The Japanese Journal of Antibiotics
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Cefodizimeの腸内細菌叢に及ぼす影響
岩田 敏山田 健一朗金 慶彰横田 隆夫楠本 裕佐藤 吉壮秋田 博伸南里 清一郎老川 忠雄砂川 慶介市橋 保雄
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1991 年 44 巻 4 号 p. 412-425

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抄録

新しい注射用セフェム系抗生物質であるCefodizime (CDZM) について, 4種感染マウス及び小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した。Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis, Bifidobacterium breveの4菌種を腸管内に定着させた4種感染マウスに, CDZM100mg/kgを1日1回, 連続5日間筋肉内投与した結果, 糞便中の生菌数はE. faecalisを除く3菌種において投与開始後著明な減少が認められた。小児臨床例における検討は感染症の小児5例 (男児4例, 女児1例, 年齢7カ月~9歳6カ月, 体重7.6~51.1kg) に対し, CDZM1回9.7~23.0mg/kgを1日4回, 5~15日間静脈内投与して行った。CDZM投与中の糞便内細菌叢の変動は症例により若干のばらつきが認められたが, ほとんどの症例においてEnterobacteriaceae, Enterococcus, Bacteroides, Bifidobacterium, Eubacteriumなどの主要な好気性菌及び嫌気性菌が著明に減少する傾向が認められた。ブドウ糖非醗酵性グラム陰性桿菌や真菌は, CDZM投与中もしくは投与終了後に増加する傾向が認められ, 一部の症例では投与中の最優勢菌種となつた。こうした変動はほとんどの症例においてCDZMの投与終了後に回復する傾向が認められたが, 長時間投薬を続けるような場合には, 下痢や菌交代, 出血傾向などに対する注意が必要と考えられる。腸内細菌叢の変動と密接な関係があると考えられる糞便中CDZM濃度は, いずれの症例においてもかなり高い値を示した。

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