注射用Cephem系抗生物質Ceftriaxone (CTRX) について全国規模の研究会を組織し, 新生児・未熟児における基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
1. 吸収・排泄
(1) 新生児105例に10mg/kg又は20mg/kgを静注した際の血中濃度は静注30分後にそれぞれ36~42μg/ml, 46~76μg/mlを示し, その後徐々に減衰し, 12時問後でもそれぞれ10~14μg/ml, 13~21μg/mlを示した。
(2) 血中濃度半減期 (T1/2) は成熟児・未熟児いずれも0~3日齢群で有意な延長がみられ, 特に0~3日齢の未熟児で長く, T1/2は17.1時間であつた。4~7日齢群と8~28日齢群のT1/2には差はみられなかつた。(3) 新生児80例の尿中排泄は静注後6時間までに約20%, 12時間までに約30%であり, 20mg/kg投与例の尿中排泄は10mg/kg投与例よりわずかながら遅い傾向であった。
2. 臨床成績
(1) 総症例168例中除外, 脱落例を除いた112例を効果判定対象例とし, 副作用については161例を対象とした。
(2) 効果判定対象例112例の内訳は, 生下時体重2,500g朱満の未熟児21例を含む男児57例, 女児55例, 年齢は生後28日以下の新生児が89例, 投与法はOne shot静注例が102例, 投与回数は1日2回投与が81例, 1日投与量は10~50mg/kgが97例であつた。
(3) 臨床効果は112例中起炎菌を確定し得た60例で著効31例, 有効23例, 有効率90.0%, 重篤な疾患では髄膜炎8例で87.5%, 敗血症11例で90.9%の有効率であった。又, 起炎菌を確定し得なかった52例では著効21例, 有効29例, 有効率96.2%であった。
(4) 細菌学的効果は60例から67株が分離され, そのうち細菌学的に判定し得た59株中55株 (93.2%) が消失した。
(5) 副作用は161例中下痢11例, 嘔吐2例, 発疹1例の計14例 (8.7%)に, 臨床検査値異常は好酸球増多14例, GOT上昇4例, 血小板増多3例等, 計25例 (16.4%) に認められた。
(6) CTRXの新生児・未熟児の標準用量は20mg/kgを生後0~3日齢は1日1回, 4日以後は1日2回とするのが良い。
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