The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児・未熟児におけるImipenem/Cilastatin sodiumの薬動力学的並びに臨床的検討
藤井 良知坂田 宏印鑰 史衛藤田 晃三丸山 静男吉岡 一柱 新太郎田島 剛中澤 進佐藤 肇成田 章松本 貴美子中澤 進一近岡 秀次郎神垣 昌人新納 憲司小佐 野満老川 忠雄城 裕之楠本 裕阿座上 志郎砂川 慶介石塚 祐吾堀 誠豊永 義清杉田 守正城 宏輔岩井 直一種田 陽一中村 はるひ西村 忠史田吹 和雄青木 繁幸小林 裕春田 恒和大倉 完悦本廣 孝荒巻 雅史織田 慶子川上 晃古賀 達彦阪田 保隆山下 文雄由良 二郎鶴賀 信篤神谷 保廣鈴木 達也
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1989 年 42 巻 4 号 p. 953-972

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抄録

新しいCarbapenem系抗生物質とDehydropeptidase-I inhibitorの等量合剤, Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) の新生児, 未熟児に対する共同研究の結果を報告した。
1. 新生児・未熟児に対するIPM/CSの10mg/10mg/kgあるいは20mg/20mg/kgの点滴静注時の血中濃度には用量相関が観察され, 最高血中濃度は点滴静注終了時にあった。
2. 血中濃度下面積はIPMよりCSが大きく, 且つ, 血中濃度半減期は日齢が低いほど, 又, IPMよりCSが延長していた。
3. 尿中回収率はIPMよりもCSが, 又, 日齢の経過につれ増加していた。
4. 臨床的検討では, 一般感染症113例, 感染予防32例に投与され, その投与量は9mg/9mg/kg/日から150mgμ50/mg/kg/日に分布していた。
5. 原因菌を検出し得たA群56例では, 敗血症10例, 髄膜炎2例を含め著効33例, 有効22例, やや有効1例と有効率98.2%であった。原因菌を検出し得なかったB群57例では, 子宮内感染症の5例も含め著効22例, 有効34例,やや有効1例であり, 有効率は98.2%と優れた成績であった。又, 感染予防投与には32例に使用したが, 全例感染の発生を認めず, 当初の目的を達していた。
6.56例について検討した細菌学的効果は菌消失52例, 減少2例, 存続1例, 不明1例であり, 菌消失率は94.5%であった。
7. 副作用は下痢2例, 発疹2例等160例中7例4.4%に観察された。又, 臨床検査値異常は好酸球増多10例 (6.3%), GOT・GPT上昇及び血小板増多各4例 (2.5%) 等159例中28例 (17.6%) にみられたが, いずれも重篤なものはなく一過性のものであった。又, 異常プロトロンビン (PIVKAII) の陽性例が10例のうち1例に観察された。
以上の基礎的・臨床的検討成績から, 新生児・未熟児へのIPM/CSの勧告投与量は目齢0~3日ではIPMとして1回10~20mg/kgを1日2回,日齢4~7日では1回10~20mg/kgを1日2~3回,日齢8日以上では1回10~20mg/kgを1日2~4回で, いずれも30~60分の点滴による静脈内投与とする。
Imipenem/Cilastatin sodium (IPMICS)(Fig.1) は, 米国メルク社で開発されたThienamycinの誘導体とRenal dipeptidase阻害剤が1:1で配合された注射用抗生物質である。

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