1990 年 43 巻 2 号 p. 239-256
1987年3月から1988年3月までの13カ月間に九州地区を中心とした28施設において集積された下気道感染症にSulbactam/Ce負) perazone (SBT/CPZ) を投与し, その臨床効果, 安全性, 血中濃度の推移にっき検討を行った。
1.SBT/CPZ1回29点滴静注後4時間までの血中濃度推移を35例について検討し, 点滴静注終了時のピークはSBT38.2±17.3μg/ml, CPZ104.3±31.4μg/mlであり, 血中濃度半減期はSBT0.76時間, CPZ1.53時間であり従来の成績とほぼ同一であることを確認した。
2.肝又は腎障害例において本剤1回2g点滴静注投与で本剤成分であるSBT, CPZそれぞれの血中半減期は有意な延長を認めなかった。
3.本剤の臨床効果は217症例において肺炎93.1% (81例/87例), 肺膿瘍93.3% (14例/15例), 慢性気管支炎の急性増悪78.9% (15例/19例), 気管支拡張症の感染72.4% (21例/29例), 慢性呼吸器疾患の二次感染74.4% (32例/43例), びまん性汎細気管支炎57.1% (4例/7例), 肺気腫の感染100% (9例/9例), 肺癌合併気管支炎50% (1例/2例), 膿胸66.7% (4例/6例) であり, 全体としては83.4% (181例/217例) の有効率であった。
4.基礎疾患に肺癌, 肺結核, 塵肺等を有する肺炎に対する有効率は85.3% (29例/34例) であり, 基礎疾患を有しない肺炎に対する有効率は98.1% (52例/53例) であったが, 統計学上の有意差は認められなかった。
5.他の抗菌剤が無効であった症例に対し70.0% (21例/30例) の有効率であった。
6.細菌学的効果は単独分離例においてPseudomonas aeruginosaは42.9% (9例/21例), Haemophilus influenzae87.5% (14例/16例) Streptococcus pneumoniae100% (5例/5例) であり, 単数分離例全体で71.2% (42例/59例) の消失率であり, 複数分離例は全体で75.8% (25例/33例) の消失率であった。全体の細菌学的効果は72.8% (67例/92例) の消失率であった。
7.CPZ最高血中濃度の高さ, CPZに対するSBTの血中濃度比の大きさが臨床効果に反映する傾向が認められた。
8.副作用は217例中6例 (2.8%) に認められ, その内訳は発疹などのアレルギー症状, 下痢などの消化器症状であった。臨床検査値異常は8例にGOT, GPT上昇, 好酸球増多がみられた。
9.SBT/CPZはβ-ラクタム系抗生物質耐性菌が増加しつつある現在において, 下気道感染症に対し有用性の高い抗生物質であると言える。