1989 年 42 巻 4 号 p. 953-972
新しいCarbapenem系抗生物質とDehydropeptidase-I inhibitorの等量合剤, Imipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) の新生児, 未熟児に対する共同研究の結果を報告した。
1. 新生児・未熟児に対するIPM/CSの10mg/10mg/kgあるいは20mg/20mg/kgの点滴静注時の血中濃度には用量相関が観察され, 最高血中濃度は点滴静注終了時にあった。
2. 血中濃度下面積はIPMよりCSが大きく, 且つ, 血中濃度半減期は日齢が低いほど, 又, IPMよりCSが延長していた。
3. 尿中回収率はIPMよりもCSが, 又, 日齢の経過につれ増加していた。
4. 臨床的検討では, 一般感染症113例, 感染予防32例に投与され, その投与量は9mg/9mg/kg/日から150mgμ50/mg/kg/日に分布していた。
5. 原因菌を検出し得たA群56例では, 敗血症10例, 髄膜炎2例を含め著効33例, 有効22例, やや有効1例と有効率98.2%であった。原因菌を検出し得なかったB群57例では, 子宮内感染症の5例も含め著効22例, 有効34例,やや有効1例であり, 有効率は98.2%と優れた成績であった。又, 感染予防投与には32例に使用したが, 全例感染の発生を認めず, 当初の目的を達していた。
6.56例について検討した細菌学的効果は菌消失52例, 減少2例, 存続1例, 不明1例であり, 菌消失率は94.5%であった。
7. 副作用は下痢2例, 発疹2例等160例中7例4.4%に観察された。又, 臨床検査値異常は好酸球増多10例 (6.3%), GOT・GPT上昇及び血小板増多各4例 (2.5%) 等159例中28例 (17.6%) にみられたが, いずれも重篤なものはなく一過性のものであった。又, 異常プロトロンビン (PIVKAII) の陽性例が10例のうち1例に観察された。
以上の基礎的・臨床的検討成績から, 新生児・未熟児へのIPM/CSの勧告投与量は目齢0~3日ではIPMとして1回10~20mg/kgを1日2回,日齢4~7日では1回10~20mg/kgを1日2~3回,日齢8日以上では1回10~20mg/kgを1日2~4回で, いずれも30~60分の点滴による静脈内投与とする。
Imipenem/Cilastatin sodium (IPMICS)(Fig.1) は, 米国メルク社で開発されたThienamycinの誘導体とRenal dipeptidase阻害剤が1:1で配合された注射用抗生物質である。