The Japanese Journal of Antibiotics
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小児におけるCefdinir5%細粒の基礎的・臨床的検討
本廣 孝半田 祥一山田 秀二沖 真一郎津村 直幹吉永 陽一郎荒巻 雅史島田 康川上 晃古賀 達彦阪田 保隆山下 文雄高城 信彦二宮 正幸佐久間 浩子松元 康治今井 昌一田中 耕一松隈 義則荒木 久昭村上 義比古後藤 安見児徳永 泰幸関 浩孝田中 洋子西見 寿博石川 豊永山 清高安岡 盟林 真夫荒牧 修一進藤 静生清水 隆史雪竹 美穂子小森 啓範山村 純一山下 祐二加藤 栄司弓削 建小野 栄一郎原田 豊石本 耕治原田 博子織田 慶子西山 亨山口 郁代中村 秀文岩永 里香子山川 良一佐々木 宏和久田 直樹久保田 薫古賀 龍夫富永 薫
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1990 年 43 巻 10 号 p. 1813-1835

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抄録

新しく開発されたCephem系抗生物質の経口剤であるCefdinir (CFDN) の5%細粒を, 延べ10例の小児中各々5例に3mg/kgか6mg/kgを食前1時間すなわち空腹時に経口投与, この10例中3例は3mg/kgと6mg/kgのCross-overによる投与で, 血漿中濃度, 尿中の濃度及び回収率を測定した。本剤を投与した42症例中臨床効果は咽頭炎4例, 扁桃炎2例, 急性気管支炎2例, 肺炎8例, 猩紅熱6例, 急性化膿性中耳炎1例, 尿路感染症12例, 膿痂疹2例, 蜂窩織炎1例, リンパ節炎1例, 皮下膿瘍1例の計40例で判定ができ, これら40例における本剤の1回投与量は平均4.6mg/kg, 1日3回, 平均8日間の投与で, 細菌学的効果もみると共に起炎菌6菌種中13株の接種菌量106cfu/mlに対する本剤とCefaclor, Cefixime (CFIX), Methicillin, Cloxacillin (MCIPC), Amoxicillin (AMPC) の薬剤感受性試験を実施, 副作用と臨床検査値への影響について検討したところ, 次のような結果を得た。
1.5%細粒3mg/kgと6mg/kgをそれぞれ5例に投与した時の血漿中平均最高濃度は両投与量群共に投与3時間後で, 各々0.68μg/ml, 1.35μg/ml, 平均半減期はそれぞれ2, 06時間, 1.61時間, 平均濃度曲線下面積 (AUC) は各々3.5μg・hr/ml, 6.5μg・hr/mlで, 血漿中濃度及びAUC共に2投与量群間にDose responseがみられた。
2.前述の3例はCross-overによる投与で, 血漿中平均最高濃度は3mg/kg投与群で0.71μg/ml, 6mg/kg投与群で1.31μg/ml, 平均半減期はそれぞれ2.25時間, 1.39時間, 平均AUCは各々3.5μg・hr/ml, 5.3μg・hr/mlで, 血漿中濃度ではDose responseがみられ, AUCでは半減期が影響して1例にだけ明らかなDose responseが認められた。
3.血漿中濃度を測定した同一例で尿中排泄を測定したところ, 3mg/kg投与群の平均最高濃度は投与後4~6時間で67.2μg/ml, 6mg/kg投与群の平均最高濃度は投与後2~4時間で149.0μg/mlを示し, 両投与量群はその投与量にみあった濃度が得られた。投与後8時間までの平均回収率はそれぞれ18.4, 19.3%で類似した。
4.前述の3例のCross-overでの投与における尿中濃度では3mg/kg投与時の最高濃度は41.7~67.8μg/ml, 6mg/kg投与時の最も高い濃度は81.5~256μg/mlで, その投与量にみあった濃度が得られた。投与後8時間までの平均回収率は各々17.8, 19.3%で類似した。
5.本剤の細菌感染症11疾患40例に対する臨床効果は有効率90.0%と優れ, 細菌学的効果では21株に判定でき, 消失率85.7%と良好であったが1例に菌交代がみられた。
6.薬剤感受性試験ではCFDNのMICはグラム陽性球菌中Staphylococcus aureus 4株に対しMCIPCのMICに次ぎ小で, streptococcus pyogenes 3株に対してはAMPCのMICと同じで他の4薬剤のMICより小であつた。グラム陰性桿菌中Haemophilus influenzae 2株に対してはAMPCのMICに類似し, CFIXのMICに次ぎ小で, Escherichia coli 1株に対してはCFIXのMICと同じで, 他の4薬剤のMICより小で, Citrobacter freundii 2株に対してはCFIXのMICに類似し, 6薬剤中最も小で, Morganella morganii 1株に対してはCFIXのMICに次いで小であった。
7.本剤を投与した42症例では全例に副作用の出現はなかった。臨床検査値では末梢血の検査で好酸球の異常増多が36例中2例5.6%にみられ, 肝, 腎への影響としてGOT, GPT, Al-P, BUN, Creatinineの検査を実施したところ, GOTとGPTの同時異常上昇例が21例中1例に認められ, いずれも本剤との関係は可能性ありとされたが, Al-P, BUN, Creatinineへの影響例はなかった.

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