新しく開発されたCephem系抗生物質の経口剤であるCefdinir (CFDN) の5%細粒を, 延べ10例の小児中各々5例に3mg/kgか6mg/kgを食前1時間すなわち空腹時に経口投与, この10例中3例は3mg/kgと6mg/kgのCross-overによる投与で, 血漿中濃度, 尿中の濃度及び回収率を測定した。本剤を投与した42症例中臨床効果は咽頭炎4例, 扁桃炎2例, 急性気管支炎2例, 肺炎8例, 猩紅熱6例, 急性化膿性中耳炎1例, 尿路感染症12例, 膿痂疹2例, 蜂窩織炎1例, リンパ節炎1例, 皮下膿瘍1例の計40例で判定ができ, これら40例における本剤の1回投与量は平均4.6mg/kg, 1日3回, 平均8日間の投与で, 細菌学的効果もみると共に起炎菌6菌種中13株の接種菌量10
6cfu/mlに対する本剤とCefaclor, Cefixime (CFIX), Methicillin, Cloxacillin (MCIPC), Amoxicillin (AMPC) の薬剤感受性試験を実施, 副作用と臨床検査値への影響について検討したところ, 次のような結果を得た。
1.5%細粒3mg/kgと6mg/kgをそれぞれ5例に投与した時の血漿中平均最高濃度は両投与量群共に投与3時間後で, 各々0.68μg/ml, 1.35μg/ml, 平均半減期はそれぞれ2, 06時間, 1.61時間, 平均濃度曲線下面積 (AUC) は各々3.5μg・hr/ml, 6.5μg・hr/mlで, 血漿中濃度及びAUC共に2投与量群間にDose responseがみられた。
2.前述の3例はCross-overによる投与で, 血漿中平均最高濃度は3mg/kg投与群で0.71μg/ml, 6mg/kg投与群で1.31μg/ml, 平均半減期はそれぞれ2.25時間, 1.39時間, 平均AUCは各々3.5μg・hr/ml, 5.3μg・hr/mlで, 血漿中濃度ではDose responseがみられ, AUCでは半減期が影響して1例にだけ明らかなDose responseが認められた。
3.血漿中濃度を測定した同一例で尿中排泄を測定したところ, 3mg/kg投与群の平均最高濃度は投与後4~6時間で67.2μg/ml, 6mg/kg投与群の平均最高濃度は投与後2~4時間で149.0μg/mlを示し, 両投与量群はその投与量にみあった濃度が得られた。投与後8時間までの平均回収率はそれぞれ18.4, 19.3%で類似した。
4.前述の3例のCross-overでの投与における尿中濃度では3mg/kg投与時の最高濃度は41.7~67.8μg/ml, 6mg/kg投与時の最も高い濃度は81.5~256μg/mlで, その投与量にみあった濃度が得られた。投与後8時間までの平均回収率は各々17.8, 19.3%で類似した。
5.本剤の細菌感染症11疾患40例に対する臨床効果は有効率90.0%と優れ, 細菌学的効果では21株に判定でき, 消失率85.7%と良好であったが1例に菌交代がみられた。
6.薬剤感受性試験ではCFDNのMICはグラム陽性球菌中
Staphylococcus aureus 4株に対しMCIPCのMICに次ぎ小で,
streptococcus pyogenes 3株に対してはAMPCのMICと同じで他の4薬剤のMICより小であつた。グラム陰性桿菌中
Haemophilus influenzae 2株に対してはAMPCのMICに類似し, CFIXのMICに次ぎ小で,
Escherichia coli 1株に対してはCFIXのMICと同じで, 他の4薬剤のMICより小で,
Citrobacter freundii 2株に対してはCFIXのMICに類似し, 6薬剤中最も小で,
Morganella morganii 1株に対してはCFIXのMICに次いで小であった。
7.本剤を投与した42症例では全例に副作用の出現はなかった。臨床検査値では末梢血の検査で好酸球の異常増多が36例中2例5.6%にみられ, 肝, 腎への影響としてGOT, GPT, Al-P, BUN, Creatinineの検査を実施したところ, GOTとGPTの同時異常上昇例が21例中1例に認められ, いずれも本剤との関係は可能性ありとされたが, Al-P, BUN, Creatinineへの影響例はなかった.
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