The Japanese Journal of Antibiotics
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DQ-2556の腎機能障害者における体内動態及び臨床成績
青木 信樹薄田 芳丸甲田 豊高沢 哲也若林 伸人林 静一新田 功本間 千鶴子渡辺 京子
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1993 年 46 巻 8 号 p. 637-646

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抄録

腎機能障害患者における新規セフェム系抗生物質DQ-2556の体内動態について検討した。本剤1.0g静注後, 血中濃度の最大値は腎機能障害の程度にかかわらず投与5分後にみられ, その値に大きな差はみられなかった。一方, 血中濃度低下は腎機能障害が重度になるに従い緩除になり, 重度障害例, 特に血液透析導入例において著明であつた。すなわち血中濃度半減期(β相)は, 軽度障害例 (Ccr約50ml/min) が約2.5時間であるのに対し重度障害例 (Ccr約20ml/min) が約6時間と延長し, 透析導入例では約17~21時間と著しく延長した。尿中排泄率 (0~24時間値) は, 軽度障害例が約70%, 中等度障害例が約60%, 高度障害例が約40%であり, 腎機能障害が重度になるに従い低下する傾向にあつた。本剤の透析性は良好であつた。
下気道感染症15例に本剤を1日投与量1.0g (分2) あるいは2.0g (分2) で7ないし14日間投与し, その有用性を検討した結果, 著効2例, 有効11例, 無効2例で, 有効率は86.7%であった。副作用はみられなかつたが, 好中球分画減少及びプロトロンビン活性度低下が各1例ずつ認められた。
以上の成績から, 本剤は下気道感染症に対し有用であることが示唆されたが, 腎機能障害を持つ患者においては, 本剤の排泄速度がその障害の程度に伴い減少することを十分考慮し, 適切な用法用量を設定する必要がある。

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