The Japanese Journal of Antibiotics
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近年の呼吸器感染症原因菌の動向と主要原因菌の抗生剤感受性
1984~1986年の3年間の検討
西岡 きよ荻原 央子井田 士朗滝島 任
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1988 年 41 巻 9 号 p. 1212-1222

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抄録

1984年から1986年の3年間の呼吸器感染症原因菌の動向を, 口腔内常在菌による汚染の少ない喀痰を培養した結果をもとにして示した。各年をとおして起炎菌の1位はHaemophilus influenzaeであり, Pseudomonas aeruginosa, Branhamella catarrhalisがこれに次ぎStreptococcus pneumoniaeは漸増傾向にある。これら4菌種で呼吸器感染症原因菌の70~74%を占めていた。これら主要4菌種の抗生剤感受性測定結果の概略を以下に示す。
1. H. influenzae
β-Lactamase陽性菌の頻度が1984, 1985年の15~16%から1986年は8.6%と減少し, ペニシリン系のMIC90値も低下している。被検薬剤の中ではCefmenoxime (CMX), Cefotaxime (CTX) が最も抗菌力が強く, 他のセフェム剤や新キノロン剤も耐性化はなかつた。
2. S. pneumoniae ベンジルペニシリンに耐性菌はなく, Ampicillin, Piperacillin, CMX, CTXも一様に強い抗菌力を示した。Minocycline (MINO) 及び新キノロン剤はMIC50, MIC90共に高く, これら薬剤を使用中に本菌が分離された例が多くみられたことを裏付けている。
3. B. catarrhalis約80%の株がβ-Lactamase陽性であつた。被検薬剤中ではLatamoxefが最も抗菌力が強いが, 他のセフェム系, 新キノロン剤, Erythromycin, MINOも耐性化はみられなかつた。
4. P. aeruginosa β-ラクタム剤のよりいつそうの耐性化と, 新キノロン剤耐性化が注目された。新キノロン剤の呼吸器感染への使用に際してはS. pneumoniaeへの菌交代や, P. aeruginasaの慢性感染において容易に耐性化がおこるなどの新たな問題が出ている点について今後の注意が必要である。

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