The Japanese Journal of Antibiotics
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42 巻, 9 号
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  • 千村 哲朗, 森崎 伸之, 斉藤 憲康
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1863-1867
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域における開腹手術 (子宮全摘術, 帝王切開術, 卵巣腫瘍摘出術) など43例に対し, Latamoxef (LMOX) 投与時の急性期反応物質 (Acute phase reactants, APR) の術後変動を検討し, 以下の成績を得た。
    1. APRとして母体血中のGranulocyte-elastase, α1-Antitrypsin (α1-AT), α1-Acidglycoprotoin, Haptoglobin, CRPの術後変動を測定した。子宮全摘術群でのこれら5マーカーは, 術後7日目に上昇し, 14日目に下降傾向を示した。手術侵襲に対する生体防御と回復過程での反応は, Granulocyte-elastase, α1-AT, CRPの変動が炎症性反応を即座に反映している。帝王切開術時のElastase, α1-ATの変動も同様であるが, 妊娠, 産褥時では全体として高値を示した。
    2. LMOX投与の術後感染予防効果は, 全例に術後合併症, 自他覚的副作用は認められず, その有用性が示唆された。
  • 森鼻 健史, 酒井 広志, 早川 大善
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1868-1872
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいピリドンカルボン酸系抗菌剤T-3262 (Tosufloxacin tosilate) についてラット唾液腺における移行分布を, 14C-T-3262を用いミクロオートラジオグラフィーにて検討した。
    顎下腺, 耳下腺では投与後1時間及び4時間共に腺組織全域にわたり良好な分布がみられたが, 舌下腺では1時間の分布が低かった。
    本法は薬剤の組織内での分布状態を細胞レベルで観察できる有用な方法であり, 又, 本剤の唾液腺における良好な分布は, 高い唾液中移行濃度を示唆するものである。
  • 菅田 文夫, 大栗 茂芳, 高邑 裕太郎, 富永 静男, 岩村 健一郎, 山田 拓司, 柴田 久雄, 山田 伸夫, 岡部 和彦, 加藤 行雄
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1873-1881
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤T-3262 (Tosufloxacin tosilate)の胆嚢炎に対する有用性を評価する目的で, 本剤の胆汁中移行及び臨床効果, 安全性の検討を行った。
    健康成人男子4名にT-3262を8時間ごと2日間投与し, 最終投与後10~11時間後にMELTZERLYON法によりA, B, C胆汁を採取し本剤の胆汁中濃度を調べた。4例中3例はA胆汁0.33~2.05μg/ml, B胆汁6.13~9.50μg/ml, C胆汁1.11~2.70μg/mlの値を示し, 血清中濃度0.28~0.41μg/mlよりもB胆汁で15~34倍の高い濃度が得られた。他の1例は血清中濃度が検出限界以下でB胆汁も0.132μg/mlと低値であった。
    胆嚢炎患者10名に本剤を1回150mg1日3回, 1~20日間経口投与し, 著効1例, 有効5例, やや有効2例, 判定不能2例, 有効率75%の臨床効果を得た。
    本剤投与前に胆汁中細菌検査を施行し得た3例から, Klebsiella pneumoniae, Enterococcus faecalis, Haemophilus parhaemolyticusが分離され, E. faecalisは消失したが, K. pneumoniaeは投与後存続した。H. parahaemolyticusは投与後検査未施行で判定不能であった。
    副作用は下痢, 心窩部痛各1例を認めたが, 投与中止によりいずれも数日内に軽快した。本剤によると思われる臨床検査値異常は認めなかった。
  • 樋上 哲哉, 小川 恭一, 麻田 達郎, 知花 幹雄, 向原 伸彦, 西脇 正美, 芳村 直樹
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1882-1887
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    成人開心術20例を, 麻酔導入時に点滴静注した1群 (n=11) と体外循環に2g追加投与したII群 (n=9) に分け, 心筋組織移行につき検討し, 以下の結論を得た。
    1. Cefuzonam (CZON) の心筋組織移行は非常に良好であり, 心筋組織内濃度はI, II群とも体外循環終了時においても臨床分離菌株80%発育阻止濃度 (MIC80) を十分に越え, 開心術時の感染予防に適すると考えられた。
    2. CZONの有効心筋組織内濃度は少なくとも6時間以上持続し, 通常の開心術における術中投与は, 麻酔導入時の2g点滴靜注 (I群) で十分であると考えられた。
  • トブラマイシンディスク感受性結果評価システムの再評価とその定量的利用の臨床的意義
    植手 玄洋, 松尾 清光, 植手 鉄男
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1888-1899
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. トブラマイシン (TOB) に対する各種臨床分離細菌のin vitroディスク感受性結果の信頼性について, 昭和ディスク (30μg含有), Difcoディスク (10μg含有) テストをMIC実測値と比較し考察した。更に3分類評価システムと4分類評価システムのいずれが臨床薬理的に優れているか吟味すると共に, TOBの投与量設定, その評価のためにディスク感受性結果からのMIC概値の推定の信頼性とその臨床的意義について究明した。加えてBritish Society for Antimicrobial Chemotherapyのin vitro MICの臨床利用の際のBreak POintsの新提案を上記ディスクを用いて吟味, 検討した。
    2. 北野病院 (大阪市) において, 昭和60年1月から6月に至る間に, 臨床材料から無作為に分離された細菌261株を用い究明した。TOBのMIC実測値からすると, Staphytococcus aureusは分離株の32%が1.56μg/ml, 52%が12.5μg/mlで, Staphylococcus epidermidis は40%が6.25μg/mlで発育が阻止された。Enterococcus faecalisに対するMICは菌株の100%が25μg/ml以上であつた。Escherichia coliは84%が0.78μg/ml, 97%が1.56μg/mlで, Klebsiella pneumoniaeは90%が0.78μg/ml, Proteus mirabilisは90%が1.56μg/ml, Proteus vulgarisは67%が3.13μg/mlで発育が阻止された。Pseudomonas aeruginosaは76%が0.78μg/ml, 85%が3.13μg/ml, Serratia marcescensは20%が3.13μg/ml, Enterobacter aerogenesは85%が1.56μg/mlで発育が阻止された。
    3. 昭和, Difcoディスク感受性結果とMIC実測値とはよい負の相関関係を示した。昭和ディスクテストの4分類評価法は (+++) MIC≤2μg/ml,(++) MIC>2~10μg/ml,(+) MIC>10~50μg/ml,(-) MIC>50μg/mlと設定されているが, 若干 (+++) 域にMIC 3.13~6.25μg/mlの菌株が含まれ, False positiveがみられた。同様に (++)(+) 域にもFalse positiveがみられ, 計6.1%がFalse positiveであつた。しかし, Difcoディスクテストの4分類評価法では昭和ディスクに比較し, False positive (3.1%) は少なかったが, MIC>25μg/mlの菌株はほとんど (-) 域に分布し,(+) 域の判定は不能であつた。British Society for Antimicrobial Chemothorapy提案のMIC break points 1μg/ml及び4μg/mlを昭和, Difcoディスク阻止円に設定する場合, 両ディスクと共にMIC 1μg/ml対する阻止円直径のBreak point設定では, MIC 1.56μg/mlの菌株の大半が, 又, MIC 3.13~6.25μg/mlの菌株若干がMIC 1μg/ml以下の領域にあった。しかし, MIC 4μg/mlに対する阻止円直径のBreak pointの設定では, 異常値を示した菌株はごくわずかで, 両ディスクとも正確な設定が可能であつた。
  • セファロチン昭和, Difco 1濃度ディスク評価システム (MIC break points) の再評価とその定量的利用の臨床的意義
    植手 鉄男, 松尾 清光
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1900-1912
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 本研究においてはセファロチン (CET) の血中有効濃度を得るため投与量設定, 評価へのディスク感受性結果の定量的利用の吟味, 検討を行つた。CET1濃度ディスク (昭和及びDifco) 阻止円直径の定量的評価, すなわち阻止円の大きさからMIC値の推定について, MIC実測値と比較して信頼性を究明した。加えて, ディスク感受性結果の定量的利用の際のMICbreak pointsの再評価を行つた。
    2. 昭和60年1月から6月に至る間に北野病院 (大阪市) において臨床材料から分離された細菌248株に対するCETのMIC実測値からするとStaphylococcus aureusは分離株の73%が1.56μg/ml以下で発育が阻止された。Staphylococcus epidermidisは分離菌株の73%が0.78μg/mlで発育が阻止された。Enterococcus faecalisに対するMICは25μg/ml以上であつた。Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisは分離株のそれぞれ86.7%, 76.7%が3.13μg/mlで, Escherichia coliは分離株の80%が6.25μg/mlで発育が阻止された。Proteus vulgaris, Pseudomonas aeruginosa, Serratia marceseens, Enterobacter aerogenesなどの大半の菌株に対するMICは25μg/ml以上であつた。
    3. 昭和ディスク及びDifcoディスクの阻止円直径とMICとはよい相関関係を示した。ディスク感受性結果を4分類法を用いて分類し, 両ディスクの精度を検討した。昭和ディスクの場合,(+++) 阻止円直径≥22mm, MIC≤3μg/ml,(++) 阻止円直径15~<22mm, MIC>3~15μg/ml,(+) 阻止円直径10~<15mm, MIC>15~60μg/ml,(-) 阻止円直径<10mm, MIC≥60μg/mlとメーカー提示のとおり設定した。Difcoディスクの場合次のとおり仮設定した。(+++) 阻止円直径≥21mm, MIC≤3μg/ml,(++) 阻止円直径13~<21mm, MIC>3~15μg/ml,(+) 阻止円直径8~<13mm,MIC>15~60μg/ml,(-) 阻止円直径<8mm, MIC>60μg/ml。昭和ディスク結果のFalse positiveは6.0%, False negativeは2.4%, Difcoディスク結果のFalse positive7.3%, False negativeは2.4%であつた。E. faecalisを判定から除外すると両ディスクともFalse positiveは減少し, ディスクテストの精度は向上した。
    4. 現在, CETの臨床利用価値は特にStaphylocoecus感染症治療にあると考えられる。Staphyloeoccusの多くの菌株に対してCETのMICは0.78~1.56μg/ml以下にあった事実, CETの通常投与量の血中薬動力学的レベルからしてMIC break pointsを約1.5, 3.0, 15.0μg/mlに設定するのが上記4分類法より一層有用と考えられる。本研究結果からCET30μg含有昭和, Difcoディスク阻止円直径へのこれらのBreak points設定は可能であつた。MIC1.5μg/mlのディスク阻止円直径のBreak pointは昭和約27mm, Difco約26mmにあつた。
  • 福田 恵一, 小林 芳夫, 半田 俊之介, 吉川 勉, 内田 博, 中村 芳郎
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1913-1918
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Methicnlin耐性ブドウ球菌 (MRSA) による感染性心内膜炎と, これに伴う大動脈弁閉鎖不全症にCefmetazole (CMZ) とFosfomycin (FOM) の併用療法を行い根治し得た症例を経験した。被検出菌はin vitroにおいてもDisc法及び平板法によりCMZとFOMの相乗効果がみられた。MRSA感染症において感染性心内膜炎のような重症感染症に対してもCMZとFOMの併用が有用であつたとの報告はなく, 両者の併用が相乗効果を持つことが確認できた希有な症例と考えられ報告した。
  • 森 巍, 小川 達博
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1919-1925
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    腟式子宮全摘除術を施行した症例を対象にCeftazidime (CAZ) の子宮組織内移行及び術後感染予防効果を検討し, 以下の結果を得た。
    1. CAZ29を点滴静注 (30分) した際の最高濃度は, 子宮腟部99.7μg/g, 子宮頚部83.4μg/g, 子宮体部筋層73.9μg/g, 子宮内膜70.1μg/gの順で高く, 卵巣, 卵管組織では各々116μg/g, 98.6μg/gであった。
    2. CAZ 3日間投与群 (7g) と他抗生剤5日間投与群 (10~20g) についてTotal fever indexで比較検討したところ, CAZ群1.8±3.1 degree hours, 他剤群1.8±2.8 degree hoursと全く差を認めなかった。
    3. 以上から, CAZは子宮組織内に良好な移行を示し, 又, 術後感染予防に対して高い有用性が示唆された。
  • 津田 昌一郎, 田中 新司, 中川 均, 西垣 光, 奥田 司, 堀池 重夫, 谷脇 雅史, 三澤 信一, 稲澤 譲治, 阿部 達生, 彌重 ...
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1926-1937
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    血液疾患に併発した重症感染症51例に対してAztreonam (AZT) とClindamycin (CLDM) の併用療法を施行し, その有効性と安全性を検討した。
    感染症の内訳で最も多い敗血症疑症例で高い有効率 (72.9%) を示し, AZT・CLDM投与前末梢血好中球数が100/mm3以下の状態でも58.3% (7例/12例) と良好な有効率であった。更に経過中に好中球が増加した群では90.9% (10例/11例) まで有効率が上昇し, 逆に, 好中球が減少した群でも63.6% (7例/11例) の有効性が得られた。
    又, 先行剤無効例においても75.0% (6例/8例) の有効性を認めた。一方, 副作用としては軽度の悪心しか認められず, 投与中止後速やかに消失した。以上から, AZT・CLDM併用療法は血液疾患に併発した感染症に対して安全で且つ非常に有用な化学療法であると考えられる。
  • 南谷 幹夫, 八森 啓, 金田 一孝
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1938-1947
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    富山化学工業 (株) により新しく開発された経口用エステル型Cephem系抗生物質であるCefteram pivoxil (CFTM-PI, T-2588) 細粒剤を小児急性感染症17例に投与し, その臨床効果と安全性及び体内動態について検討した。
    1. 4歳男児 (体重18kg) に本剤3mg/kgを食後経口投与し血清中濃度を測定したところ, ピークは投与2時間後の0.78μg/mlであり, 投与6時間後までの尿中排泄率は15.0%であった。
    2. 臨床使用成績では, 急性咽頭炎1例, 急性扁桃炎2例, 百日咳1例, 急性気管支炎1例, 気管支肺炎2例, 猩紅熱4例, 急性中耳炎3例, 頸部リンパ節炎1例, 包皮炎1例及び尿路感染症1例の計17例に使用し, 著効9例, 有効6例, やや有効1例, 無効1例で, 有効以上の効果を示したものは15例 (有効率88.2%) であった。
    3. 細菌学的効果では, CFTM-PI投与前に起炎菌が検出された9例 (Streptococcus pyogenes4例, Streptococcus pneumoniae2例, Haemophilus influenzae2例, Enterococcus及びBacteroides混合感染1例)の10株は, 本剤投与によりすべて除菌された。
    4.副作用調査では, 1例に軽度の下痢を認めたが, 無処置のまま継続投与が可能で, 6日目には下痢も消失した。本剤投与前後に測定し得た血液所見, 生化学所見とも異常値を認めなかった。
  • 佐藤 肇, 成田 章, 中澤 進一, 鈴木 博之, 松本 貴美子, 中西 好子, 新納 憲司, 中澤 進
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1948-1962
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    富山化学工業 (株) 綜合研究所で開発された新経口用エステル型Cephem系抗生物質Cefteram pivoxil (CFTM-PI, T-2588) の細粒製剤を小児科領域で基礎的・臨床的検討を行い以下の成果を得ることができた。
    1.5mg/kg食後内服後血中濃度のPeakは0.38μg/ml, 4時間く0.078μg/ml, T 1/2 (β) 1.55時間であった。3mg/kgのPeakは0.73~2.25μg/mlであった。6mg/kgのPeakは1.2~2.63μg/ml, 6時間0.12~0.62μg/ml, T1/2 (β) 0.80時間であった。血中濃度にDose response がみられ, 3mg/kg, 6mg/kg内服後6~8時間までの尿中回収率は投与量の10.8~24.7%であった。
    治療症例は計40例で急性呼吸器感染症が多かったが, 1日量8.7~12mg/kg, 4~11日間の投与で97.5%の臨床効果を得ることができた。各種材料から分離された起因菌の除菌率も96.0%であった。使用期間は6~8日間が多かった。
  • 岩井 直一, 中村 はるひ, 種田 陽一, 宮津 光伸, 笠井 啓子
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1963-1980
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく製剤化されたCefteram pivoxil (CFTM-PI, T-2588) の小児用細粒剤の小児期感染症における有効性並びに安全性について検討した。
    6カ月から14歳3カ月にわたる小児期感染症60例に対し, 本剤の3.2~9.9mg/kgを1 日3回, 3~11日間投与した際の臨床効果は急性咽頭炎3例はすべて著効, 急性化膿性扁桃腺炎21例は著効14例, 有効5例, 無効2例, 急性気管支炎3例は著効1例, 有効2例, 急性肺炎24例は著効16例, 有効8例, 急性尿路感染症4例は著効3例, 有効1例, 急性化膿性リンパ節炎2例はいずれも著効であり, 評価の対象となった57例に対する有効率は 96.5%と優れていた。
    又, 原因菌と考えられた細菌に対する細菌学的効果については, Streptococcus Pyogenes9株, Streptococcus pneumoniae3株, Haemophilus influenzae19株 (β-Lactamase産生株7株, 非産生株12株), Haemophilus parainfluenzae1株 (β-Lactamase産生株), Escherichia coli 4株 (β-Lactamase産生株1株, 非産生株3株) はS. Pyogenes1株が減少であった以外は消失と判定され, 除菌率は97.2%と優れたものであった。
    副作用は臨床的には3例に下痢, 1例に軟便がみられたが, いずれも軽度であり, 投与を継続することが可能であった。又, 臨床検査値異常については, 1例にGOTの上昇, 1例に血小板増多とGPTの上昇がみられた。なお, 服用拒否, 困難を訴えた症例は全くなかった。
    以上の成績から, 本剤は小児期においても有効性並びに安全性の高い薬剤であると考えられた。
  • 小児期におけるCefteram pivoxilについての薬動力学的検討
    中村 はるひ, 岩井 直一
    1989 年 42 巻 9 号 p. 1981-2003
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児におけるCefteram pivoxil (CFTM-PI) の小児用細粒剤, 及び低用量錠剤について, 吸収排泄を検討すると共に, 薬動力学的解析を加えた。
    1. 食事の影響をみた学童12例の同一症例における細粒剤の3mg/kg食前30分及び食後 30分服用後の検討では, 前者のTmaxは1.3±0.1時間, Cmaxは1.35±0.11μg/ml, T1/2は 1.21±0.07時間, 尿中回収率は13.4±1.5%で, 後者ではそれぞれ2.9±0.3時間, 1.08± 0.09μg/ml, 1.72±0.26時間, 23.3±2.2%であり, 食前投与の方がTmaxが早く, Cmaxは高かったが, 尿中回収率については食後投与の方が高く, 食事による影響がみられた。
    2. 用量依存性をみた学童6例の同一症例における細粒剤の3mg/kg及び6mg/kg食後30 分服用後の検討では, 前者のCmaxは1.50±0.26μg/ml, 後者では2.58±0.29μg/mlであり, 両者の推移には明らかなDose responseが認められた。
    3. 年齢による差異をみた学童18例, 幼児10例, 乳児6例における細粒剤の食後30分服用後の検討では, Tmaxは学童, 幼児, 乳児でそれぞれ2.8±0.3時間, 3.4±0.3時間, 2.0± 0.4時間であり, 乳児では若干早く得られる傾向がみられた。又, Cmaxについてはそれぞれ 1.22±0.11μg/ml, 1.03±0.12μg/ml, 0.94±0.15μg/mlであり, 学童, 幼児, 乳児の順に高い傾向がみられた。T1/2は各年齢層とも似た値をとったが, 学童において若干長い傾向にあった。更に尿中回収率については, 学童, 幼児, 乳児で各々21.5±1.8%, 19.3±2.0%, 7.6±0.1%であり, 乳児において明らかに低い値を示した。
    4. 小児用細粒剤と低用量錠剤の差異をみた学童6例, 及び3例の同一症例における4.0±0.2mg/kg食前30分及び5.2±0.4mg/kg食後30分服用後の成績では, 両剤形のTmaxは前者においてはほとんどかわらなかったが, 後者では細粒剤において若干遅れる傾向がみられた。Cmaxについては, 食前投与では細粒剤が1.30±0.25μg/ml, 錠剤が1.93±0.21μg/ml, 食後投与では各々1.93±0.27μg/ml, 2.77±0.5μg/mlであり, いずれにおいても錠剤の方が高い傾向が得られた。又, T1/2については, 食前投与, 食後投与共に, 両剤形に大きい差はみられなかった。更に尿中回収率については, 食前投与では細粒剤が11.4±2.5%, 錠剤が15.7±2.1%, 食後投与では各々20.7±2.9%, 29.7±9.0%であり, いずれにおいても錠剤の方が高い傾向があった。
  • 西村 忠史, 田吹 和雄, 高島 俊夫, 青木 繁幸, 高木 道生
    1989 年 42 巻 9 号 p. 2004-2015
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefteram pivoxil (CFTM-PI, T-2588) 細粒の小児科領域における基礎的並びに臨床的検討を行い, 下記の成績を得た。
    基礎的検討として, CFTM-PI細粒投与時のCFTM血清中濃度及び尿中排泄率を, CFTM-PI 1.5mg/kg, 3mg/kg, 6mg/kgを各々2例, 計6例の小児に空腹時に投与し検討した。CFTM-PI 1.5mg/kg, 3mg/kg, 6mg/kg投与時の血清中濃度推移の検討では, 平均濃度ピークはいずれの投与量でも投与後2時間にあり, 各々平均0.66±0.01μg/ml, 平均1.26±1.05μg/ml, 平均2.28±0.95μg/mlであった。半減期は各々, 平均1.07±0.52時間, 平均1.32±0.76時間, 平均2.53±1.70時間であった。尿中排泄率は投与後8時間まで検討し, CFTM-PI 1.5mg/kg, 3mg/kg, 6mg/kg投与時の平均尿中排泄率は, 各々平均19.0±4.0%, 平均9.4±1.5%, 平均 19.9±4.0%であった。
    臨床的検討は扁桃炎20例, 気管支炎3例, 気管支肺炎1例, 猩紅熱6例, 右第II指の膿瘍1 例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群1例, 尿路感染症3例, 腟炎1例の計36例について行った。臨床効果は著効22例, 有効14例で, 全例が有効以上の成績であった。又, 細菌学的効果は Staphylococcus aureus4株, Streptococcus pyogenes13株, Haemophilus influenzae6株, Escherichia coli3株の計26株が検出され, うち23株が消失, 2株が減少, 1株が不変であった。
    臨床症状び臨床検査値の異常については, 軟便をきたしたもの1例, 好酸球増多, GOT上昇を示したもの各々1例で, いずれも重篤なものではなかった。
  • 春田 恒和, 筒井 孟, 黒木 茂一, 仁紙 宏之, 小林 裕
    1989 年 42 巻 9 号 p. 2016-2022
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新経口用Cephalosporin系抗生物質Cefteram pivoxil (CFTM-PI) 細粒の小児における臨床使用成績を検討し, 以下の結論を得た。
    1. 17例に本剤1日9.5~31.8mg/kgを3回ないし4回に分割, 2~10日間経口投与し, うち14例について臨床効果評価可能であった。咽頭炎, 扁桃炎9例では著効4例, 有効5例, 無効例はなく, 肺炎2例は2例とも著効, 猩紅熱, 腎孟腎炎各1例は共に著効, 頚部化膿性リンパ節炎はやや有効, 計14例中著効8例, 有効5例, やや有効1例, 有効率92.9%という成績であった。
    2. 17例において臨床的副作用は認められず, 臨床検査値異常として血小板数増加が1例にみられただけであった。
    3. 本剤の味と匂いは十分小児に受け入れられるものと考えられた。
    4. 以上の成績から, 本剤は小児細菌性感染症に対して有用な経口抗生物質と考えられた。
  • 本廣 孝, 吉永 陽一郎, 織田 慶子, 荒巻 雅史, 川上 晃, 田中 耕一, 古賀 達彦, 冨田 尚文, 阪田 保隆, 山下 文雄, 高 ...
    1989 年 42 巻 9 号 p. 2023-2061
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefteram pivoxil (CFTM-PI) はCephem環の7位Acyl側鎖にAminothiazol基を導入した抗菌活性を有するCefteram (CFTM) の4位のカルボン酸をPivaloyloxymethyl基でエステル化し吸収を良好にした経口用Cephem系抗生物質である。本剤は経口投与後, 腸管から吸収され, 腸管壁のエステラーゼにより加水分解を受け, 活性体としてのCFTMは体液中に存在する。本邦ではその錠剤はすでに発売されているが, 小児用として新しく細粒が製剤化された。
    そこで, 当科で臨床材料から分離した保存株と本剤投与症例からの分離株, すなわちグラム陽性球菌ではStaphylococcus aureus11株, Streptococcus pyogenes85株, Streptococcus agalactiae16株, Streptococcus pneumoniae4株, グラム陰性桿菌ではHaemophilus influenzae11 株, Bordetella pertussis11株, Escherichia coli9株, Proteus mirabilisMorganella morganii各1株, 計149株の接種菌量106cfu/mlに対し, 保存株ではCFTM, Cephalexin (CEX), Cefaclor (CCL), Ampicillin (ABPC), Erythromycin (EM) の5薬剤, CFTM-PI 投与症例からの分離株ではCFTM, CEX, CCL, ABPC, Methicillin, Cloxacillinの6薬剤についての薬剤感受性試験を実施, 8歳3ヵ月から10歳10ヵ月の男児9例中各3例に本剤の細粒を各々1.5, 3.0, 6.0mg/kg, 食後30分に経口投与し, Bioassay法でCFTMの血清中濃度, 尿中濃度及び回収率を測定, 3.0mg/kg投与群では高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法で主な代謝物であるT-2525Aの尿中濃度と回収率を測定, 1生月から11歳6ヵ月の咽頭炎22例, 扁桃炎12例, 急性気管支炎3例, 肺炎11例, 胸膜炎1例, 猩紅熱28例, 急性化膿性中耳炎16例, 膿痂疹13例, 膿瘍2例, 化膿性リンパ節炎1例, 尿路感染症33例, 計142例に本剤の細粒を1回平均投与量3.3mg/kgを1日3回か4回 (3回は133例, 4 回は9例) で, 平均8日間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果及び副作用と臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
    1. 薬剤感受性試験ではグラム陽性球菌中CFTM-PIを投与した症例から分離のS. aureus11 株に対するCFTMのMICは1株以外は3.13μg/mlか6.25μg/mlで, CEXのMICに類似し, 他の4薬剤のMICよりやや大か大を示した。S. pyogenesの保存株50株ではCFTM のMIC90は0.025μg/mlで, ABPCに次ぐ優れたMICを示し, 他の3薬剤のMICより小であった。CFTM-PIを投与した症例から分離の35株に対するCFTMのMIC90は0.025μg/ml以下で, 保存株に対するMICと同じで, ABPCのMICとも同等を示し, 他の4薬剤のMICより小であった。S. agalactiaeの保存株16株に対するCFTMのMIC90ほ0.05μg/mlで, 他の4薬剤のMICより小であった。CFTM-PIを投与した症例から分離のS. pneumoniae4 株に対するCFTMのMICはすべての株が0.025μg/ml以下か0.05μg/mlを示し, ABPCのMICとほぼ同等で, 他の4薬剤のMICより小であった。
    グラム陰性桿菌中CFTM-PIを投与した症例から分離のH. influenzae11株に対するCFTM のMIC90は0.025μg/ml以下で, 他の5薬剤より優れたMICを示した。B. pertussisの保存株11株に対するCFTMのMIC90は0.78μg/mlで, EMに次ぐMICで, 他の3薬剤のMICより小を示す傾向にあった。CFTM-PIを投与した症例から分離のE. coli9株に対するCFTMのMICは全株が0.20μg/mlか0.39μg/mlで, 他の5薬剤のMICより小であった。CFTM-PIを投与した症例から分離のP. mirabili5とM. morganii各1株に対する CFTMのMICはそれぞれ1.56μg/ml, 0.39μg/mlで, 両株共に他の5薬剤のMICより小であった。
    2. CFTM-PI細粒1.5mg/kgと3.0mg/kg投与群におけるCFTMの平均血清中濃度はいずれも投与3時間後, 6.0mg/kg投与群では投与4時間後に最高濃度を示し, 各々0.62, 1.25, 2.18μg/mlで, 3投与量群間にDose responseがみられた。平均半減期はそれぞれ0.98, 1.24, 1.28時間であった。平均濃度曲線下面績 (AUC) は各々2.39, 5.36, 10.0μg・hr/mlで, 血清中濃度と同じく3投与量群間にDose responseが認められた。
    3. 血清中濃度を測定した同一の症例における平均尿中濃度は1.5mg/kg投与群では投与後 4~6時間, 3.0mg/kgと6.0mg/kg投与群では投与後2~4時間が最も高い濃度で, それぞれ 27.9, 83.0, 156.0μg/mlと投与量にみあった濃度を示し, 投与後8時間までの平均回収率は各々18.9, 20.2, 16.3%であった。
    4. CFTM-PIの主な代謝物であるT-2525Aの尿中濃度を3.0mg/kg投与の3例について HPLC法で測定したところ, いずれも投与後2~4時間が最高濃度を示し, 平均2.16μg/mlで, Bioassay法での尿中CFTM濃度との割合は平均2.6%であった。投与後8時間までの平均回収率は0.45%で, Bioassay法による尿中CFTMの回収率との割合は平均2.2%であった。
    5. 臨床効果は142例中136例が有効以上で, 有効率は95.8%と優れた成績を示した。
    6. 細菌学的効果は81株について判定でき, 全株が陰性化し, 消失率は100%と非常に優れた成績であった。
    7. 副作用は掻痒を伴った発疹が1例0.7%, 下痢が2例1.4%に出現した。本剤の服薬状況では服用を嫌った症例が1例0.7%にみられた。
    8. 臨床検査値では好酸球増多が87例中8例9.2%, GOTの軽度異常上昇が44例中1例 2.3%に出現した。
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