小児科領域における細菌性腸炎の起炎菌は
Campylobacterjejuniが最も多いことからキャンピロバクター腸炎に対するMacrolide系抗生物質のRokitamycin (RKM) の有効性と安全性を知る目的で小児の急性腸炎に対し, 本剤のドライシロップ (1日投与量は体重lkgあたり約30mg (力価)) と既存のFosfomycin (FOM) ドライシロップ (1日投与量は体重lkgあたり約60mg (力価)) を対照薬に選び, 両剤共に分3 (RKMは空腹時, FOMは食後に投与), 5日間投与を原則とし, Well-control法で比較検討を行ったところ, 次のような成績を得た。
1.種々の背景因子については両群間に有意差は認められず, 有効性, 安全性について両群の比較を行うのに支障のないことが確かめられた。
2.臨床効果ではキャンピロバクター腸炎に対しRKM群の有効率は100%, 著効率は91.3%, FOM群では各々94.4, 72.2%で, RKM群がそれぞれ5.6, 19.1%高かつたが有意差はなく, 両薬剤共に良好な有効性を示した。その他の急性腸炎を加えてのRKMの有効率は97.6%, 著効率は85.7%, FOM群では各々88.6, 68.2%で, キャンピロバクター腸炎と同じく有効率及び著効率共にRKM群がそれぞれ9.0, 17.5%高く,
U-検定で有意差が得られた。
3.主要症状の消退に要した日数ではRKM群のキャンピロバクター腸炎ではほとんどの症状が3日以内に消退, FOM群も類似した。その他の急性腸炎ではRKM群, FOM群共にキャンピロバクター腸炎より遅れる傾向にあり, FOM群がより遅延し, 膿性便だけでRKM群が
U-検定で有意に回復が短く, 全体的にみても同様であった。
4.細菌学的効果ではRKM群のC.jejuniに対する消失率は91.3%と良好で, FOM群は78.9%を示し, RKM群が12.4%高かったが有意差はなかった。
C.jejuniにその他の起炎菌を加えての効果はRKM群の消失率86.7%, FOM群の消失率76.9%で, RKM群が9.8%高かつたが有意差はなかつた。
5.起炎菌の消失までに要した日数では
C.jejuniでRKM群がFOM群よりやや短かったが有意差はなかった。その他の起炎菌についてはSalmonella sp.でも有意差はなく, Enteropathogenic
Escherichia coli (EPEC) でRKM群はFOM群に比較し
U-検定で有意に消失までの日数が遅れた。しかし全体的にみた場合には有意差はなかつた。
6.副作用は両薬剤群共に出現せず, 臨床検査値では好酸球増多がRKM群とFOM群で各々1例に認められ, GOTとGPTの同時軽度異常上昇がRKM群で1例に出現した。しかし, 副作用及び臨床検査値異常共に両薬剤群間に有意差はなかつた。なお, 両薬剤で服薬を嫌ったり, 服薬を拒否した症例はなかった。
7.
C.jejuniの各種薬剤に対する感受性試験では接種菌量10
6cells/mlにおけるRKMのMICは全株が0.025μg/mlから0.20μg/ml域に分布し, MIC
90は0.10μg/mlで, Norfloxacin, Erythromycinに次ぐ抗菌力を示し, Josamycin, Midecamycin, Kanamycin及び接種菌量10
5cells/mlのFOMより優れた。
以上の成績からRKMは小児の細菌性腸炎のなかでもキャンピロバクター腸炎に対しFOMと同じく第1選択剤となり得る有用な抗生物質と言える。
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