1990 年 43 巻 11 号 p. 1850-1872
経口セファロスポリン剤である (Cefaclor持続性製剤) S6472の, 泌尿器科領域における有用性を検討する目的で尿路感染症 (UTI) 102例を対象に本剤を主として1回375mg, 1日2回投与し, 以下の成績を得た。
1.急性単純性腎孟腎炎16例中, UTI薬効評価基準に合致した症例は11例で, 著効10例, 有効1例で, 総合有効率100%であった。細菌学的効果では100%の菌消失率であった。
2.急性単純性膀胱炎32例中, UTI薬効評価基準合致例は21例で, 著効17例, 有効3例, 無効1例で, 総合有効率95%であった。細菌学的効果では, Escheric物ia coli1株を除き全株消失し, 95%の菌消失率であった。
3.複雑性尿路感染症54例中, UTI薬効評価基準合致例は43例で, 著効20例, 有効15例, 無効8例で, 総合有効率81%であつた。細菌学的効果では, 47株中39株が消失し, 83%の菌消失率であった。
4.副作用は102例中, 口内炎1例, 胃部不快感1例の計2例 (発現率2%) であり, いずれも投薬中止には至らなかった。臨床検査値の異常変動は57例中2例 (発現率3.5%) でみられ, 末梢血リンパ球等の増加1例, 血清クレアチニン値の軽度上昇1例であった。
以上の結果から, S6472は尿路感染症に対し有用な薬剤と考えられ