The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるNornoxacinの基礎的・臨床的検討
本廣 孝吉永 陽一郎津村 直幹沖 真一郎佐々木 宏和荒巻 雅史織田 慶子川上 晃古賀 達彦島田 康冨田 尚文阪田 保隆藤本 保西山 亨久田 直樹石本 耕治富永 薫山下 文雄荒木 久昭高橋 耕一田代 博子金子 真也山村 純一矢野 正二宮島 一郎石川 豊松元 康治永山 清高
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1990 年 43 巻 5 号 p. 901-917

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抄録

Norfloxacin (NFLX) の新しく製剤化された50mg力価錠か既存の100mg力価錠を8歳9カ月から12歳5カ月の小児12例に1-4錠 (1.5-6.1mg/kg) を食前30分に経口投与し, 血清中, 尿中のNFLX濃度及び回収率の測定を実施し, 細菌性赤痢患児から分離されたShigella sonnei 128株に対するNFLX他10剤, 計11薬剤の接種菌量106CFU/mlにおける薬剤感受性試験を行った。又, 細菌性赤痢42例にNFLXの50mg力価錠を1日量として3錠(平均8.3mg/kg)を分3で, いずれの症例も5日間食後に投与, 尿路感染症4例に対しても同じ錠剤を1日量として2錠から3錠 (平均6.7mg/kg) を分2か分3で平均4日間食後に投与し, その臨床効果, 細菌学的効果をみると共に副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1.12例の体重当りの投与量を1.5-2.8, 3.1-4.7, 5.2-6.1mg/kgの3群に分けてみると各々5, 2, 5例に分散し, 3投与量群の血清中濃度の平均は各々投与4時間後, 投与2時間後, 投与1時間後が最高濃度で, それぞれ0.27μg/ml, 0.64μg/ml, 1.51μg/mlを示した。3投与量群のPharmacokineticparameterを各々平均でみるとTmaxはそれぞれ3.0時間, 3.0時間, 1.2時間, Cmaxは各々0.32μg/ml, 0.78μg/ml, 1.56μg/ml, 半減期はそれぞれ2.2時間, 2.4時間, 2.3時間, AUCは各々1.65μg・hr/ml, 3.98μg・hr/ml, 6.06μg・hr/mlで3投与量群間にDose responseが認められた。
2.1.5-2.8, 3.1-4.7, 5.2-6.1mg/kgの3投与量群における尿中濃度の平均はそれぞれ投与後2-4時間が最も高い濃度で, 各々45.8μg/ml, 109.2μg/ml, 215.1μg/mlを示し, 投与後8時間までの平均回収率はそれぞれ18.3%, 24.5%, 28.7%であった。
3. S. sonnei 128株の薬剤感受性試験ではNFLXのMICは0.78μg/mlの株が最も多く65株, 次いで0.39μg/mlの株が56株で, この両者で94.5%を占め, 耐性菌は認められず, 抗菌力はColistinに次ぎ, Ofloxacinに類似, Enoxacinより良好で, 他の7剤より優れた。
4.臨床効果は細菌性赤痢では21例に判定でき, 有効以上の有効率は95.2%と優れ, 尿路感染症では4例中1例が脱落し, 3例に判定でき, いずれも有効以上であった。
5.細菌学的効果は細菌性赤痢では42例のすべてで判定でき消失40例, 持続排菌2例で, 消失率は95.2%であったが, 菌陰性化した40例中7例17.5%に再排菌がみられた。尿路感染症4例中臨床効果の判定ができず脱落した症例を除外した3例で判定でき, Escherichiacoli 3株はすべて消失した。
6.脱落症例1例を加えた46例で副作用を観察したが出現例はなく, 臨床検査値で異常を示した症例はなかった。

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