1990 年 43 巻 1 号 p. 181-215
小児感染症に対するNorfioxacin (NFLX) の有用性を検討し以下の成績を得た。
1.小児新鮮病巣分離株に対するNFLXの耐性菌 (MIC12.5μg/ml以上) 分離頻度は1.6% (8例/512例) でStaphylococcus aureusは45株中に1株みられたが, Pseudomonas aeruginosa 30株では1株も認められなかった。
2.小児にNFLXを1.5~2.9, 3.0~4.8mg/kg及び5.1~6.1mg/kg空腹時単回経口投与による血清中濃度の平均ピーク値は, それぞれ0.37, 0.56, 0.92μg/mlであり, 平均半減期はそれぞれ2.5, 2.6, 2.6時間であった。又, 0~8時間の平均尿中回収率は, それぞれ25.3, 25.3, 27.1%であった。
3.臨床検討は腸管感染症, 尿路感染症を中心に実施され, 原因菌判明例317例では著効187例, 有効79例, やや有効9例, 無効7例, 判定不能35例, 有効率94.3% (266例/282例) の優れた成績であり, 著効率は70.3% (187例/266例) であった。菌不明例を含めた全例406例についても著効233例, 有効106例, やや有効11例, 無効11例, 判定不能45例, 有効率93・9% (339例/361例) の優れた成績であり, 著効率が68.7%と高率を示した。
4.疾患別有効率は原因菌判明例で細菌性肺炎81.8% (9例/11例), その他の呼吸器疾患80.8% (21例/26例), 細菌性赤痢95.8% (23例/24例), カンピロバクター腸炎98.6% (70例/71例), サルモネラ腸炎100.0% (24例/24例), その他の急性腸炎100.0% (6例/6例), 尿路感染症98.1% (104例/106例), その他を含め全体として94.3% (266例/282例) であった。原因菌不明群との間に有意差が認められなかつたので総計すると93.9% (339例/361例) の高い有効率が示された。
5.原因菌と同定し細菌学的に評価可能な325株の除菌率は84.3%であった。Gram-positive cocci (GPC) 84.3% (43株/51株), Gram-negative rods (GNR) 84.3% (231株/274株) であった。
6.本剤の至適投与量は5歳以上の小児で6.0~12.0mg/kg/日, 7日間と考えられた。
7.起炎菌がP.aeruginosaの症例12例の有効率は100% (11例/11例) であり, 菌消失率は83.3% (10株/12株) であった。
8.先行抗生剤無効例 (3日以上投与) 59例の有効率は88.9%で特にペニシリン系, セフェム系抗生物質が先行した13例では有効率90.9%であり, 又, 著効率は58.3%であった。その菌消失率は93.6%であり, GPC10株ではStreptococcus pneumoniae 1株, GNR37株ではP.aeruginosa 2株が消失しなかった以外はすべて除菌された。
9.副作用は406例で検討され, 6例 (1.5%) に認められた。いずれも服薬を継続できる程度の軽度なものであった。又, 関節痛等について注意深く観察したが, 関節障害は全例で認められなかった。臨床検査値異常は309例のうち, 好酸球増多が8例認められたが, いずれも一過性で軽度なものであった。なお, 関節障害時に変動を示すと言われているカテプシンD活性, 血清ムコ蛋白, 尿中ムコ多糖, Al-P活性, Al-P電気泳動でも本剤によると思われる変化は認められなかった。