1989 年 42 巻 5 号 p. 1173-1193
新しく開発された注射用Cephem系抗生物質Cefbdizimeの小児科領域における基礎的, 臨床的検討を目的として研究会を組織し, 全国17基幹施設とその関連施設による協同研究を実施し, 以下の成績を得た。
1. 血中濃度, 尿中濃度
小児での体内動態は1回量20mg/kgを主として静注並びに30分, 60分点滴静注で検討した結果, 成人領域の成績とほぼ同様な結果が得られた。
静注10, 20, 40mg/kg投与の投与5分後の平均血中濃度はそれぞれ105.5, 264.0.461.7μg/mlの値を示した。又, T1/2(β)はそれぞれ1.75, 1.92, 1.88時間を示した。
30分点滴静注10, 20, 40mg/kg投与の点滴静注終了時の平均血中濃度はそれぞれ90.5, 178.3, 322.8μg/mlの値を示した。又, T1/2(β)はそれぞれ1.90,2.15, 1.93時間を示した。
60分点滴静注10, 20, 40mg/kg投与の点滴静注終了時の平均血中濃度はそれぞれ66.3, 136.0,259.2μg/mlの値を示した。又, T1/2(β)はそれぞれ1.43,2.05, 1.46時間を示した。
投与8時間後までの尿中排泄率は静注l0, 20, 40mg/kg投与でそれぞれ82.1, 77.7, 76.5%, 30分点滴静注10, 20, 40mg/kg投与でそれぞれ83.3, 71.3, 68.1%, そして, 60分点滴静注20, 40mg/kg投与でそれぞれ84.4, 84.3%であつた。
2. 髄液中濃度
髄液への移行は化膿性髄膜炎の場合, 6日以内の急性期では50mg/kg台投与で投与約1時間以後1.96~9.48μg/mlの濃度を示し, β-Lactam系抗生物質の中では中間的な移行性を示した。
3. 臨床成績
各種細菌感染症に対する本剤の効果判定解析症例は, 総症例の457例から, 除外・脱落例を除いた404例で行つた。
臨床効果は起炎菌が検出された221例では著効126例, 有効78例で有効率92.3%, 起炎菌が検出されなかつた183例では著効97例, 有効69例で有効率90.7%であつた。
起炎菌別細菌学的効果の延べ株数は, 起炎菌と判定された230株のうち213株が消失し, 92.6%の高い消失率を示した。
グラム陽性菌では, 特に, Streptococcus pneumoniaeは96.9%(32株中31株), Streptococcus pyogenesは100%(6株中6株)の高い消失率を示した。グラム陽性菌全体では84.2%(76株中64株)の消失率であつた。
他方, グラム陰性菌では, Branhamella catarrhalis(15株中15株), Bscherichia coli(21株中21株), Klebsiella pneumoniae(4株中4株), Haemophilus influenzae(82株中82株), そして, Proteus mirabilis(4株中4株)は, いずれも100%の高い消失率であり, グラム陰性菌全体では96.8%(154株中149株)の非常に高い消失率を示した。
起炎菌別臨床効果は221例中有効以上は204例で, 有効率92.3%の成績であつた。又, 2~3菌株による複数菌感染に対しても33例中有効以上は30例で, 90.9%の高い有効率を示した。
他剤無効症例に対する本剤の臨床効果は35例中有効以上は33例で, 94.3%の高い有効率を示した。