10mg/kg1回経口投与後の血漿中濃度のピークは, 2例で30分にあり, それぞれ0.75,0.51μg/ml, 1例では1時間で0.21μg/ml, 4時間では3例とも0.07~0.08μg/ml, 6時間では検出不能となり, T 1/2は1.05~2.08時間であった。2例で検討した6時間までの尿中回収率は, それぞれ1.52, 1.11%であった。
    2. 24名25疾患に本剤1回7.14~12.5mg/kgを1日3~4回, 4~10日間投与した。
    対象疾息は扁桃炎12例, 気管支炎7例, 大腸炎3例, HaeMophIlus influenzae肺炎, Mycoplasma肺炎, 百日咳各1例で, 臨床効果は著効7例, 有効13例, 無効5例, 有効率80.0%, 細菌学的効果は, 起炎菌を検出し追跡できた17株のうち, 消失8株, 減少1株, 不変8株で, 消失率47.1%であった。
    3. 副作用例は1例もなく, 臨床検査値異常として, 1例に軽度の好酸球百分率, GOT, GPT値の上昇を認めただけであった。
    4. 非常に嫌がった1例はあったが, 拒否して投薬不可能だった症例はなく, 本剤の味と匂いは小児にかなり受入れやすいものと考えられた。
    5. 以上の成績から, 本剤は小児科領域において有用な新抗生物質と考えられた。
  • 本廣 孝, 荒巻 雅史, 織田 慶子, 川上 晃, 田中 耕一, 古賀 達彦, 藤本 保, 阪田 保隆, 山下 文雄, 鈴木 和重, 石井 ...
    1988 年 41 巻 7 号 p. 920-959
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発された16員環マクロライド系抗生物質 (MLs) のRokitamycin (RKM) は低酸下でも良好に溶解され, 吸収の個体差を改善した薬剤であることから, 1歳から14歳の小児43例についてGA-testを実施し, 低酸か無酸の頻度をみると共に, 臨床材料から分離したグラム陽性球菌のStreptococcus pyogenes 77株, Streplococcus agalactiae 29株, Streptococcus pneumoniae 2株, グラム陰性桿菌ではHaemophilus influenzaeとHaemophilus parainfluenzae 1株, Bordetella pertussis 12株, Salmonella sp. 4株, Campylobacter jejuni 103株, 計229株の接種菌量106cells/mlに対し, 保存株ではRKM, Erythromycin (EM), Josamycin (JM), Midecamycin (MDM), Midecamycin acetate (MOM), Clindamycin (CLDM), Amoxicillin (AMPC), Cefaclor (CCL), Minocycline, Onoxacin (OFLX) の10剤, RKM投与症例からの分離株ではRKM, EM, JM, MOMの4剤のMICを測定, 5歳1カ月から11歳6カ月の男児6例中各3例に本剤のドライシロップ各々5, 10mg/kgを食間に投与し, 血漿中, 尿中濃度及び尿中回収率を測定, 臨床効果の判定できなかった5例を除いた咽頭炎5例, 扁桃炎3例, 肺炎32例, マイコプラズマ肺炎17例, 溶連菌感染症28例, キャンピロバクター腸炎29例, 異型肺炎34例, サルモネラ胃腸炎4例, 起炎菌の分離されなかつた腸炎23例, 計175例に1日平均投与量31.8mg/kg, 分3か分4で, 平均9日間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果及び脱落症例を加えての副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
    1. GA-testによる小児43例の胃液酸度は42例97.7%が正酸か過酸すなわちHighで1例2.3%が低酸か無酸すなわちLowを示した。
    2. 薬剤感受性試験ではグラム陽性球菌中S. pyogenesの保存株52株に対するRKMのMIC90は0.05μg/ml以下で, AMPCに次ぐ抗菌力を示し, 他の8剤より優れ, RKMを投与した症例から分離した25株ではRKMのMIC90は0.39μg/mlで, EMに次いでよく, JMに類似し, MOMより優れた。S. agalactiaeの保存株29株に対するRKMのMIC90は0.20μg/mlで, AMPCに次ぐ抗菌力を示し, 他の8剤より優れた。RKMを投与した症例から分離されたS. pneumoniae 2株に対するRKMのMICは0.10μg/mlか0.20μg/mlを示し, JMと同等で, EMに次ぐ抗菌力を示し, MOMより優れた。グラム陰性桿菌ではRKMを投与した症例から分離したH. fnfluenzae, H. paroinfluenzae各1株に対するRKMのMICはEMに次いでよく, JM, MOMより優れた。B. pertussisの保存株12株ではRKMのMIC90は0.10μg/mlで, JM, MDM, MOM, OFLXとほぼ同等で, EM, MINOに次ぐ抗菌力を示し, CLDM, AMPC, CCLより優れた。RKMを投与した症例から分離のSalmonella sp. 4株に対するRKMのMICはいずれも100μg/ml以上で, EM, JM, MOMに類似した。C. jejuniの保存株に対するRKMのMIC90は0.78μg/mlで, OFLXとほぼ同等で, 他の8剤より優れ, RKMを投与した症例から分離の11株に対するRKMのMIC90は0.10μg/mlで, JM, MOMより優れ, EMに次ぐ抗菌力を示した。
    3. 5, 10mg/kgを投与した各3例におけるRKMの血漿中濃度はいずれの症例も投与30分後か1時間後に最高濃度に達し, 平均最高濃度は5mg/kg投与群では投与30分後で0.87μg/ml, 10mg/kg投与群では投与1時間後で0.39μg/mlを示し, 両投与群問にDose responseはみられず, 半減期は10mg/kg投与群の1例だけに算出でき2.0時間であった。
    4. 血漿中濃度を測定した同一症例での尿中濃度が最高濃度を示した時間は0~2時間か2~4時間で, 6時間までの平均尿中回収率は5mg/kg投与群では1例が4~6時間で排尿がなかったことから2例でみると0.57%, 10mg/kg投与群は0.77%であった。
    5. 臨床効果は咽頭炎5例中全例, 扁桃炎3例中2例, 肺炎32例中26例, マイコプラズマ肺炎17例中16例, 溶連菌感染症28例中全例, キャンピロバクター腸炎29例中全例が有効以上で, 有効率93.0%と優れた臨床効果を示した。
    なお, 参考までであるが異型肺炎34例中31例, サルモネラ胃腸炎4例中3例, 起炎菌不明の腸炎23例中全例が有効以上であった。
    6. 細菌学的効果は55例に判定でき47例で消失し, 消失率は85.5%であったが, 本剤の有効菌種ではないSalmonea sp. 2例を除外すると消失率は86.8%と良好であった。
    7. 副作用としては下痢が1例0.56%に出現, 服薬情況では180例中1例で投与することに吐き出す例があったが, 他の179例では本剤を嫌う症例はなかった。
    8. 臨床検査値異常では本剤と関連があるかもしれないとされた症例が好酸球増多で146例中6例4.1%, GOT, GPT, GOTとGPT, Creatinineで各1例に軽度異常上昇がみられ, いずれもRKMと関連があるかもしれないとされた.
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