β-Lactam系抗生物質のCarbapenem系薬剤に属するImipenem(IPM)とDehydropeptidase-Iに対する阻害剤Cilastatin sodium(CS)が等量で配合された点滴静注用製剤IPM/CSを新生児4例,未熟児5例,計9例中4例にIPMとして10mg/kgを30分間かけて点滴静注, 5例にIPMとして10mg/kgを1時間かけて点滴瀞注し, 血漿中,尿中のIPMとCS濃度及び尿中回収率を測定, 2~26生日の化膿性髄膜炎2例と化膿性髄膜炎, 菌血症の1例では髄液中濃度についても測定した。0生日から30生日の新生児, 未熟児, 乳児の種々の細菌感染症24例と感染予防を目的として5例, 計29例に本剤を1日量平均50.1mg/kg,分2~4, 30分から1時間かけての点滴静注で, 平均9日間投与し, 臨床効果, 感染予防効果,細菌学的効果をみると共に脱落症例2例を加えた31例における副作用と臨床検査値への影響について検討したところ, 次のような結果を得た。
1. 新生児, 未熟児各2例にIPMとして10mg/kgを30分間かけて点滴静注で投与してのIPMとCSの血漿中濃度はすべての症例が投与終了時に最高濃度を示し, IPMでは22.4~29.0μg/ml, CSでは26.3~34.6μg/mlで, CS濃度がIPM濃度よりやや高かった。半減期はIPMでは1.05~2.43時間, CSでは1.24~4.76時間で,CSの半減期がIPMの半減期より長い傾向にあった。
新生児2例, 未熟児3例にIPMとして10mg/kgを1時間かけて点滴静注で投与してのIPMとCSの血漿中濃度は全例が投与終了時に最も高い濃度を示し, IPMでは20.8~23.9μg/ml, CSでは25.7~32.0μg/mlで, CS濃度がIPM濃度よりやや高かった。半減期はIPMでは1.40~1.63時間, CSでは1.51~2.90時間で, CSの半減期はIPMの半減期より長い傾向にあった。
2. 前述の本剤を30分間かけて点滴静注し, 血漿中濃度を測定した同じ新生児,未熟児各2例における尿中濃度はIPMでは投与開始後0~2時間, 2~4時間で各々1,3例が最も高濃度を示し, 183.0~993.7μg/ml, CS濃度では投与開始後0~2時間,2~4時間, 4~6時間で, それぞれ1.2, 1例が最高濃度を示し, 281.6~1,865.9μg/mlであった。投与開始後8時間までの回収率はIPMでは30.8~52.2%, CSでは63.2~99.4%で, CSの回収率がIPMの回収率より高率であった。
前述の本剤を1時間かけて点滴静注し, 血漿中濃度を測定した同一の新生児2例と未熟児3例における尿中濃度はIPMでは投与開始後2~4時間, 4~6時間で各々4, 1例が最も高い濃度を示し, 260.4~618.6μg/ml, CS濃度では投与開始後2~4時間,4~6時間で各々3, 2例が最も高濃度を示し, 302.8~553.1μg/mlで, 両剤の濃度は著しい違いがなかった。投与開始後8時間までの回収率はIPMで45.7~7.16%, CSで61.6~66.3%を示し, CSの回収率はIPMの回収率に比較し高い傾向にあった。
3. 化膿性髄膜炎2例, 化膿性髄膜炎,菌血症1例に本剤を投与しての髄液中濃度は13病日にIPMとして19.4mg/kg, 45分間かけての点滴静注例では投与終了10分後1PM濃度0.8μg/ml, CS濃度は検出限界以下, IPMの髄液・血漿比は2.3%であった。IPMとして35.7mg/kgを1時間かけて点滴静注した症例では3病日に安定化剤を加えずに投与終了直後の髄液中濃度を測定したところ, IPMとCS濃度はそれぞれ0.53,2.8μg/ml, 髄液・血漿比は各々3.1, 5.4%, 5病日に安定化剤を加え投与終了直後に髄液中濃度を測定したところ, IPMとCS濃度はそれぞれ1.47, 1.7μg/ml, 髄液・血漿比は各々4.3, 4.7%であった。9病日にIPMとして21.3mg/kgを1時間かけて点滴静注した症例では投与終了35分後に髄液中濃度を測定したところ, IPM濃度は3.4μg/ml, CS濃度は検出限界以下を示し,IPMの髄液・血漿比は8.2%であった。
4. 種々の細菌感染症24例に対する臨床効果はすべて有効以上, 5例に対する感染予防を目的とした投与では全例に効果が認められ,非常に優れた成績であった。
5. 細菌学的効果は
Staphylococcus aureus3株,
Escherichia coli2株,
Serratia sp. 1株,
Pseudomonas aeruginosa1株, 計7株に判定でき,
S. aureusの1株が減少した以外はすべて消失した。
6. 臨床効果及び感染予防効果が判定できた29例に脱落例2例を加えた31例では副作用の出現した症例はなく,臨床検査値異常としてGOTで2例に異常上昇がみられ,両症例共}ご本剤との関連があるかもしれないとされた。
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