The Japanese Journal of Antibiotics
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S-1108細粒の腸内細菌叢に及ぼす影響
岩田 敏川原 和彦磯畑 栄一金 慶彰横田 隆夫楠本 裕佐藤 吉壮秋田 博伸老川 忠雄砂川 慶介市橋 保雄
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1993 年 46 巻 12 号 p. 1045-1062

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抄録

新しいエステル型の経口用セフェム系抗生物質であるS-1108について4菌種感染マウスおよび小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した。Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis, Bifidobacterium breveの4菌種を腸管内に定着させた4菌種感染マウスに, S-1108細粒15mg/kgを1日1回, 連続5日間経口投与した結果, 糞便中の生菌数は4菌種いずれも投与開始5日目に軽度の減少が認められた。小児臨床例における検討は感染症の男児5例 (年齢2歳4ヵ月~9歳3ヵ月, 体重12.0~42.0kg) に対し, S-1108細粒1回2.3~6.0mg/kgを1日3回, 5~11日間経口投与して行つた。その結果3例で主要な好気性菌, 嫌気性菌が減少し, 嫌気性菌総数の著明な減少がみられた。他の2例においては主要菌種の大きな変動はなく, 好気性菌総数および嫌気性菌総数に大きな変動は認められなかった。ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌が優勢菌種となる症例はなかつたが, 真菌に関しては, 他の菌種が著明に減少した3例でCandidaが最優勢菌種となった。主要な好気性菌, 嫌気性菌が減少した3例の投与中の糞便からS-1108の活性型であるS-1006が検出され, その濃度は235~516μg/gであった。S-1006が検出された糞便のβ-Lactamase活性は陰性を示した。
以上の成積から, S-1108細粒は, 他の新経日セフェム剤と同様に4菌種感染マウスの腸内細菌叢に及ぼす影響が少ない薬剤と考えられるが, 小児に投与した場合, 症例によっては高濃度の薬剤が糞便中に検出され腸内細菌叢が大きく変動する場合もあり, 注意が必要である。

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