The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるNorfloxacinの総合評価
藤井 良知目黒 英典有益 修牛島 廣治阿部 敏明中澤 進佐藤 肇成田 章新納 憲司市橋 治雄松田 博雄廣澤 浩高橋 慎太郎石川 尉子豊永 義清杉田 守正砂川 慶介秋田 博伸佐藤 吉壮岩田 敏南谷 幹夫八森 啓久野 邦義小川 昭正中尾 吉邦早川 文雄安藤 嘉浩鬼頭 修岩井 直一宮津 光伸中村 はるひ片山 道弘笠井 啓子櫻井 實神谷 齊庵原 俊昭川口 寛西村 忠史高木 道生田吹 和雄青木 繁幸小林 裕春田 恒和松田 博貴田 嘉一石川 純一松浦 俊人永井 宏尚森田 英雄友田 隆士荒木 久美子松本 健治厨子 徳子倉繁 隆信西林 洋平岡田 要香美 祥二黒田 泰弘岡田 隆滋古川 正強本廣 孝阪田 保隆荒巻 雅史織田 慶子川上 晃古賀 達彦山下 文雄軽部 俊二
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1990 年 43 巻 1 号 p. 181-215

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抄録

小児感染症に対するNorfioxacin (NFLX) の有用性を検討し以下の成績を得た。
1.小児新鮮病巣分離株に対するNFLXの耐性菌 (MIC12.5μg/ml以上) 分離頻度は1.6% (8例/512例) でStaphylococcus aureusは45株中に1株みられたが, Pseudomonas aeruginosa 30株では1株も認められなかった。
2.小児にNFLXを1.5~2.9, 3.0~4.8mg/kg及び5.1~6.1mg/kg空腹時単回経口投与による血清中濃度の平均ピーク値は, それぞれ0.37, 0.56, 0.92μg/mlであり, 平均半減期はそれぞれ2.5, 2.6, 2.6時間であった。又, 0~8時間の平均尿中回収率は, それぞれ25.3, 25.3, 27.1%であった。
3.臨床検討は腸管感染症, 尿路感染症を中心に実施され, 原因菌判明例317例では著効187例, 有効79例, やや有効9例, 無効7例, 判定不能35例, 有効率94.3% (266例/282例) の優れた成績であり, 著効率は70.3% (187例/266例) であった。菌不明例を含めた全例406例についても著効233例, 有効106例, やや有効11例, 無効11例, 判定不能45例, 有効率93・9% (339例/361例) の優れた成績であり, 著効率が68.7%と高率を示した。
4.疾患別有効率は原因菌判明例で細菌性肺炎81.8% (9例/11例), その他の呼吸器疾患80.8% (21例/26例), 細菌性赤痢95.8% (23例/24例), カンピロバクター腸炎98.6% (70例/71例), サルモネラ腸炎100.0% (24例/24例), その他の急性腸炎100.0% (6例/6例), 尿路感染症98.1% (104例/106例), その他を含め全体として94.3% (266例/282例) であった。原因菌不明群との間に有意差が認められなかつたので総計すると93.9% (339例/361例) の高い有効率が示された。
5.原因菌と同定し細菌学的に評価可能な325株の除菌率は84.3%であった。Gram-positive cocci (GPC) 84.3% (43株/51株), Gram-negative rods (GNR) 84.3% (231株/274株) であった。
6.本剤の至適投与量は5歳以上の小児で6.0~12.0mg/kg/日, 7日間と考えられた。
7.起炎菌がP.aeruginosaの症例12例の有効率は100% (11例/11例) であり, 菌消失率は83.3% (10株/12株) であった。
8.先行抗生剤無効例 (3日以上投与) 59例の有効率は88.9%で特にペニシリン系, セフェム系抗生物質が先行した13例では有効率90.9%であり, 又, 著効率は58.3%であった。その菌消失率は93.6%であり, GPC10株ではStreptococcus pneumoniae 1株, GNR37株ではP.aeruginosa 2株が消失しなかった以外はすべて除菌された。
9.副作用は406例で検討され, 6例 (1.5%) に認められた。いずれも服薬を継続できる程度の軽度なものであった。又, 関節痛等について注意深く観察したが, 関節障害は全例で認められなかった。臨床検査値異常は309例のうち, 好酸球増多が8例認められたが, いずれも一過性で軽度なものであった。なお, 関節障害時に変動を示すと言われているカテプシンD活性, 血清ムコ蛋白, 尿中ムコ多糖, Al-P活性, Al-P電気泳動でも本剤によると思われる変化は認められなかった。

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