新しく開発された16員環マクロライド系抗生物質 (MLs) のRokitamycin (RKM) は低酸下でも良好に溶解され, 吸収の個体差を改善した薬剤であることから, 1歳から14歳の小児43例についてGA-testを実施し, 低酸か無酸の頻度をみると共に, 臨床材料から分離したグラム陽性球菌のStreptococcus pyogenes 77株, Streplococcus agalactiae 29株, Streptococcus pneumoniae 2株, グラム陰性桿菌ではHaemophilus influenzaeとHaemophilus parainfluenzae 1株, Bordetella pertussis 12株, Salmonella sp. 4株, Campylobacter jejuni 103株, 計229株の接種菌量10
6cells/mlに対し, 保存株ではRKM, Erythromycin (EM), Josamycin (JM), Midecamycin (MDM), Midecamycin acetate (MOM), Clindamycin (CLDM), Amoxicillin (AMPC), Cefaclor (CCL), Minocycline, Onoxacin (OFLX) の10剤, RKM投与症例からの分離株ではRKM, EM, JM, MOMの4剤のMICを測定, 5歳1カ月から11歳6カ月の男児6例中各3例に本剤のドライシロップ各々5, 10mg/kgを食間に投与し, 血漿中, 尿中濃度及び尿中回収率を測定, 臨床効果の判定できなかった5例を除いた咽頭炎5例, 扁桃炎3例, 肺炎32例, マイコプラズマ肺炎17例, 溶連菌感染症28例, キャンピロバクター腸炎29例, 異型肺炎34例, サルモネラ胃腸炎4例, 起炎菌の分離されなかつた腸炎23例, 計175例に1日平均投与量31.8mg/kg, 分3か分4で, 平均9日間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果及び脱落症例を加えての副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1. GA-testによる小児43例の胃液酸度は42例97.7%が正酸か過酸すなわちHighで1例2.3%が低酸か無酸すなわちLowを示した。
2. 薬剤感受性試験ではグラム陽性球菌中S. pyogenesの保存株52株に対するRKMのMIC
90は0.05μg/ml以下で, AMPCに次ぐ抗菌力を示し, 他の8剤より優れ, RKMを投与した症例から分離した25株ではRKMのMIC
90は0.39μg/mlで, EMに次いでよく, JMに類似し, MOMより優れた。S. agalactiaeの保存株29株に対するRKMのMIC
90は0.20μg/mlで, AMPCに次ぐ抗菌力を示し, 他の8剤より優れた。RKMを投与した症例から分離されたS. pneumoniae 2株に対するRKMのMICは0.10μg/mlか0.20μg/mlを示し, JMと同等で, EMに次ぐ抗菌力を示し, MOMより優れた。グラム陰性桿菌ではRKMを投与した症例から分離したH. fnfluenzae, H. paroinfluenzae各1株に対するRKMのMICはEMに次いでよく, JM, MOMより優れた。B. pertussisの保存株12株ではRKMのMIC
90は0.10μg/mlで, JM, MDM, MOM, OFLXとほぼ同等で, EM, MINOに次ぐ抗菌力を示し, CLDM, AMPC, CCLより優れた。RKMを投与した症例から分離のSalmonella sp. 4株に対するRKMのMICはいずれも100μg/ml以上で, EM, JM, MOMに類似した。C. jejuniの保存株に対するRKMのMIC
90は0.78μg/mlで, OFLXとほぼ同等で, 他の8剤より優れ, RKMを投与した症例から分離の11株に対するRKMのMIC
90は0.10μg/mlで, JM, MOMより優れ, EMに次ぐ抗菌力を示した。
3. 5, 10mg/kgを投与した各3例におけるRKMの血漿中濃度はいずれの症例も投与30分後か1時間後に最高濃度に達し, 平均最高濃度は5mg/kg投与群では投与30分後で0.87μg/ml, 10mg/kg投与群では投与1時間後で0.39μg/mlを示し, 両投与群問にDose responseはみられず, 半減期は10mg/kg投与群の1例だけに算出でき2.0時間であった。
4. 血漿中濃度を測定した同一症例での尿中濃度が最高濃度を示した時間は0~2時間か2~4時間で, 6時間までの平均尿中回収率は5mg/kg投与群では1例が4~6時間で排尿がなかったことから2例でみると0.57%, 10mg/kg投与群は0.77%であった。
5. 臨床効果は咽頭炎5例中全例, 扁桃炎3例中2例, 肺炎32例中26例, マイコプラズマ肺炎17例中16例, 溶連菌感染症28例中全例, キャンピロバクター腸炎29例中全例が有効以上で, 有効率93.0%と優れた臨床効果を示した。
なお, 参考までであるが異型肺炎34例中31例, サルモネラ胃腸炎4例中3例, 起炎菌不明の腸炎23例中全例が有効以上であった。
6. 細菌学的効果は55例に判定でき47例で消失し, 消失率は85.5%であったが, 本剤の有効菌種ではないSalmonea sp. 2例を除外すると消失率は86.8%と良好であった。
7. 副作用としては下痢が1例0.56%に出現, 服薬情況では180例中1例で投与することに吐き出す例があったが, 他の179例では本剤を嫌う症例はなかった。
8. 臨床検査値異常では本剤と関連があるかもしれないとされた症例が好酸球増多で146例中6例4.1%, GOT, GPT, GOTとGPT, Creatinineで各1例に軽度異常上昇がみられ, いずれもRKMと関連があるかもしれないとされた.
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