The Japanese Journal of Antibiotics
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トブラマイシン血中有効抗菌濃度評価へのアプローチ
トブラマイシンディスク感受性結果評価システムの再評価とその定量的利用の臨床的意義
植手 玄洋松尾 清光植手 鉄男
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1989 年 42 巻 9 号 p. 1888-1899

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抄録

1. トブラマイシン (TOB) に対する各種臨床分離細菌のin vitroディスク感受性結果の信頼性について, 昭和ディスク (30μg含有), Difcoディスク (10μg含有) テストをMIC実測値と比較し考察した。更に3分類評価システムと4分類評価システムのいずれが臨床薬理的に優れているか吟味すると共に, TOBの投与量設定, その評価のためにディスク感受性結果からのMIC概値の推定の信頼性とその臨床的意義について究明した。加えてBritish Society for Antimicrobial Chemotherapyのin vitro MICの臨床利用の際のBreak POintsの新提案を上記ディスクを用いて吟味, 検討した。
2. 北野病院 (大阪市) において, 昭和60年1月から6月に至る間に, 臨床材料から無作為に分離された細菌261株を用い究明した。TOBのMIC実測値からすると, Staphytococcus aureusは分離株の32%が1.56μg/ml, 52%が12.5μg/mlで, Staphylococcus epidermidis は40%が6.25μg/mlで発育が阻止された。Enterococcus faecalisに対するMICは菌株の100%が25μg/ml以上であつた。Escherichia coliは84%が0.78μg/ml, 97%が1.56μg/mlで, Klebsiella pneumoniaeは90%が0.78μg/ml, Proteus mirabilisは90%が1.56μg/ml, Proteus vulgarisは67%が3.13μg/mlで発育が阻止された。Pseudomonas aeruginosaは76%が0.78μg/ml, 85%が3.13μg/ml, Serratia marcescensは20%が3.13μg/ml, Enterobacter aerogenesは85%が1.56μg/mlで発育が阻止された。
3. 昭和, Difcoディスク感受性結果とMIC実測値とはよい負の相関関係を示した。昭和ディスクテストの4分類評価法は (+++) MIC≤2μg/ml,(++) MIC>2~10μg/ml,(+) MIC>10~50μg/ml,(-) MIC>50μg/mlと設定されているが, 若干 (+++) 域にMIC 3.13~6.25μg/mlの菌株が含まれ, False positiveがみられた。同様に (++)(+) 域にもFalse positiveがみられ, 計6.1%がFalse positiveであつた。しかし, Difcoディスクテストの4分類評価法では昭和ディスクに比較し, False positive (3.1%) は少なかったが, MIC>25μg/mlの菌株はほとんど (-) 域に分布し,(+) 域の判定は不能であつた。British Society for Antimicrobial Chemothorapy提案のMIC break points 1μg/ml及び4μg/mlを昭和, Difcoディスク阻止円に設定する場合, 両ディスクと共にMIC 1μg/ml対する阻止円直径のBreak point設定では, MIC 1.56μg/mlの菌株の大半が, 又, MIC 3.13~6.25μg/mlの菌株若干がMIC 1μg/ml以下の領域にあった。しかし, MIC 4μg/mlに対する阻止円直径のBreak pointの設定では, 異常値を示した菌株はごくわずかで, 両ディスクとも正確な設定が可能であつた。

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