The Japanese Journal of Antibiotics
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近年に検出した臨床分離株に対するCeftriaxoneの抗菌活性
出口 浩一横田 のぞみ古口 昌美中根 豊鈴木 由美子深山 成美石原 理加小田 清次
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1992 年 45 巻 7 号 p. 774-798

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抄録

1987年, 1990年に全国の医療機関から送付されてきた臨床分離株及び各種感染症患者採取材料から, 分離・同定した臨床分離株28菌種1,210株を対象にして, Ceftriaxone (CTRX) の抗菌活性を他のセフェム系薬剤などを加えて検討し, 以下の結論を得た。
1. 1980年代前半における臨床分離株を対象とした諸家の報告に比較して, 1990年分離株に対するCTRXのMIC90が大幅に上昇した菌種は, staphylccoccus spp., Streptococcus pneumoniae, Escherichiacoli, Citrobacter spp., Enterobacter spp., Serptia spp., Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia spp.である。しかし, Streptococcus pyogenes, Haemophilus influenzae, Klebsiella pneumoniae,Proteus mirabilis, そしてPeptostreptococcus spp.に対するCTRXのMIC90には変動が認められなかった。
2. S.pneumoniaeに対するCTRXのMICg。が高値なのは, Benzylpenicillin (PCG)-insensitive S.pneumoniae (PISP), 更にBacteroides fragilis groupに対するCTRXのMIC80が高値なのは, 分離頻度の高いB.fragilisとBacteroides thetaiotAomicronのCTRX高度耐性株の割合が高いことが要因であるが, これらの菌種に対する他のオキシム型セフェムのMICも高値を示すことから, PISP及びB.fragilisgroupに対するCTRXを含むオキシム型セフェムの抗菌力に関する評価は, 今後の検討課題と考えられた。
3. 供試株にはMethicillin-resistantStaphylococcus aureus (MRSA), セファマイシン及びオキシム型セフェム耐性の腸内細菌科グラム陰性桿菌, 更にニュ-キノロン耐性菌が高い割合に認められたことから, 「CTRX耐性菌」にはこれらの耐性機作が重なっていて, そうした耐性菌にはCTRXが十分な抗菌活性を発揮し得ない状況を考察した。
4. CTRXを含む, ある特定薬剤耐性菌の経年的推移に関する評価には, 著者らが1989年及び1991年に述べた「β-ラクタム系薬剤全般にわたる耐性機序と, 耐性菌が出現してくる社会的状況を含む次元の検討課題が残る」ことが今日的意義を増していることを指摘した。
5. 近年に分離された臨床分離株には, CTRXを含むセフェム耐性株が増加傾向にあることが示唆された。しかし, CTRXは今日においても日常診療で対象となる感染症の起炎菌となり得る人部分の臨床分離株には, 有効な抗菌活性を維持していることも合せて確認した。加えてCTRXが数少ない血中濃度持続型であることを加味するなら, CTRXは今日においても臨床的に有用なセフェム系薬剤の一っであるとの結論を得た。

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