The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児領域におけるCeftizoximeの基礎的, 臨床的検討
岩井 直一宮津 光伸片山 道弘種田 陽一中村 はるひ尾崎 隆男田内 宣生山口 英明
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1988 年 41 巻 8 号 p. 1087-1105

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抄録

新生児領域におけるCeftizoximeの基礎的, 臨床的検討を行つた。
1. 生後1~27日の新生児12例 (在胎週数35~41週, 生下時体重2,150~4,030g) と生後55~57日の乳児2例 (在胎週数39~40週, 生下時体重2,320~2,650g) に本剤20mg/kgをOne shot静注した際の血清中濃度と尿中排泄について検討した。
新生児の血清中濃度は静注後1/4時間が24.9~53.7μg/ml (平均40.6±7.6μg/ml) であり, その後は1.32~4.75時間 (平均2.60±1.06時間) の半減期をもつて推移し, 6時間値は2.01~14.6μg/ml (平均7.70±3.89μg/ml) であつた。又, 乳児では, 1/4時間値は42.0~46.2μg/ml (平均44.1±3.0μg/ml) で, 半減期は154~1.93時間 (平均L74±0.28時間), 6時間値は2.91~5.04μg/ml (平均3.98±1.51μg/ml) であった。更に, 6時間までの尿中回収率は, 前者では28.5~71.7% (平均49.3±12.8%), 後者では42.1~55.5% (平均48.8±9.5%) であった。
これらの成績から, 新生児の血清中濃度のピーク値(1/4時間値)は, 日齢には関係なく, 乳児や年長児とほとんど変らない値を示すこと, 又, 半減期は生後間もないものでは年長児の4~5倍と長いが, その後急速に短縮し, 生後2週頃には2倍前後となり, 乳児期前半ともなると年長児に近い値を示すようになること, 更に尿中排泄については, 目齢の若いものでは若干低い傾向にあるものの, 比較的早期から乳児や年長児に近い排泄能を有することが推測された。
2. 敗血症疑い3例, 急性肺炎14例, 急性気管支炎2例, 上気道炎3例, 急性尿路感染症4例, 急性化膿性中耳炎1例, 周産期感染症7例, 感染予防11例に本剤を投与し, 新生児期における有効性と安全性について検討を行った。
細菌の関与が否定された急性肺炎1例, 急性気管支炎1例, 上気道炎3例と, 感染予防の目的で投与された11例を除いた残り29例に対する臨床効果は著効15例, 有効13例, やや有効1例で, 有効率は96.6%であった。又, 細菌学的効果については, 原因菌と考えられたStaphlococcus aureus 3株,Streptococcus agalactiae 2株, Streptococcus pneumoniae 1株, Escherfchia coli4株, Pseudomonas aeruginosa 1株は, S.aureusの1株とP.aeruginosaを除き消失と判定され, 除菌率は81.8%であつた。更に, 副作用については, 下痢が1例に認められたが, 止痢剤の投与により改善された。臨床検査値異常としては, 血小板増多が1例, GOT及びGPTの上昇が1例, 好酸球増多が2例に認められたが, いずれも軽度であつた。
これらの成績から, 本剤は新生児期においても有効性と安全性の高い薬剤であると考えられた。

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