The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるS-1108細粒の基礎的・臨床的検討
本廣 孝半田 祥一山田 秀二沖 眞一郎吉永 陽一郎荒巻 雅史織田 慶子阪田 保隆加藤 裕久山下 文雄今井 昌一鈴木 和重岡林 抄由理金子 真也市川 光太郎曽田 浩子清水 透子長田 陽一木葉 万里江石橋 紳作高橋 耕一杉山 安見児三宅 巧荒木 久昭垣迫 三夫前野 泰樹下飛田 毅高岸 智也松隈 義則平田 知滋田中 信夫永山 清高安岡 盟林 真夫天本 正乃津村 直幹小野 栄一郎神薗 慎太郎中嶋 英輔永光 信一郎野正 貴予松尾 勇作樋口 恵美長井 健祐末吉 圭子橋本 信男弓削 建久保田 薫川上 晃渡辺 順子藤澤 卓爾西山 亨岩永 理香子牛島 高介山川 良一山村 純一富永 薫薹 俊一安藤 寛久田 直樹藤本 保元山 浩貴丸岡 隆之伊達 是志杉村 徹西依 淳朝木野 由紀山田 克彦是松 聖悟早川 広史佐々木 宏和木村 光一山田 孝
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1993 年 46 巻 12 号 p. 1122-1144

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抄録

S-1108は抗菌活性を有するS-1006の4位のカルボン酸にPivaloyloxymethyl基をエステル結合することによつて吸収を良好にした新しい経口Cephem剤である。本剤は経口投与後, 腸管から吸収され, 腸管壁のエステラーゼにより加水分解を受け, 活性体としてS-100bは体液中に存在し, このS-1006は広範囲な抗菌スペクトルを有し, 一部の細菌が産生するβ-Lactamase以外は極めて安定である。この度, 本剤の小児用として新しく細粒が製剤化されたことから, その基礎的・臨床的検討を行ったところ, 次のような成績が得られた。
1. 薬剤感受性試験ではグラム陽性球菌中Staphytococcus aureusの保存株456株に対するS-1006のMIC80は6.25μg/mlで, Cefaclor (CCL) とMethicillin (DMPPC) のMICに類似の傾向にあり本剤投与症例から分離のS. aureus 20株でのS-1006のMICは保存株と同じく1.56μg/mlを示した株が最も多く, CCL, Amoxicillin (AMPC), DMPPCのMICに類似の傾向を呈した。Streptococcus pyogenesの保存株449株と本剤投与症例から分離の7株に対するS-1006のMICは全株が0.025μg/ml以下で, Cefteram (CFTM) のMICと同じであった。本剤投与症例から分離のStreptococcus pneumoniae 5株に対するS-1006のMICは0.025μg/ml以下, 0.10μg/mlか0.39μg/mlでAmpicillinのMICとほぼ類似, CFTMのMICに類似した。グラム陰性桿菌では本剤投与症例から分離したHaemophilus influenzae 4株についてのみのMICであるがS-1006のMICは0.05μg/mlか0.10μg/mlで, CFTMのMICに類似した。
2. S-1108細粒を1例に4.0mg/kg, 2例に6.0mg/kgを投与してのS-1006の血漿中濃度は, 前者では投与3時間後, 後者では投与3時間後か投与4時間後に最高濃度を示し, 各々1.25, 2.43, 2.23μg/ml, 半減期は前者では1.11時間, 後者ではいずれも1.28時間, AUCはそれぞれ4.06, 8.37, 7.73μg・hr/mlで, 両投与群間にDose responseが認められた。
3. 血漿中濃度を測定した同一の症例における尿中濃度は4.0mg/kg投与の1例では投与後4~6時間, 6.0mg/kg投与の2例は投与後0~2時間か投与後4~6時間が最高濃度で, 各々258.0, 602.0, 500.0μg/ml, 投与後8時間までの回収率はそれぞれ38.9, 38.3, 23.1%であった。
4. 臨床効果は13疾患93症例中88例が有効以上で, 有効率は94.6%と優れた成績を示した。
5. 細菌学的効果8菌種48株中43株が消失し, 消失率は89.6%と優れた成績であった。
6. 副作用はふらふら感が1例1%, 下痢が2例2.1%に出現した。
7. 臨床検査値では末梢血の好酸球増多が47例中1例2.1%に出現した。

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